第20話
【常闇の王】
世界の中心。
巨大な城があった。
黒い塔。
空を貫くように伸びている。
その周囲を
無数の仮面兵が歩いていた。
だが
彼らの顔は恐怖ではない。
むしろ――
敬意。
崇拝。
「アルカディア様の御心のままに」
静かにそう呟いていた。
城の最上階。
巨大な玉座の間。
そこには
一人の男が座っていた。
長い黒髪。
白い肌。
そして
仮面。
王の仮面。
それが
常闇の王 アルカディア。
玉座の前には
三つの影が立っていた。
仮面を被った者たち。
その一人が言う。
「報告します」
「第一席グラド」
「第二席ヴェイル」
「第三席ラグナ」
「……討伐されました」
沈黙。
広い玉座の間。
静寂。
やがて
アルカディアが口を開いた。
静かな声だった。
「そうか」
怒りはない。
ただ
興味だけがあった。
「剣神か」
一人の八将が言う。
「はい」
「異世界から来た存在」
「剣神の仮面」
アルカディアが小さく笑う。
「面白い」
別の八将が言う。
「問題は」
「もう一人です」
アルカディアが視線を上げる。
「時空の仮面」
その名前が出た瞬間
空気が変わった。
八将の一人が言う。
「危険です」
「伝承では」
「時空の仮面は」
「世界を越える力」
アルカディアは頷く。
「知っている」
ゆっくりと
玉座から立ち上がる。
長いマントが揺れる。
「だが」
アルカディアの声は
どこか楽しそうだった。
「それだけではない」
アルカディアが言う。
「もう一人」
八将が言う。
「……侵食」
アルカディアの目が
わずかに光る。
「そう」
「侵食の力」
八将の一人が言う。
「すでに始まっています」
アルカディアは笑った。
「早いな」
八将が言う。
「どうしますか」
アルカディアは
窓の外を見る。
黒い空。
その先。
遠くにある
カナタたちのいる場所。
アルカディアが言う。
「見たい」
八将が驚く。
「王自ら?」
アルカディアは首を振る。
「いや」
指を一本立てる。
「第四席」
その瞬間。
闇が揺れた。
玉座の影から
一人の女が現れる。
細い身体。
長い黒髪。
静かな仮面。
彼女は跪く。
「命令を」
アルカディアが言う。
「行け」
「そして」
「観察しろ」
女が聞く。
「殺しますか?」
アルカディアは答える。
「いや」
その声は
冷たく
静かだった。
「その男を」
「こちら側にする」
八将たちが黙る。
女が言う。
「侵食の仮面」
アルカディアが頷く。
「空席がある」
玉座の奥。
そこには
八つの席があった。
だが
三つは消えている。
そして
一つは
最初から空席だった。
アルカディアが言う。
「第八席」
女が静かに言う。
「新しい八将」
アルカディアは
笑った。
「楽しみだ」
「侵食が」
「どこまで進むのか」
女が立ち上がる。
「承知」
仮面が光る。
「第四席」
「魅惑の仮面 リリス」
闇が揺れる。
そして
彼女の姿は消えた。
玉座の間。
アルカディアは
空を見上げる。
そして
静かに言った。
「来い」
「少年」
「剣神」
「侵食の器」
その声は
まるで
世界そのもののように
静かで
恐ろしく
優しかった。
「世界は」
「すぐそこだ」




