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仮面のない空へ:常闇編  作者: R


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第3話

【仮面の支配】


街は静かだった。


静かすぎるほどに。


崩れた建物。

割れた石畳。

燃えた跡の残る壁。


だが、人はいる。


道を歩く人影。


店の前に立つ人影。


瓦礫を片付ける人影。


だが――


誰も話さない。


誰も笑わない。


誰も怒らない。


ただ、淡々と動いている。


そして全員が


仮面をつけていた。


黒い仮面。


表情のない仮面。


カナタたちは瓦礫の陰から

その光景を見ていた。


レナが小さく呟く。


「……また増えてる」


ガルムが低く言う。


「この街も、もう終わりだな」


街の中心には

巨大な像が立っていた。


黒い石で作られた像。


長い外套。


王のような姿。


そして――


顔には仮面。


台座には名前が刻まれていた。


アルカディア


その像の前に

人々が集まっている。


仮面をつけた人々。


その中の一人が

ゆっくり声を上げた。


「我らの王に感謝を」


周囲の人々が

同じ言葉を繰り返す。


「感謝を」


「感謝を」


声は静かだ。


だが、迷いはない。


一人の老人が言った。


「かつて世界は混乱していた」


「戦争があり」


「争いがあり」


「人は人を殺していた」


別の男が続ける。


「だが王はそれを終わらせた」


「アルカディア様が世界を救った」


「仮面を与えてくださった」


人々が仮面に触れる。


まるで


宝物のように。


「この仮面があれば」


「人は迷わない」


「争わない」


「苦しまない」


一人の女が言った。


「常闇こそ救い」


その言葉に

全員が頷く。


「常闇こそ救い」


「王に従え」


「常闇に従え」


その光景を見て


レナが顔をしかめた。


「……気持ち悪い」


ガルムも小さく言う。


「洗脳だろ、あれ」


だが


シオンは静かだった。


何も言わず

人々を見ている。


カナタは拳を握った。


(違う)


あれは


洗脳だけじゃない。


信じている。


本気で。


アルカディアを。


常闇を。


(どうして……)


カナタの胸に

重い感情が広がる。


その時だった。


人々の中の一人が

言った。


「反逆者がいる」


周囲がざわめく。


「まだ仮面を拒む者がいる」


「愚かな者たち」


「王の慈悲を理解できない」


「だが心配はいらない」


男は笑った。


「やがて全員が救われる」


「仮面を受け入れることで」


「すべてが終わる」


「苦しみも」


「争いも」


「自由も」


カナタの拳が震える。


自由も。


その言葉が

胸に刺さった。


その時。


ふと


昔の光景が浮かぶ。


暖炉の前。


小さな家。


祖父の声。


ソウゲン。


あの優しい声。


「カナタ」


「覚えておけ」


祖父は言った。


「この世界は、いつか闇に覆われる」


「人は仮面に支配される」


幼いカナタは

意味がわからなかった。


「でも」


祖父は続けた。


「その時が来たら」


「これを使え」


祖父が差し出したのは


古い仮面。


他の仮面とは違う。


円環の紋章が刻まれている。


「これは」


「時空の仮面だ」


カナタが聞いた。


「じくう?」


祖父は頷く。


「時空を越える仮面だ」


「そして」


祖父は静かに言った。


「探せ」


「仮面の時代を終わらせた男を」


カナタが首をかしげる。


「だれ?」


祖父は言った。


その名前を。


「R」


記憶が途切れる。


カナタは現実に戻る。


目の前には


仮面を崇拝する人々。


アルカディアの像。


黒い空。


(祖父ちゃん……)


カナタは胸元の仮面を握る。


(あんたが言ってた世界は)


(本当に来た)


そして思う。


(だったら俺は)


(やるしかない)


祖父が残した


最後の希望を。


時空の仮面を。

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