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第二章中編 好きなもの

交代でれびーを背負い、案内所まで来た一同は受付に事の顛末を話す。すると、受付のお姉さんは親切に教えてくれた。

「れびーは甘いものが好きなのよ。……でも最近は甘いものを食べても全く補給できなくて……好みが変わったのかしら?」

 その言葉を受け、三人はひとまず甘いものを探す事にした。れびーは近くのケーキ屋さんに通いつめているらしい。

「れびーちゃんはいつも、苺のケーキを買っていくの。はい。おひとつどうぞ。」

「いただくわ。それじゃあ、お礼にコレを……」

 そう言ってかろは儀式用の鉱石を渡す。ぴかるはビックリして目を丸めた。

「えっ、また誘うの?」

「こうしょー材料です。」

 ぴかるは思い出したように手を叩く。ケーキを受け取ると今度は後ろから元気なおっちゃんの声がした。

「おーい!そこの嬢ちゃんたち、コロッケもどうだい?」

「あ!あのコロッケ、れびびが言ってたやつじゃない?買ってみようよ!」


 ☆

 

 一同はれびーが休んでいる案内所へ戻り、ケーキを受付の人に託した。エネルギーを補給している間、三人は外のベンチに座って例のコロッケを食べてみることにした。

「いただきます!」

 サクサクの衣に包まれたコロッケを口いっぱいにかぶりつく。コロッケの中には噛みごたえのあるお肉とシャキッとしたレタスがふんだんに詰め込まれていて、ホクホクのじゃがいもと抜群に相性が良い。外は白い息が濃く出るほど寒く、そんな中食べるコロッケは身も心も温めてくれる。

 三人が幸せそうにコロッケを食べていると、補給が完了したれびーが案内所から出てきた。

「れびび!もう大丈夫?」

「はい。お騒がせしてしまい、お恥ずかしい限りです。」

「お互い様よ。私だってよくやらかすし。」

「かろりんのは程度が違うような……」

 かろが彼女をベンチに誘う。れびーは申し訳なさそうに隣に座る。すると、ころろが問いかけた。

「ほきゅー、どれくらい出来ましたか?」

 受付の人が言っていた、あまり補給できないという話を気にしているようだ。れびーは苦笑いで答えた。

「ああ……実はあまり。三十パーセントくらいでしょうか。」

「長くは持たなそうね。何か心当たりは?」

 れびーは悲しそうな顔をして俯く。

(わたくし)の機体は、寿命を長持ちさせるために年一度のメンテナンスが行なわれます。その際、不要な古いデータを一括削除するのですが……どうやら、忘れたくなかった記憶まで失くしてしまったようなのです。」

「それは、好物と何か関係があるの?」

 れびーは少し悩んだ末、こくんと頷いた。解決の兆しが見えたかろは、ベンチから立ち上がり、やる気に燃えていた。

「ころろ!聞きこみ調査よ。長老の時みたいに、れびーについて詳しい人を捜すの!」

「無駄ですよ。

 消されたデータは数百年も昔のものです。この星の人類は寿命も短いですし、当時の(わたくし)のことなんて、知っている人はいないでしょう。」

 れびーの静かな反論で、また答えが遠ざかってしまったかろは、何も言えずに再びベンチに座った。

「れびびの好物は甘いものなんだよね?それ以外に覚えてることはない?」

「そうですね……断片的ですが、ある人間が、特別な日は必ず甘いものを作ってくれて、それがとても好きでした。」

 ぴかるはうんと頭を悩ませながら、ふと正面のケーキ屋さんを目につけた。れびーがよく通いつめているお店……ケーキ……。

「もしかして、誕生日ケーキじゃない?」

「なるほど。じゃあ作ってみましょう!何か思い出せるかもしれないし。」

 ぴかる、かろ、それに続いてころろも立ち上がり、皆でワイワイ盛り上がっている様子にれびーは慌てる。

「で、でも(わたくし)、まだ誕生日ではないですし……。」

「じゃ、四人が出会った記念ケーキってことで。」

 かろのウインクにれびーはキョトンとして固まってしまう。

「……記念?」


 ☆


 宿を借りて、れびーへのサプライズケーキ作りを決行した三人は、エプロンに身を包んでキッチンに並んでいる。

「ころろ。材料の買い出しは?」

「ちょーたつ完了。」

「詳しい手順は私に任せて!料理は得意なんだ。」

 たっぷり乗っかった苺と生クリームをスポンジで挟んで。パペットナイフで満遍なく塗る。そして上部には可愛く絞ったクリームと……ナマコ。

「ちょ、ころろ!ケーキになんてもの乗っけてるのよ!」

「合うかなって。」

「要らないわよナマコ!」

「美味しいのに……」

 ころろは名残惜しそうにナマコを退かし、クリームを塗り直した。ケーキ作りはあっという間に最終段階。……しかし、三人は何かが物足りない様子。

「もっとデコレーションしてみない?」

 ぴかるの提案に二人も頷き、冷蔵庫に入れておいた材料達を沢山並べてみた。

「上層の生クリームをブルーベリーソースに変えてみるのはどうかしら?」

「いいね!じゃあ私は金平糖乗せてみようかな。」

「かろ。こうしょー材料に金箔があったよね?」

「まあ……ちょっとだけなら良いけど。」


 ☆


「できた!ギャラクシーケーキ!」

 苺、ブルーベリーソース、金平糖と、色とりどりに飾られたデコレーションケーキが三人の手に掲げられる。ケーキの真ん中には惑星に見立てたアイスが置かれていた。

 その賑わった声を聞きつけたれびーが、ダイニングからやってきた。

「ケーキ、できましたか?」

「ええ。早速みんなでいただきましょ。」

「みんなで……?」

「どーかしましたか?」

 れびーは首を振り、穏やかに微笑む。まるで何か、心の奥底にある気持ちにふけるように。

「いえ。なんだか懐かしくて……。」


 ☆


「それじゃあ、私達の出会いを祝して――」

「いただきます!」

 かろの合図に、皆が手を合わせる。四角いテーブルには四等分に切り分けられたケーキが甘くて優しい香りを漂わせている。

 フォークで一口サイズに裂いたケーキを苺ごと食べると、甘さ強めの生クリームを甘酸っぱいソースと苺が中和して丁度良くしてくれる。ふわふわの生地とさっぱりした甘さが口の中の幸福感を高め、思わず口元が綻んだ。

「美味しい……。皆様は料理がお上手なのですね。」

「なにか、思い出せそーですか?」

「……。」

 ころろの問いかけに誰もがフォークを止め、れびーの方に注目した。彼女が何かを言うまで三人は何も言わなかった。

「――昔。怪我をした観光客様たちをお助けしたことがあったのです。事故を起こして宇宙から墜落してきたそうで、(わたくし)がしばらく面倒を見ることになりました。

 やがて元気になった観光客様たちは、(わたくし)にお礼をするために色んなことをして下さいました。綺麗な景色を見に出かけたり、観光客様たちの惑星の話を聞かせてくれたり、誕生日はお祝いのケーキを下さったり……。」

 ケーキを見つめながら止まることなく語るれびーの話は、蘇っていく記憶の断片達を言葉で繋ぎ合わせていく。

 そして話が終わる頃には、れびーの充電は満タンになっていた。

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