第三章中編 眠り姫
「あの子たちって、むう達のこと?」
らいらは肯定し、続ける。
「あの三人は元々、むうの勧誘で結成された研究員グループなのね。
でも、きーうぃって子が二週間以上寝たきりにナッテから船長のむうと医者のぺーぺは喧嘩バカリで……。
原因は多分、不安のすれ違い。ぺーぺはきーうぃが心配で不安。ダケド、むうはもっと別の不安。そのすれ違いが、お互いの不安を刺激させているみたいなの。」
かろは至って真剣に話を聞き、真剣に尋ねる。
「きーうぃって確か有名な錬金術師よね?鶏肉にしたら美味しそうな名前だったから覚えてるの。」
「たっ、食ベナイデなのね!?」
かろの台詞に軽い恐怖を抱きつつ、らいらは胸を撫で、気を落ち着かせようとする。
「でも、知ッテルなら分かるでしょ?きーうぃは例の事故以来、突然寝テシマウ体質になったの。
心、身体、不治の病、何でも治せるぺーぺでも、ドウスル事もできなかったの。結局きーうぃは一度寝てしまうと一週間以上目覚メナイ身体になってしまったのね。」
かろは考える。まとめると、きーうぃが普段の日数以上に眠ってしまい、そのせいで二人の不安が募って仲違いを起こしている。だからどうにかして欲しいというお願いだろう。
「でも、どう助ければいいのよ?私たち、料理を振る舞って気分転換させる事しか出来ないけど。」
「りょうり、いいね。」
二人の元に、おさげの子が音もなく近づいてきた。その子の腕にはぺーペを模した可愛らしいぬいぐるみが抱きかかえられている。
「きーうぃ?起きたのね!」
「なんだ。じゃあこれにて解決?」
「全っ然なのね!彼が起キテも寝テテも、彼女たちの仲違いは解決しないの!」
らいらが引き留めようと、慌てて叫ぶ。
一方、眠り目のその子は気の抜けた声で詩のような言葉を並べる。
「ゆめを見てた。ふわふわの雲に、ゼラチンの空。月のブランコに腰かけて、ことりと一緒にピクニックするの。」
「えー……と?」
何が言いたいのか頭を悩ませるかろに、素早く、らいらの解説が入る。
「つまり、最近流動食ばかりだったから固形食が羨ましいって言ってるのね!」
「あの発言のどこにそんな要素があったのよ!?」
きーうぃはおにぎりのような三角形の口をぬいぐるみに埋める。その仕草はおかしくて笑った口元を、思わず隠しているように見えた。
「さすがらいら。ボクのこと解ってるんだね。」
「逆になんでわかるのよ?」
かろが聞く。すると、きーうぃはかろの方に身体を向け、ゆっくり近づいてきた。
「かろだっけ。ボクからもお願い。あの二人をどうか助けてあげて。特にぺーぺは、ボクのことですごく責任をかんじてるから……。」
そう言うと、きーうぃはぺーぺが心配するからとベッドに戻っていった。また二人きりになった途端、かろはらいらに質問する。
「……でも、助けるって何をすればいいのよ?」
「ミーは、かろが言ってた料理で気分転換がイイと思うの!今は完璧な解決法がナクテも、メンタルケアは関係の改善や研究の効率化に役立つのね!」
☆
そんな事があり料理を作る事になったかろは、早速その事をころろに話にいく。
しかしかろが目にしたのは、やけにメカメカしくなったころろの片腕と満足げなむうの顔。
「どうだ!これが僕が考えた最強の566号だ。」
「おお……かっこいいかも。」
かろはドン引きしているが、当のころろは楽しそう。そしてそんなころろに、むうは合図する。その合図に合わせてころろは腕をのばし、構える。「レーザー弾、作動。」
ころろの腕から青色の光線が放たれ、地面を抉りながら一直線に突き進む。そして遠くにある木々を木っ端微塵にしてしまった。ころろは興奮して目を輝かせている。
「ふっふーん。救命弾がなくても、これさえあれば機体トラブルも隕石もへっちゃらだろ?」
「うん……!確かにへっちゃらかも。」
はしゃぐ二人の肩をかろの手が掴む。
「んな訳ないから。腕戻してきて。」
「なんの騒ぎでしょうか。」
レーザーの音を聞きつけたぺーぺときーうぃが三人の元へやってきた。状況は一発で悟られたようだ。
「むう。また火遊びなんてして……。もしきーうぃに当たったりしたらどうするんですか。」
うるさいと言いたげなむうに、かろはぺーぺに便乗して叱る。
「そうよ。危うくきーうぃがグリルチキンになる所だったじゃない。」
「おい!きーうぃを食べ物として見るな!」
ぺーぺは幸い、意味をよく分かっていないらしく、「グリルチキン……?」と眉をしかめて考えている。そこへきーうぃがフォローを入れた。
「かろがね、料理を振舞ってくれるらしいよ。」
「うげっ」
一番最初に声を上げたのはかろだった。まだ作る料理も決まっていないから、むうとぺーぺには内緒にしておくつもりだったのに。
「料理ですか……何を作るつもりですか?」
「それが、まだ決まってないのよ。」
案外ノリ気そうなぺーぺの反応に、かろは渋々答える。だけども、むうはあまりノリ気じゃないみたいだ。
「勝手にしろ。僕はいらないからな。」
「むう……偏食バレるの、はずかしい?」
「違うっ!!」
「大丈夫なのね。究極の野菜嫌いでも、ミーはむうが大好きなのね!」
「食べる!食べるからもう黙れ!」
きーうぃとらいらの純粋な気持ちが返って挑発になり、むうはあっさり折れた。
「ただひとつ言わせてもらう。僕が嫌いな食材ばっかり使ってたら、絶対に食べないからな!」
「じゃ、皆で好きな食材を探してくるってゆーのは?」
ころろが提案する。その提案に便乗したのはかろ。
「いいわね。つまり闇鍋ってことでしょ?」
闇鍋……一同はてっきり、むうは拒否すると思っていた。しかし当の本人はひとり楽しそうに悪巧みをしていた。
――ここは緑の星。気候性は一切関係なく、様々な植物や生き物が入り乱れるこの星なら、短い時間で沢山の食材が手に入る事だろう。




