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第三章-10 指導する才はあるのだけど……

「俺はステラさんを、そしてマグウィードさんを頼りにしています。あなたたちが頼れないから俺はそんなことを言う訳では無いんです。寧ろ今のところそこにしか縋り付く藁がありません。でも、人って誰しもが誰かに頼りたい時があると思うんですよ」

「ふむっ」

「ステラさんは勇者だから頼られる。勇者だから助けてあげる、叶えてあげることが義務だと本人は思っているみたいなんです。実際聞いたわけじゃなくて、行動から推測しただけなんですけど」

「当たらずと雖も(いえども)遠からずでしょうね。イシリオル家の気質からしてそんな人が多い気はしますね。彼女もその血を引いているのならその可能性は大いにあります。性格は自身の気質と言ったところでしょう」

「そうです。けど、彼女だって勇者である以前に一人の人間、少女なんです」


 子供たちは先生だったら何でも出来ると思っている。

 後輩は上司だったら何でも解決できると判断する。

 弟子は師匠であれば何でも道を開いてくれると悟る。

 でも、実際は彼らも元は子供で、元は後輩で、元は弟子だった存在。全部が全部できる訳ではない。彼らにも教授してくれる存在がいた。或いは知恵を分かち合う同士がいた。

 なのに、勇者だけが誰にも頼れないのはおかしい。


「俺は彼女を助けたいんです。出来ることがほんと僅かでも頑張りたいんです」

「とはいえ専門家は専門家に任せるべきではないのか?」

「それって兵とか傭兵を集めても変わりは出来ないんですか? 俺にはそうは思えないんです」


 彼女は文武両道ならぬ物魔両道で、圧倒的な力を誇っている。

 だから任せてしまえば何とかなるかもしれない。

 でも、いずれ一人では捌ききれない問題が、いや現時点でも起きている気がする。


「ステラさんは見ず知らず、果てには異世界から来た俺を守ってくれたんですだから俺も」


 マグウィードさんに再度決意を伝えようとした時だった。


「キャァァァッ‼」


 突然の金切り音に、俺は思わず耳を防いでしまう。

 けど、その発生源が誰かを理解した瞬間、両手は耳元から離れた。


「ステラさん?」


 俺が静かに呼び掛けた瞬間、バンッ! と大きな返事をしてステラさんが部屋に飛び込んできた。

 タオル一枚のほぼ半裸で。


「ステラさん⁉」

「で、で、で、で、で、で、で、で、で、で、で、で、で、で、で、で、で、で、で、で」


 羞恥心の欠片も無いのか、ステラさんは同じ言葉を何度も繰り返す壊れたラジオのように言葉を吐き出す。


「出た! あいつ! 出た!」


 そして片言外国人よろしく、主語動詞のみの簡単な説明をした。


「な、何が出たんですか?」


 俺は彼女の肩を押さえ(タオルがずり落ちないように)問いかける。

 しかし、顔面蒼白な彼女から返事はない。

 その姿は残念ながらよく見ることのある落ち込む姿とは別だ。

 不安よりも恐怖の方が勝った顔だ。


「あー……もしかして、もしかしなくとも奴か」

「奴?」

「どこにでもいる、大概の人間の天敵さ」

「魔物のことですか?」

「いや、一般生物だが、下手すれば魔物以上の恐怖の対象さ」


 魔物未満生物以上と言った感じの何か。

 その正体を考慮するよりも見た方がいいと俺は踏んだ。


「っと、思ったら相手からお出ましか」


 が、その必要は無かったようだ。

 マグウィードさんんが嫌悪感を露わにしてステラさんが入ってきた入り口を見る。

「ひぅっ」と言う声ともしゃっくりとも捉えられる声でステラさんが泣く。

 その姿を拝め、俺は納得する。


「Gか」

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