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第一章後編 星飯ぐるめぐり!

翌日。サンプルもお腹も満足にたまった彼女らは今日、この星を出発する。ぴかるの拠点のベッドを借りてたっぷり休んだ二人は、ぴかるにお礼を言うため部屋を訪れていた。

「おはよう!昨日はよく眠れた?」

「おかげさまです。」

「もう行くんだよね?忘れ物はない?」

「はい。色々ありがとーございます。」

「でも、久しぶりだったなあ。誰かと話すの。

 そうだ。また落ち着いたら会いに来てよ。」

 ぴかるところろが楽しそうに別れの挨拶を交わしている。そんな中、かろは珍しく無口だった。

「かろ、どーしたの?」

 心配したころろの問いかけに、ぴかるもその様子に気がついた。かろは数秒黙り込んだあと、意を決したように口を開く。

「……ぴかる。一緒に行かない?」

 ぴかるもころろも、キョトンと目を丸めている。

「行くって……宇宙?」

 かろが頷く。ぴかるは静かに考えたあと、ひとつ聞いてみた。

「もしかして誰かに聞いちゃった?私のこと。」

 かろはまた頷く。場の緊張を少し和らげようとしてくれたのか、ぴかるはあはは!と笑った。

「そっかあ。多分あの子かな?故郷を出たあともよく気にかけてくれてたもんね。」

「お兄さんのこと、今も待ち続けているんでしょ?なら、一緒に探さない?」

「うーん……ごめんね。悪いよ。」

 ぴかるは笑いながら答えた。その顔は、なんだか諦めているようにも見えた。

「宇宙に行くには『星の赦し』っていう、通過儀礼が必須なんだよね?無理無理。私にそんな才能ないし、そもそも赦しを得れるのは子どもだけでしょ?私はほら、何百年も生きてるからさ。」

 星の赦し。アルケミー星から輸入された鉱石を使った、全惑星共通の儀式。かろは勿論、その儀式の事も分かっていた。子どもですら必ず得られる訳ではないことも。

「かろりんの気持ちはすごく嬉しい。でも怖いんだ。もう失敗したくない。それでまた何かを失うのがすごく怖いの。」

 ぴかるの声は震えていた。いつも笑顔の絶えない彼女の顔は、俯いていてよく見えない。

「でも、お兄さんに会いたいんじゃないの?」

「…………会いたい。」

「じゃあやってみよう、ぴかる。今度は私達もついてる。」

「後悔して泣くんじゃねー。当たって砕けてから泣け。って、かろ船長が。」

「言ってないわよ。」

 かろの声を真似して、ころろがふざけてみせる。二人のいつもと変わらないかけ合いに思わず吹き出したぴかるは、少しだけ不安が解けた気がした。

「……でも、儀式をする為の鉱石なんて持ってないよ?今から探しに行くには時間がないし。」

「あります。」

 ころろはまとめられたバッグの中からいくつか鉱石を取り出し、咄嗟にぴかるに見せた。

「なんで!?」

「こうしょー材料です。」

「あー……。言ってたね。」

 つるつるした触感の鉱石は、ひとつ噛んでみるとシャリっとした琥珀糖のようで食べやすい。ほのかに甘い鉱石は口の中で泡のように溶けていき、飲み込むと幸せな余韻を残していった。

 

「……どう?」


「なにも、起きないね……。」


 たまに誰かが声を発すだけの静かな時間が、ただただ過ぎていく。ああ、失敗かな。ぴかるはそう思い、乾いた笑い声をもらす。

「あはは……まあ、そうだよね。

 でも良かったかも。後悔しないで済んで。あー、こんなものかって、割り切れたから――」


「成功よ!ぴかる!!」


 突然かろに勢いよく抱きつかれて、ぴかるの身体が軽くよろめく。一瞬、何が起きたか分からなかった。けれどかろの嬉しそうな笑い声と安堵した様子のころろを見ていたら、ぴかるは何故か涙が止まらなくなった。


 ☆


 出発間際。砂浜に集まった三人は、この星を旅立つ準備を進めていた。

「凄い……ほんとに宇宙船になった。」

 一人用の宇宙船を前に、ぴかるは驚いていた。かろはというと、宇宙船の隅々を確認しながら出発前最後の点検を行なっている。問題なければ今すぐにでも発進できるようだ。

「――ぴかる。」

 彼女を呼ぶ声が背後から聞こえてきた。

 ぴかるが振り向けば、かろところろに彼女の話を聞かせてくれた、あの日の長老が立っていた。

「どうしているの?」

「さっき、そこのお嬢さん達が急いで探しに来てな、ここまで連れてきてくれたんじゃよ。宇宙へ行くんだね?」

「……うん。」

「兄が消息を絶って、何百年も経っているんじゃろう。もう生きてはいないじゃろうし、彼の船が見つかるかも分からん。それでも行くんじゃな?」

「うん。決めたから。」

 ぴかるは強く静かに言った。決意に照らされた瞳を見た長老は、「そうか。」と一言呟いて、彼女に上着と羽織るものをくれた。

「宇宙には寒い星も沢山ある。これを持っておいき。」

「いいの?」

「何十年も一緒に過ごした友人じゃ。今更遠慮はいらん。」

「……ありがと。」

 暖かい。鏡の星は暑いぐらいなのに、ぴかるはその温もりを幸せだと感じた。

「ぴかる!行くわよ!」

 かろが呼ぶ声がする。ぴかるはいつものように明るい笑顔で長老に大きく手を振った。宇宙船に乗り込んでいくぴかるを見送りながら、長老はしわくちゃの手を振る。その仕草はとても優しく、ぴかるにあげたプレゼントのように暖かかった。


 ☆


 宇宙船は高く高く、空の上へ上昇していく。その様子を窓から観察していたぴかるは、感動のあまりはしゃいでいた。

「すごい!もうお空が真っ暗!」

「かろ船長は最新技術の発明家です。なので、最大速度は容易く光速を越え――。」

「ムリ。」


「――ねえ、この旅に名前を付けてみない?」

「名前?どうして?」

 ぴかるの提案に、かろが首を傾げる。

「鏡の星では好きなものにあだ名をつけるんだ。だから、私はこの旅にも名前をつけたいの!」

「なるほど。確かに良いかもね。ねえころろ?」

「うん。それじゃ、何にする?」

「そうね……それなら――」

 

「星飯ぐるめぐり!なんてのは?」

第二章、近日公開予定>>>>

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