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第三章前編 偶然の再会?

――全自動型アンドロイド船KANADE。かろが星を出た後に566号の派生として発明された新型の宇宙船。

 そんな宇宙船の中、二人の少女が揉めあっていた。

「だーかーら!僕はそんなの認めないって言ってんの!」

 カンカンに怒っている船長の怒声に、医者の格好をした盲目の少女は、毅然とした態度で淡々と話す。

「諦めて下さい船長。あの子の寝たきりが長引く以上、栄養剤の量を確保する必要があるのです。」

「だからって、僕の『おくすり食べれたね』を利用するのはいただけない!」

「ほんの一部を作り替えるだけですが。」

「ほんの一部でも僕のだ!僕にも決定権はある!」

 言い合う二人のかたわら、ベッドではおさげの子が起きる気配もなく眠っている。代わりにこの宇宙船こと機械の少女が介入した。

「ま、まあまあフタリとも、落ち着いてなのね!今はそれどころじゃないから。」

 しかし、二人は相変わらず喧嘩を続ける。

「また我儘を……あなたがそんなだから、あの子の精神も安定しないのですよ。」

「ふん。だからなんだ。別に操縦士(アイツ)が動けなくたって船は動く。なんせ僕の宇宙船は配置されたオルゴールを一度回せば、燃料いらずで一ヶ月持つんだ。」

「あなたの自慢話なんてどうでもいいです。」

 宇宙船から流れる機械の声は、遂に困惑した感情を爆発させた。

「あーーもーー!違うの!宇宙船がコッチに迫って来てるのねーー!」

 至急、船長がモニターを確認する。するとそこには見覚えのある宇宙船が。

 アンドロイド船566号。同じ研究チームのかろが乗っている宇宙船。

「聞いてくれるのを待つな!今すぐ避けろ!」

「ム、ムリなの!もう間に合わないのね――!」

「だったら救命弾の準備!」

 船内に緊急を知らせるアラートが鳴り響く。医者は急いで寝ている子を抱き抱え、船長は荒々しくモニターを叩きつける。

「かろの……分際で――!!」

 船内に轟く爆発音。二つの宇宙船はそのまま、近くの重力に吸い寄せられていった。


 ☆


 惑星に墜落した宇宙船から、合計四つのアメフトボールのようなものが転がる。その中からフラフラと腰を上げたかろに即座に詰め寄ってきたのは先程の船長。

「か〜〜ろ〜〜……」

 怒りに燃えている。多分、げんこつ一回では済まされないくらいには。しかし船長はかろの様子のおかしさに気づき、ふと正気に戻る。――その時。

「お肉……お肉……ッ」

 とんでもなくお腹を空かせたかろが、狂ったように船長にかぶりついた。

「わ、わーー!たすけて、食べられる……!」

 船長の情けない叫びが惑星の真ん中で響く。医者は頭を抱えながら、仕方なくかろを引き剥がした。

「ごめんなさい。かろは食料をぜんぶ真心に変えちゃったせいで、三日三晩何も食べれてなくて、ぼうそー状態なの。」

 かろから解放され気を取り直した船長は、医者に捕まったままのかろを睨む。

「ふん。まだ真心集めなんてしてるのか?」

「ころろ!ころろ!対面では初メマシテなのね!」

 宇宙船の少女がころろの元へ駆け寄ってきた。そして、事故で外れぶらんと垂れ下がった片腕を持って握手を交わす。

「だれですか?」

「ミーはらいら!アナタと同じアンドロイド船なのね!むうから話は聞いていたけど……思っていた百倍は可愛いのねーー!」

 らいらという機械の少女はころろを強く抱きしめる。腕の力にころろは少し苦しそうにしている。

「さて。挨拶もここまでにして。今はこの人喰い船長をどうにかしましょうか。」

 医者は袋をひとつ取り出し、グミ型の固形物をかろの口に放り込んだ。袋には『おくすり食べれたね』の文字が。船長が発狂する中、その優しい味にかろは正気を取り戻した。

「あら……むう?なんでいるの?」

「なんでいるのじゃねーよ!僕のおくすり食べれたねが……!」

「なにそれ?」

「むうの為にわたしが開発した甘い薬です。彼女はドが付く偏食家ですから。」

 船長むうはかろに飛びつき、胸ぐらをわし掴む。

「今すぐ返せ!ボケ!ハゲ!バかろーー!」

「ちょ、なんの話よ!?」

 半べそかきながらかろの身体をガクガク揺する。そして今度は医者をキッと睨み、噛みつきにかかった。

「ぺーぺ!お前のせいだ!いつも勝手な事ばかりして!」

「応急処置です。この薬は一粒に一日分の栄養が含まれていますので。」

「一粒でも貴重なんだぞ!これが無くなれば僕らは星に強制送還だ!」

「大袈裟な。ほら、薬の効果が切れますよ。」

 騒がしい口を塞ぐようにグミ型の薬をむうの口に押し込む。不機嫌顔のまま、大人しく口を動かすむうの様子に、かろは首を傾げた。

「むうって、なにか持ってたっけ?」

「……ただの風邪だ。」

 そう言って自分の腕をさする。その際に服の隙間からチラッと見えた包帯が、かろは妙に気になった。

 旅の途中、怪我でもしたのだろうか。

「かろも初メマシテ!会えて嬉しいのね!」

「あ、ええ。よろしくね。」

 らいらがかろにも握手しにやってきた。むうに包帯の事を聞こうとしたけれど、らいらに挨拶を返しているうちに、むうはころろの方へと離れてしまった。

「ぶつかってきたクセに、ヒョロい腕だな。」

 一方、むうはころろの外れた腕を拾い、まじまじと観察している。

「救命弾が安全にサドーできるようにって、かろ船長がわざと柔らかい素材で作ったから。」

「はっ。そんな事だろうと思った。僕の宇宙船はそんな事しなくても安全に作動できる。この僕が作り直してやるよ。」

 むうはころろの腕を引っ張り、見くびったように見下ろす。ころろは否定も肯定もしないが、不審がっている。

「でもむう。研究チームの間で魔改造師マッドサイエンティストって呼ばれてたよね。」

「なっ、バカにするな!」


 ☆


 むうはころろの修理(魔改造)に向かい、ぺーぺは未だ寝ている子の看病のため、席を外している。らいらはかろの手を握ったまま、周囲をキョロキョロと警戒していた。

「どうかしたの?」

「うん。実はミー、あなた達にずっとお願いがあったのね。」

 かろにだけ聞こえるような声で、らいらは彼女に頼む。底なしに元気な態度から一変し、真剣な目をして。

「お願い。あの子たちを助けてあげて欲しいの!」

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