第8話
【剣神の仮面】
風が止まっていた。
丘の上。
誰も言葉を発さない。
カナタはRを見ていた。
さっきまで
興味なさそうだった男が
今は明らかに
空気が変わっている。
ただ空を見ていた。
青い空。
流れる雲。
カナタが聞く。
「クロウって」
「誰なんだ?」
Rは静かに言った。
「……俺の師匠だ」
その時だった。
背後から
足音が聞こえた。
ゆっくりとした
重みのある足音。
全員が振り向く。
丘の道を
一人の男が歩いてくる。
黒い外套。
長い黒髪。
鋭い目。
年齢は高い。
だが、ただの老人ではない。
空気が違う。
圧倒的な存在感。
ユナが驚く。
「……クロウ」
カイが叫ぶ。
「マジで来た!」
Rは小さくため息をついた。
「……聞いてたのか」
クロウは歩み寄る。
そして静かに言った。
「全部な」
声は低い。
だがよく通る。
カナタは思った。
(この人……)
(強い)
直感だった。
クロウはカナタを見る。
その視線だけで
体が重くなる。
まるで見透かされているようだった。
クロウが言う。
「別世界の少年か」
カナタが驚く。
「……わかるのか」
クロウは頷く。
「その仮面」
「時空の仮面だな」
カナタは仮面を握る。
クロウは続ける。
「珍しい」
「まだ残っていたとは」
Rが言う。
「知ってるのか」
クロウは答える。
「昔の仮面だ」
「世界を越える仮面」
カナタが言う。
「俺の世界は」
「仮面に支配されてる」
「アルカディアって王が」
クロウの目が細くなる。
「……王の仮面か」
Rが聞く。
「勝てると思うか」
クロウはしばらく黙った。
そして言う。
「普通なら無理だ」
カナタの心が沈む。
だがクロウは続けた。
「だが」
「お前が行くなら」
Rを見る。
「話は別だ」
Rが苦笑する。
「俺は行かない」
クロウは言う。
「行け」
空気が止まる。
ユナが驚く。
「え?」
カイも言う。
「クロウ?」
Rが言う。
「理由は?」
クロウはカナタを見る。
「この少年の仮面」
「運命を感じる」
Rが鼻で笑う。
「運命ね」
クロウは懐から
一つの仮面を取り出した。
白い仮面。
鋭い紋様。
まるで刃のような模様。
空気が震える。
ジンが呟く。
「……それ」
ユナも言う。
「まさか」
クロウが言った。
「受け取れ」
Rが目を細める。
「……いらん」
クロウは静かに言う。
「これは」
「剣神の仮面だ」
カナタの心臓が跳ねる。
剣神。
クロウは続ける。
「剣を極めた者だけが使える仮面」
「お前のために残しておいた」
Rは黙る。
クロウはさらに言う。
「世界は広い」
「仮面はまだ残っている」
「そして」
「王も生まれる」
クロウはカナタを見る。
「この少年の世界の王」
「おそらく」
「強い」
Rが聞く。
「だから?」
クロウは答える。
「行け」
「そして確かめろ」
「仮面が本当に必要ない世界か」
沈黙。
風が吹く。
Rは仮面を見る。
剣神の仮面。
しばらくして
Rは小さく言った。
「……面倒だ」
だが
仮面を受け取った。
カナタの目が見開く。
Rは仮面を見ながら言う。
「一度だけだ」
カナタが顔を上げる。
Rは言った。
「お前の世界」
「見に行ってやる」
カナタの胸が熱くなる。
ユナが笑う。
「決まりね」
カイが叫ぶ。
「うおおお!」
ジンが小さく頷く。
クロウは静かに言った。
「行ってこい」
Rは剣を拾う。
そしてカナタを見る。
「戻る方法は」
カナタは仮面を握る。
「……わかる」
「この仮面が教えてくれる」
Rが笑う。
「便利だな」
カナタは言う。
「ただ」
Rが聞く。
「なんだ」
カナタは答えた。
「一人しか連れていけない」
沈黙。
Rは言う。
「問題ない」
剣を腰に携える。
「俺だけで十分だ」




