第25話
【第八席】
黒い城。
空を貫く巨大な塔。
その内部。
闇の回廊。
リリスが歩いていた。
その後ろに
一人の男。
黒い仮面。
侵食の仮面。
シオン。
彼の足音は静かだった。
まるで
何も感じていないように。
やがて
巨大な扉の前に着く。
リリスが言う。
「ここよ」
シオンは黙っている。
リリスが扉に触れる。
ドォォォン……
重い音と共に
扉が開く。
その先は
巨大な玉座の間。
闇の広間。
そして
玉座。
そこに
一人の男が座っていた。
長い黒髪。
白い肌。
王の仮面。
常闇の王。
アルカディア。
シオンはその男を見上げる。
アルカディアが言う。
「来たか」
声は
静かで
穏やかだった。
リリスが跪く。
「連れてきました」
アルカディアの視線が
シオンに向く。
その瞬間
空気が変わる。
圧倒的な存在感。
だが
シオンは動かない。
アルカディアが言う。
「侵食の仮面」
少し笑う。
「美しい」
シオンが言う。
「……あんたが」
アルカディアが答える。
「アルカディア」
シオンが言う。
「この世界の王か」
アルカディアが頷く。
「そうだ」
静かに立ち上がる。
ゆっくりと
シオンの前まで歩く。
二人が向かい合う。
アルカディアが言う。
「どうだ」
「その力は」
シオンは手を見る。
黒い侵食。
それは
もう身体の半分を覆っていた。
シオンが言う。
「悪くない」
アルカディアが微笑む。
「当然だ」
「それは」
「常闇の力だからな」
沈黙。
アルカディアが続ける。
「お前は選ばれた」
「侵食の器だ」
シオンが言う。
「器?」
アルカディアが言う。
「そう」
「そして」
後ろを指す。
玉座の間。
そこには
八つの席があった。
そのうち
四つが空いている。
アルカディアが言う。
「八将」
シオンが見る。
アルカディアが続ける。
「この世界を支配する」
「常闇の仮面」
そして
一つの席を指す。
一番奥。
まだ誰も座っていない席。
アルカディアが言う。
「第八席」
沈黙。
シオンが聞く。
「俺に座れと?」
アルカディアは答える。
「そうだ」
「侵食の仮面」
「お前に相応しい席だ」
シオンは少し黙る。
そして
席を見る。
ゆっくり歩く。
その席の前に立つ。
リリスが微笑む。
「おめでとう」
シオンが振り向く。
アルカディアを見る。
「一つ聞く」
アルカディアが言う。
「なんだ」
シオンが言う。
「カナタ」
その名前が出た瞬間
アルカディアの目が少し細くなる。
シオンが続ける。
「殺していいのか」
リリスが笑う。
アルカディアは少し考える。
そして
言った。
「好きにしろ」
「だが」
その声は
どこか楽しそうだった。
「もし出来るなら」
「連れてこい」
シオンが聞く。
「なぜ」
アルカディアが答える。
「時空の仮面」
「興味がある」
沈黙。
シオンは席を見る。
そして
座った。
その瞬間
空気が震える。
仮面が光る。
黒い力が広がる。
アルカディアが言う。
「歓迎する」
「侵食の仮面」
「第八席 シオン」
その言葉が
闇の城に響いた。
遠く
世界のどこかで
カナタが
拳を握っていた。
知らないまま。
仲間が
完全に
敵になったことを。




