第22話
【侵食覚醒】
夜。
荒野には
静かな風が吹いていた。
誰も喋らない。
さっきの戦い。
そして
リリスの言葉。
その余韻が
まだ残っていた。
ガルムが言う。
「……あいつ」
「また来るな」
レナが頷く。
「間違いなく」
カナタは黙っていた。
視線は
シオン。
少し離れた場所に立っている。
背中が見える。
カナタが歩く。
「シオン」
声をかける。
シオンは動かない。
カナタが言う。
「さっきの奴の言葉」
「気にするな」
沈黙。
シオンは空を見ていた。
黒い空。
カナタが言う。
「侵食なんて」
「俺たちで何とかする」
その瞬間。
シオンの肩が
わずかに震えた。
カナタが言う。
「……シオン?」
シオンが呟く。
「何とかする?」
カナタが止まる。
シオンが振り向く。
その目は
完全に黒く染まりかけていた。
カナタが息を呑む。
「……それ」
シオンが笑う。
だが
その笑いは
いつものものではない。
「何とかするって」
「どうやって?」
カナタが言う。
「それは……」
シオンが腕を見せる。
黒い侵食。
肩を越えて
胸元まで広がっていた。
レナが叫ぶ。
「そんな……」
シオンが言う。
「止まらない」
その声は
どこか遠い。
「何をしても」
「止まらない」
カナタが言う。
「でも!」
シオンが叫ぶ。
「うるさい!!」
空気が震える。
ガルムが身構える。
「おい……」
シオンの仮面が
黒く光る。
ドクン。
鼓動のような音。
レナが震える。
「仮面が……」
シオンが頭を押さえる。
「くそ……」
「止まれ……」
だが
黒い霧が
体から溢れ始める。
カナタが近づく。
「シオン!」
シオンが叫ぶ。
「来るな!!」
ドォォォン!!
黒い衝撃波が広がる。
カナタが吹き飛ぶ。
「ぐあっ!」
ガルムが叫ぶ。
「カナタ!」
レナが炎を構える。
「シオンやめて!」
だが
シオンは聞いていない。
その目は
完全に黒くなっていた。
シオンが呟く。
「……力」
その手を見る。
黒い力。
「すごい」
ガルムが怒鳴る。
「正気に戻れ!」
シオンがゆっくり顔を上げる。
その視線が
ガルムを捉える。
そして
笑った。
「正気?」
次の瞬間。
シオンが消えた。
ガルムが目を開く。
「なっ――」
ザンッ!!
ガルムの胸が裂ける。
血が飛ぶ。
レナが叫ぶ。
「ガルム!!」
カナタが立ち上がる。
「シオンやめろ!」
シオンが言う。
「やめる?」
その声は
冷たい。
「なんで?」
カナタが叫ぶ。
「仲間だろ!」
シオンの目が
揺れる。
一瞬だけ。
だが
すぐに消える。
シオンが言う。
「……そうだったな」
その時。
Rが前に出た。
静かに。
剣を抜く。
シオンが見る。
「剣神」
Rが言う。
「そこまでだ」
シオンが笑う。
「止めるのか」
Rは答える。
「当然だ」
シオンが剣を構える。
黒い力が
刃にまとわりつく。
「なら」
「やってみろ」
カナタが叫ぶ。
「やめろ!!」
だが
もう止まらない。
Rとシオン。
二人が
同時に動いた。
ガキィィン!!
剣と剣がぶつかる。
衝撃が
荒野を揺らす。
レナが震える。
「嘘……」
カナタが呟く。
「シオン……」
その瞬間。
遠くの闇の中で
誰かが笑った。
「始まった」
魅惑の仮面。
リリス。
彼女は静かに言う。
「もうすぐ」
「八将が生まれる」




