第五章中編 野菜のしらせ
かろところろは余ったホワイトソースを使ってパスタを作り、くのかの両親に渡した。
「折角だから、二人もどーぞ。」
「何から何まで……すみません。ここ最近不作続きで、くのかも私達もお腹を空かせていたので、有難いです。」
「それは大変ね。」
両親とかろところろ。四人で話をしている間、くのかは地面に満遍なく広がる小さな宝石たちを拾い集めていた。精霊の星の地面はこういった水色の欠片が散らばっていて、歩くとシャリシャリ音が鳴る。
両親は、遊んでいるくのかを遠くで見守りながら微笑ましげに笑う。
「あの子、寂しかったんだと思います。同年代の子がいなくていつも一人で遊んでいましたから。」
それを聞いた二人は、話が終わったあと、くのかに駆け寄り元気いっぱいに声をかけた。
「一緒に遊ぼう!」
☆
「かろ、ころろ、足おっそ〜い!」
鬼ごっこ中、本調子に戻ったくのかは森中駆け回りながら二人をからかう。
「じゃ、こっちも手加減なしでいくわよ。」
久々の遊びに熱が入ったかろが全速力で走りだし、くのかとの距離はあっという間に縮まっていく。くのかが驚いていたのも束の間、今度は後ろにいたハズのころろが前から追いかけてくる。挟みうちになったくのかは逃げ場を失い、一瞬で二人にタッチされてしまった。
「捕まえた!」
宇宙飛行士として当然体力のあるかろ。スピード重視のアンドロイド船ころろ。この二人が本気を出せば、そりゃ並大抵のエルフは負けてしまうだろう。
「ずっこい!ウチを油断させよう作戦だ!」
へへ、とかろが笑う。意地になったくのかが「今度は隠れんぼで勝負しよ!」と二人の手を引く。
☆
散々遊んで疲れた三人は、開けた宝石の野原に寝転がって空を見上げていた。
「かろ。かろはどうして宇宙飛行士になったの?」
なんとなく、くのかが聞く。そういえば聞いたことがなかったところろも耳を傾けた。
「元々は祖父母のあとを受け継ぐ形で研究チームに入っただけで宇宙飛行士になる気はなかったんだけど……、
百年後の大飢饉の予言があってから、どうしてもアルケミー星を救いたいって思うようになったの。」
「予言ってなに?」
――物を輸出する代わりにあらゆる星に予言を掲示する惑星、占いの星。予言の数々はこの占いの星から来る。
だけど、この星は空に張られた膜が星空を拒むせいで予言が来れない。だからくのかが知らないのも当然。
「そっか。くのかの星は宇宙が見えないから。」
太陽も月も見えないのに明るいこの惑星の空は、薄く虹色に輝く膜に覆われて、内側からでは星空を眺められない。
「そう。だから将来は宇宙飛行士になるって決めてるの。
星が見てみたいんだ。」
「空にある膜はとれないの?」
ころろが聞く。くのかは首を振った。
「ぱぱとままが言ってた。あれはエルフの力が集まってできた魔法だから、絶対に剥がせないんだって。」
くのかは足を振り上げ、バッと起き上がる。
「かろ、ころろ!次はなにして遊ぶ?ウチ、まだまだいーっぱい遊べるよ!」
☆
それから、三人はくのかの気が済むまで遊び倒した。村に帰ってくると、村人たちが頭を悩ませながら何かを話し合っているようだった。かろところろは気になって聞いてみる。
「どーかしたの?」
「ああ……実は、村の作物がどうしても育たないんだ。」
そういえば、くのかの両親も不作続きだと言っていた気がする。二人はもっと詳しく聞いてみることにした。
「環境は何も問題ないハズなのに……まるで、何かの力に吸い取られていくみたいだ。」
「君達は確か、別の惑星から来たんだったな。こんな状況で申し訳ないよ。」
村人たちはとても困っているようだ。かろところろは見過ごせず、顔を見合わせた。
「かろ。ワタシ達でこの村を助けてあげよーよ。」
「私も丁度、同じことを考えていたところ。」
☆
かろところろ、そしてくのかは村人に畑を見せて貰えた。確かに畑の野菜はどれも萎れて、形も歪んでしまっている。
「前触れもなく、急にこうなってしまったんだ。だから原因が分からず、もう何ヶ月もこんな状態だ。」
かろはもっと近くで見たくて屈もうとする。すると、かろのポケットから真心がひとつ転がり落ちた。カプセルに入れ忘れていたのだろう。慌てて拾おうとすると、転がっていった真心は水のように、畑の作物へ吸い取られていく。
「あーー!真心が……!」
ショックを受けるかろの側で、ころろは畑をじっと見つめている。何かに気がついたように。
――直後、真心を吸い取った作物はみるみる元気を取り戻し、ツヤのある美味しそうな野菜に生まれ変わった。二人も想定外だった出来事に、村人は「奇跡だ……!」と感激している。さっきまで落ち込んでいたかろも目を輝かす。
「これよ、ころろ!真心を畑にいっぱいあげて、野菜を生き返らせてあげるの。」
「でも、カプセルの中の真心はデータ化してるから今は取り出せないし、きちょーなんでしょ?」
「生み出せばいいじゃない。いっぱいね。」
「あ、ウチも手伝う……!」
かろところろ、くのかの三人は早速準備に取りかかる。
真心。料理に込められた気持ちが形になって現れるもの。村人たちはきっとお腹を空かせているだろうから、いっぱい作れば作るだけ、いっぱい食べてくれるだろう。そう考えてかろが思いついた作戦、名づけて『いっぱい真心集めよう作戦』はこうして始まった。




