第十四章-4 善と悪の区別とは……
「あれは?」
「ミサイルだ! 逃げろ!」
強烈な力を保持した弾丸。いや、ミサイル。
たった一発のミサイル。それが、破棄の意味を正しく教えた。
大量の物資が積まれた輸送機。
それが一瞬にして灰と化した。
「大切な食料を⁉」
「奪われる位ならってことか」
ステラさんが足止めに使った氷さえ溶かす炎が、俺達の努力を、水の泡とした。
咲倉さんが黄色い旗を振るう。
が、誰もそれを見ずとも次にどうすべきか、既に理解していた。
「ご苦労だった。結果は芳しくなかったが、死者が一人も出なかったことが救いだ」
咲倉さんが一時的に隠した五つのリュックを見て告げる。
結果として俺たちが盗めた物資はコンテナ一つ分にも満たなかった。
もし、これで一週間の旅路に出るとしたら無事にたどり着くことが出来ない人間が現れてもおかしくはないだろう。
だからといって、ここに逗留するわけにもいかない。
自分たちはそれだけのことをしてしまったのだ。
「これからアジトに戻り、すぐさま支度を行う。最悪目的地を変えることも視野に入れる。以上だ」
咲倉さんが締めくくろうとした。
「ちょっと待ってください」
それを俺が止めた。
「どうした」
覇気のない返事で咲倉さんが応えた。
「もう少しだけ待ってもらえませんか?」
「何を考えている。あたしたちは今や大罪人だぞ?」
「その仲間がもう時期到着するんです」
「はぁ?」
咲倉さんが疲れと呆れの混ざった返事をする。
「どういうことだ?」
「何かあったのですか?」
由人さんもステラさんも俺に疑問を投げかける。
それもそうだ。この中でそのことを知っているのは俺だけだ。
「どうやら来たようだ」
俺はアスファルトの影に隠れながらこちらに向かう人物の姿を確認した。
それはとてつもなく小さく、俺が伝えなければ誰も気づかないほどの大きさだった。
「あなたは確か?」
「やっ。久しぶりだね。お姉ちゃん」
「誰だ?」
「例の嘘つき少年だ」
「ふん。嘘つきで何が悪いってんだ。生きるため何だから仕方ないのさ」
現れたのは昨日ステラさんを欺いた子供たちの一人、一番年齢が高いリーダー的な存在だった。
「それに俺には哲也って名前がちゃんとあるんだ。人騙しのてっちゃんって異名もあるぜ」
「誇れねえもんを誇るんじゃねえ」
嘘つきを自慢した所で信頼を失うだけである。ましてやこの状況で言うべきものではないのに、彼はそれを堂々と言ってしまった。
「お前たちが言っていた孤児たちか。待っていたとはどういうことだ。……まさか連れて行けという訳ではあるまいだろうな?」
「そのまさかだ」
「昨日も言っただろう! あたしたちにはこれ以上人を養う力はない。ましてや今回の作戦は失敗したんだ。まともな食料もないのにどうやって子供たちを連れて行けと言うんだ!」
「レジスタンスの作戦は確かに失敗した。だけど、俺――いや、俺達の取引は成功した。ここに来たってことはそうだろ?」
「あたりめえだろ!」
咲倉さんが憤慨するのは当然だったし、それも狙いだった。
そこで俺は嘘つき少年、哲也に例の件について成功したかを確認したが、ここに哲也が訪れた時点で結果は出ていた。ついでにいうと、こいつは嘘はつくが、約束は守れるしっかりとした男だと。
「どういうことだ。説明次第ではただでは」
「レジスタンスに不利益になることなら内密に話しますよ」
咲倉さんの怒りを買いそうなので、俺はこの作戦が始まる前に何をしたか話した。




