第4話
【時空の仮面】
街を離れてから、
四人はしばらく黙って歩いていた。
黒い空。
崩れた道。
風だけが吹いている。
レナがようやく口を開いた。
「……さっきの見た?」
カナタは答えない。
ガルムが言う。
「アルカディア様〜ってやつか」
「あれはもう、完全に信者だな」
レナが頷く。
「仮面を誇らしそうに触ってた」
「気味悪い」
少し沈黙が流れる。
その時。
シオンが静かに言った。
「でも」
三人が振り向く。
「間違ってるとも言い切れない」
レナが眉をひそめる。
「どういう意味?」
シオンは空を見上げた。
「昔の世界は」
「戦争ばかりだった」
「仮面ができる前は」
「国と国が争って」
「人は人を殺して」
「世界はずっと混乱してた」
ガルムが腕を組む。
「それは聞いたことある」
シオンは続ける。
「でも」
「アルカディアが現れてから」
「大きな戦争はなくなった」
「国もなくなった」
「争う理由もなくなった」
レナが言う。
「だからって支配されていいの?」
シオンは少し考える。
「……それでも」
「救われたと思ってる人は多い」
カナタは黙って聞いていた。
そして静かに言う。
「それでも」
三人が振り向く。
カナタの目は強かった。
「自由がない世界は」
「終わってる」
レナが少し笑う。
「同感」
ガルムも頷く。
「だな」
シオンだけが黙っていた。
カナタは胸元に手を当てる。
そこにある仮面。
古い仮面。
他のどの仮面とも違う。
円環の紋章。
時空の仮面。
レナが気づく。
「それ」
「祖父さんの仮面?」
カナタは頷く。
「祖父ちゃんが守ってた」
ガルムが聞く。
「何の仮面なんだ?」
カナタは少し迷う。
だが、言った。
「……別世界に行く仮面だ」
三人が止まる。
レナが言う。
「は?」
ガルムも目を丸くする。
「別世界?」
シオンだけが静かに聞く。
「本当に?」
カナタは空を見た。
祖父の言葉が蘇る。
「この仮面は」
「時空を越える仮面だ」
カナタは言う。
「祖父ちゃんが言ってた」
「この世界が完全に支配された時」
「この仮面を使えって」
レナが聞く。
「それで?」
カナタは答える。
「探せって言われた」
「ある男を」
ガルムが言う。
「誰だよ」
カナタは静かに言う。
その名前を。
「R」
風が吹いた。
レナが首をかしげる。
「誰それ」
ガルムも言う。
「聞いたことない」
だが。
シオンだけは
少し驚いた顔をした。
「……伝説の人」
三人が見る。
シオンは続ける。
「……」
「仮面の時代を終わらせた男」
カナタが頷く。
「祖父ちゃんも同じこと言ってた」
「その人なら」
「世界を変えられるって」
レナが腕を組む。
「つまり」
「そのRって人を探すってこと?」
カナタは仮面を握る。
「そう」
ガルムが笑う。
「面白いじゃねぇか」
「世界救う旅か」
レナも笑う。
「退屈しなさそう」
その時。
シオンが言った。
「でも」
全員が見る。
「この仮面」
「本当に使えるの?」
カナタは仮面を見る。
古い仮面。
だが
どこか暖かい。
祖父の声が蘇る。
「世界が終わる時に使え」
カナタは言う。
「……試してみる」
三人が驚く。
「今!?」
カナタは頷く。
「この世界はもう終わってる」
「だったら」
「次に行くしかない」
カナタは仮面を手に取る。
ゆっくり持ち上げる。
レナが言う。
「ちょっと待って」
「本当に大丈夫なの?」
カナタは笑った。
少しだけ。
「わからない」
「でも」
「祖父ちゃんを信じる」
風が止まる。
空気が変わる。
時空の仮面が
静かに光り始めた。




