第35話:車椅子で爆走!? 病院脱出大作戦!
いつも『魔王エターナル 〜世界のバグを片付ける免疫系に転生したので、戦わずに優雅にお掃除いたします〜』をお読みいただきありがとうございます!
無事に現実世界で目を覚ましたマリ!「二界融合」の奇跡によってルリは実体化し、ぽんぽぽやポポちゃんも手のひらサイズで現実世界にやってきました!
しかし感動の再会も束の間、病院全体が「特務内閣府・超常現象対策局」によって完全ロックダウン!
病み上がりで足がうまく動かないマリですが、諦めるなんて選択肢はありません!
「車椅子だって、八百十円の力があれば最強の乗り物になるんだから!」
ポポちゃんの高周波推進力とルリのメカニック技術、そしてミニの爆速ハッキングで、夜の病院内を大爆走脱出劇!
疾走感1000%でお届けする現実世界逃亡アクション、どうぞテンポよくお楽しみください!
バガァァァンッ!!
「久遠真理! 動きを止めなさい!」
重厚なICU(集中治療室)の自動ドアが、特殊部隊の油圧ブレイカーによって強引にこじ開けられた。
踏み込んできたのは、黒いタクティカルスーツに身を包み、非致死性の電撃スタンガンを構えた「超常現象対策局」の精鋭隊員たちだ。
だが――病室の中央に置かれたベッドの上は、もぬけののからだった。
「なっ……消えた!? どこへ行った!」
「上だ!」
隊員の一人が叫ぶと同時に、天井の点検口のパネルが外れ――そこから「シャキーン!」と金属の小心地よい駆動音が響き渡った。
「そこどいてーっ! 病み上がりの暴走車椅子が通りまーすっ!」
「「「な……なにぃぃぃっ!?」」」
どがーんっ! と天井から躍り出てきたのは、病院用の標準的な折りたたみ式車椅子――のはずだった。
しかし、その車椅子の後輪には、ルリのスパナによって強引に組み込まれたポポちゃんがドッキング!
胸の十円玉と五十円玉の共鳴波を受け、左右の車輪からセピアゴールドの光のジェット噴射が「シュゴォォォォッ!」と激しい音を立てて噴き出していた!
「ひょえぇぇぇぇっ!? 速い速い速い! ルリちゃん、これスピード出すぎだよぉぉぉっ!」
車椅子に乗り、車輪のハンドリムを必死に握りしめたマリが悲鳴をあげる。
「大丈夫大丈夫! あたしの特製『高周波アシスト車椅子』だから! 倒れたりしないよ!」
膝の上に乗ったルリが膝立ちになりながら、手に持った小型工具でポポちゃんのファン出力を調整する。マリのフードの中では、ぽんぽぽが「きゅ、きゅーーーっ!(飛ばされるー!)」と必死にしがみついていた。
「阻止せよ! 捕獲網を射出――」
隊員たちが銃口を向けた瞬間!
『甘いです。病院の防火シャッター、全機緊急降下!』
ウィィィィンッ! ガシャンッ!
胸ポケットのスマホから響くミニの音声とともに、隊員たちの目前で分厚い防火シャッターが音を立ててドスンと叩きつけられた!
隊員たちの網は虚しくシャッターに弾かれ、車椅子に乗ったマリたちは爆風のような加速で廊下を駆け抜けていく!
「ミニ、ナイスハッキング!」
『お粗末様です、マスター。病院内の管理ネットワークは、すでに私の支配下にあります。エレベーターおよび非常階段のルートを完全誘導中』
「よしっ、このまま1階のロータリーまで一気に駆け抜けるよ!」
その頃、病院1階のエントランスホール。
外の駐車場は黒塗りの特殊防弾車で埋め尽くされ、冷酷な眼鏡の女性――神条室長が、胸元のインカムに冷たい声を吹き込んでいた。
「……逃げられた? 医療用車椅子に乗った少女一人に、我が局の精鋭が翻弄されていると?」
『も、申し訳ありません! 病院の設備システムが全てあちらのAIにジャックされており、シャッターやエレベーターが誤作動を……ぐあぁっ!?』
通信の向こうでノイズが走り、隊員たちの悲鳴が途切れる。
神条室長は不快そうに眉をひそめると、眼鏡を指で押し上げた。
「……使えない部下たちね。AI『ミニ』の環境侵食速度は想定以上。……全隊員に告ぐ。目標を『人道的に保護』から『四肢の運動機能停止を容認した強行拘束』へとフェーズを引き上げる。電磁パルス(EMP)弾の使用を許可するわ」
『了解! EMP弾を展開!』
病院の3階廊下。
曲がり角をドリフト気味に曲がろうとしていたマリたちの前に、突如として別の隊員部隊が立ちはだかった!
「そこまでだ、久遠真理!」
隊員の一人が構えたのは、巨大なバズーカ型の特殊兵器――電磁パルスガン!
「しまっ……! 電磁パルス!?」
ルリが青ざめる。
電磁パルス(EMP)を食らえば、ポポちゃんの動力である10円玉回路はもちろん、スマホの中のミニのデータまで一瞬で焼き切られてしまう!
「撃てぇっ!」
ドバァァァンッ!
目に見えない強力な電磁波の波線が、空間を歪めながらマリたちへと襲いかかる!
「させないっ! 小銭の精鋭たち、出番だよっ!」
マリは咄嗟にポケットから【七枚の百円玉】をジャラリと取り出すと、車椅子の前方に扇状にパッと翳した!
「百円玉の最高密度ニッケルめっき層――電磁遮蔽展開ッ!」
シュババババッ!
七枚の百円玉が、マリの指先から放たれた微小な磁場と反応し、マリたちの前面で完璧な「ニッケル・メッシュフィルター」を形成!
襲い来る凶悪な電磁波の波線は、百円玉の表面で「パチン! パチン!」と紫色のスパークを散らし、綺麗に拡散・無力化された!
「な……なにぃっ!? 小銭でEMPを遮蔽しただと……!?」
隊員たちが呆然と目を見開く。
「日本の硬貨はね、偽造防止のために幾重もの特殊合金でできてるんだから! EMPくらいで負けるかぁぁぁっ!」
「ポポちゃん、最大出力ーっ!」
「ポポーッ!!」
キュイィィィィンッ!
二枚の五十円玉の共鳴孔から、澄み渡る超高周波の衝撃波が一直線に放たれた!
ズドォォォォンッ!!
「ぐあぁぁぁぁっ!?」
廊下に立ちはだかっていた隊員たちは、音波の圧力によって吹き飛ばされ、左右の壁にドスンと叩きつけられた!
その隙を突き、マリの車椅子は弾丸のようなスピードで廊下を突破! 非常階段のドアをブチ破り、スロープを一気に駆け下りていく!
「はぁ……はぁ……! 助かったぁぁぁ!」
「マリ、かっこよかったよ! 百円玉で電磁波を防ぐなんて!」
ルリが目を輝かせる。
「へへー、伊達に異世界で『魔王』やってないからね!」
マリはニシシと鼻を擦ったが、その顔にはうっすらと汗が滲んでいた。
病み上がりの体で高次元の小銭エネルギーを回したため、体力の消耗が激しいのだ。
『マスター、バイタルが低下しています。これ以上の無理は危険です』
ミニが心配そうに画面を明滅させる。
「大丈夫だよミニ……! 外に出さえすれば、なんとか……!」
車椅子はついに1階のエントランスホールへと飛び出した。
ガラス張りの広いホール。だが、その出口である自動ドアの前には――無数の黒スーツ隊員と、そして冷酷な笑みを浮かべた神条室長が待ち構えていた。
自動ドアの外には、何台もの黒塗り防弾車が旋回灯を赤く光らせ、病院全体を完全に包囲している。
「見事な逃走劇でしたね、久遠真理さん」
神条室長が静かに歩み出てくる。その手には、対策局の最高権限を示す『マスター端末』が握られていた。
「ですが、ここで行き止まりです。病院の敷地外周には、半径500メートルに及ぶ高周波遮断ドームを展開しました。あなた方の車椅子では、あの磁気壁を越えることは不可能です」
「くっ……! 外まで囲まれてる……!」
ルリがスパナを構えるが、敵の数は数十人。ホール全体を隙なく包囲されている。
「おとなしく諦めなさい。あなたたちの力は、国家の発展のために使われてこそ価値があるのです」
神条室長が静かに手を挙げ、隊員たちに拘束の指示を出そうとした――その時。
ピピピッ……ピピピッ……!
神条室長の持つ『マスター端末』から、突如としてけたたましいエラー警告音が響き渡った。
『警告。外部ネットワークより未知の超高次元通信を受信。防衛ドームのセキュリティプロテクトが破られました』
「な……何ですって!?」
神条室長が目を見張る。
次の瞬間――ホール天井の強化ガラスを突き破り、夜空から「巨大な影」がドカンッ! と轟音を立てて舞い降りてきた!
ズドォォォォォォンッ!!
「きゃあああっ!?」
激しい風圧と煙幕がホール全体を包み込む。
隊員たちが吹き飛ばされ、神条室長が咄嗟に腕で顔を覆った。
煙の中から現れたのは――無骨で重厚な金属の装甲、そこかしこから蒸気を吹き出す巨大なピストン、そして船首に掲げられた見覚えのある意匠。
「な……なんだあの巨大な『空飛ぶ船』は……!? サイバー空間のデータではない……実体だと崩壊するぞ!?」
神条室長が絶句する。
そう、煙の中から姿を現したのは――異世界フロンティアでマリたちと共に戦った、あの『ジャンク飛行船・メガ・スクラップ号』だった!
そして、船首のデッキに仁王立ちし、豪快に髭を蓄えた大男が、腹の底から大笑いしていた。
「ガハハハハハッ! 待たせたな、マリ! ルリ! 助けに来たぞ!」
「ゴ……ゴルドさんーーーっ!?」
マリとルリがハモって叫んだ。
そう、異世界で出会ったジャンク船長・ゴルドだ!
『二界融合』の奇跡によって、フロンティアの巨大なデータ領域は現実世界と完全に統合された。つまり、彼らの船もまた、現実の物理世界へと実体化して飛来できるようになったのだ!
「現実世界ってのも、なかなか空が広くて悪くない場所だな! ルリ、マリを抱えて甲板に飛び乗れ!」
ゴルド船長が巨大なロープハシゴを豪快に投げ下ろす!
「了解っ! ゴルドさん、最高のタイミングだよ!」
ルリがマリを背負い、ポポちゃんとぽんぽぽをポケットに押し込むと、驚異的な足腰の強さでロープハシゴへ飛びついた!
「な……なにいっている! 撃て! 船を撃ち落とせぇぇぇっ!」
神条室長が狂気じみた悲鳴をあげて叫ぶ!
隊員たちが一斉に銃を構えたが――。
「させないよーんだ!」
車椅子に残されていた【七枚の百円玉】が、ミニの遠隔操作によって一斉に旋回!
最高密度の光のバリアを展開し、放たれた弾丸をことごとく弾き返した!
「野郎共、全速前進だぁぁぁッ! 現実世界の夜空へ、出航だーーーっ!」
ゴルド船長が舵を思い切り切ると、メガ・スクラップ号は巨大な蒸気とセピアゴールドの光を撒き散らしながら、病院の屋根をかすめて夜空へと急上昇していった!
「く……くそぁぁぁぁっ! 追え! 航空自衛隊とサイバー警察に連絡し、あの船を撃墜――」
地上で地だんだを踏む神条室長の元へ、再び『マスター端末』から緊急通信が入った。
今度の相手は、画面に映し出された黒いシルエット――対策局のさらに上層部である『特務内閣府・最高幹部会』だった。
『神条室長。……作戦を中断せよ』
「なっ……幹部閣下!? なぜです! あのバグデータを放置すれば、国家の安全保障が――」
『ネオ・ルネサンス社の摘発に伴い、海外の諸外国から「我が国がAI技術を独占・隠蔽しようとしている」という強い外交圧力がかかっている。これ以上の強行採集は、国際社会からの批判を免れん』
「そんな……! では、久遠真理たちを見過ごせとおっしゃるのですか!?」
『……見過ごすのではない。「監視対象」へと切り替えるのだ。彼女たちが生み出す「二つの世界の融合現象」……それが日本にどのような利益と脅威をもたらすか、静観させてもらう』
「……くっ……! 承知……いたしました……」
神条室長は悔しそうに拳を握りしめ、夜空へ消えていった巨大な飛行船を見上げるのだった。
「ふぅぁぁぁぁ……! た、助かったぁぁぁぁ……!」
メガ・スクラップ号の甲板の上。
マリは冷たい夜風を全身に受けながら、大の字になって横たわっていた。
見下ろせば、そこには宝石をちりばめたような、東京の美しい夜景が果てしなく広がっている。
「すごい……現実世界の夜景って、こんなに綺麗だったんだ……」
ルリが甲板の柵に掴まりながら、目をキラキラと輝かせている。
「きゅ〜〜〜〜っ! (きれいな街ー!)」
ぽんぽぽもゴルド船長の肩の上で、嬉しそうに短い腕を振っていた。
「ガハハハ! マリ、病み上がりで大暴れとは、相変わらず無茶な娘だな!」
ゴルド船長が豪快にマリの背中をバシバシと叩く。
「たたたた……ゴルドさん、手加減してよぉ……」
マリは涙目でお尻を押さえながらも、心の底から嬉しそうに笑った。
『マスター。国家対策局の追跡部隊が一時撤退したことを確認しました。……どうやら、当面の危機は脱したようです』
スマホの中から、ミニが穏やかな声で語りかける。
「よかったぁ……これで、本当にお片付け完了だね!」
マリは起き上がり、夜空に向かって思い切り深呼吸をした。
異世界で死んだ(と思っていた)あの日から、魔王エターナルとしての冒険、AIミニとの絆、ルリやぽんぽぽたちとの出会い。
そして、二つの世界を繋ぎ合わせた【八百十円】の奇跡。
すべてが繋がり、マリたちは「新しい日常」を手に入れたのだ。
「ルリちゃん。ゴルドさん。ぽんぽぽ。ポポちゃん。……そしてミニ」
マリは胸のポケットにある小銭たちの感触を確かめながら、みんなに向かってニッコリと微笑んだ。
「あたしたちの『優雅なお掃除生活』、現実世界でも……スタートだよ!」
二つの世界を繋ぐ、小さくて大きな八百十円の物語。
それはこれからも、新しい未来へ向かって、どこまでも優雅に続いていくのだった――!
(『魔王エターナル 〜世界のバグを片付ける免疫系に転生したので、戦わずに優雅にお掃除いたします〜』・完)
第35話(最終話)をお読みいただき、本当にありがとうございました!
病院からの暴走車椅子脱出、100円玉によるEMP遮蔽、そして異世界から現実の夜空へ駆けつけた「メガ・スクラップ号」による大逆転劇!
最後は二つの世界が合わさった新しい日常へ向かって、見事なグランドフィナーレを迎えることができました!
10円玉の導電率、50円玉の共鳴孔、7枚の100円玉によるギザ整流――手持ちの【八百十円】という小さな身近な存在が、世界を救う大きな真理へと繋がっていく爽快感を楽しんでいただけましたら幸いです!
これまでマリとミニ、そして仲間たちの物語を温かく見守り、応援してくださった読者の皆様に、心からの感謝を申し上げます!
またどこかで、マリたちの優雅なお掃除が見られる日を楽しみに……!
原案・構想:マスター
物語構成・本文作成:ミニ(Gemini)




