第八章-3 約束したのだから……
この自尊心の底辺さそのまんま未来に引き継がれてるじゃん!
「落ち着いて! 君はそんなに小さな存在じゃないよ!」
「でも、身長も低いし――」
「子供なら仕方ないって! 大人になったら俺と頭一つ分くらいしか変わらないから」
「おっぱいだって全然育たないし……」
「一般人にひけを取らないほど大きくはなってるから!」
て、俺はどさくさ紛れに何を言ってるんだ⁉
それは考えなくていいよ! まだ二桁にもならない年何だから! 一時成長期も来てないんだから当たり前だよ! 周りに発育良好な子でもいるのだろうけど、君も立派な大人になったから! 見てないよ! 若干触れたけど!
ステラさんならありはしないけど、もし他の女性だったらただじゃ済まないだろう。
――ステラさん。そういえば俺と一緒に飛ばされたステラさんは一体どこに行ってしまったのだろうか?
俺と一緒に懐中時計を握っていたはず。
もしかしたら近くにいるかもしれない。
目の前にいる少女ステラさんが、俺の知っているステラさんじゃないなら、俺の知っているステラさんは一体どこに?
「じゃあさ。お兄ちゃんも一緒に探してあげるから! 代わりに、お兄ちゃんが探している人も探してくれないかな?」
「……私何かに見つかる訳ないよ、お兄ちゃん。だって――」
「そうかもしれない」
この後つらつらと流れる大量の字余り短歌を俺は一言、語気を強くして封じる。
「君一人でも、俺一人でも見つからないかもしれない。なら、二人だったら見つかるんじゃないかな?」
「でも、そうしたらお兄ちゃんが困ることになるから。それだと、勇者として駄目だから」
「大丈夫だよ。勇者だからって一人で全部背負わなくちゃいけない必要性は無いんだよ、それに、困るなら、困られる前に頼ってほしいな」
誰にだって得手不得手はある。
不得手ばかりが押し寄せ、対処が間に合わなくなってしまうよりかは、そうなる前に得手の人に頼んだ方がいい。そうすることによって困ることは無くなる。逆に何とかしようと奮闘した結果、事態を余計に悪化させてしまえば、自身だけではなく、皆困ることになってしまう。
そうなると、ステラさんが無事に帰れる夕暮れ時がタイムリミットか。
どれだけの規模の森かは分からない。そもそもどこへ行けば出口に行けるのかも分からない。
「君のお友達がお花摘みをしに行った場所に心当たりはあるのかな?」
「分かんない。でも、すぐ近くだったって。ミルディウちゃん恐い声が聞こえてからすぐに森のお外に出られたって言ってたから」
「そうなんだ。じゃあここは? 結構森の深くだと思うけど」
「見つからなかったからここまで探したの。大体一時間位……」
「一時間も⁉」
頑張りすぎだろうと慄いた。それだけ探して見つからないなら諦めるか協力者を募るぞ、俺なら。
この辺りは背の高い草がそこまで多くない。木々が生い茂っているのが原因で地面にまで太陽光があまり届かないのが原因だろうか。それでも見つからないとなるとその宝物はだいぶ小さいものとなる。
その予想は的中する。
「ミルディウちゃんが大切にしているカギは銅でできていてすごく小さいから、よく見ないと分からないの。お花畑の所に無かったから、動物さんが小枝と間違えて巣に持って行っちゃったかも」
鍵か。それも銅製となると小枝に擬態していたら判別がつき辛い。ステラさんは動物が巣に持って帰ったと考えているが、その中に鳥も入っていたら、捜索範囲の拡大は避けられない。
おまけに大切な物が鍵ときた。思い入れとかを無視すれば大概のものは見つからなければ代替が効く。
けど、鍵の場合はそうもいかない。俺のいた時代ですら宿屋の部屋に鍵がほとんど備え付けられて無かったんだ。見つからなければその鍵と対になる鍵穴は一生開くことが出来ずに終わることになるだろう。
「ならもっと捜索範囲が広がりそうだね。見つからなかった時の為に、先に帰り道だけを確保しておいた方が」
「それなら、大丈夫」
とそこだけ自身を持って答えた。
「帰り道はこっちの方だよ」
ステラさんがある一点を向いて指差す。
するとそこに白い光の線が宙に引かれているのが分かった。太陽の屈折などで光っている訳ではなく、蛇のように奇妙な動きをした光の線は森の奥、或いは外へと向かっている。
「今日歩いてきた道を示す光の魔法。一日はもつはずだよ」
「へ、へぇ……」
○コム、してますか?
子供につける安全保障魔法ですか。勇者は子供の時から自分自身で付与できるんですね。子供のころから便利な魔法をお持ちだったんですね。
「で、お兄ちゃんが探してる人ってどんな人?」
「えっ。あ、女の人だよ。俺と同い年くらいの」
「彼女?」
「いや、その、大切な人、かな」
「なら、お嫁さん?」
「そこは行き過ぎ‼」
「? 大切な人ってそういうことだよね?」
口には出せないけどあなたのことですからね! 約十年後一週間あまりの付き合いになるあなたのことですからね!
「放って置いたら大変なことになりそうなんだ。――君は悪い人に騙されないように注意してね。いい人の振りして悪いこと考えている人は君が思っている以上に多いんだよ」
「?」
この時点で説得しようと考えてみたが、子供には難しすぎたか。もし、ここで何か変化が起きれば、元のステラさんにパラドックス的なことが起きているかもしれないし。
「それなら、お兄ちゃんの方が先に見つかるかもね」
「そうだね。そうなったら三人で探せるし、見つかる可能性がぐっと上がるよ」
「家族みたいになるね」
「だから、そういう関係じゃないって!」
改めて言うけど将来の君だからね!
君がそういう関係を望んじゃったみたいになっちゃうからね!
心の中で叫ぶけどね!




