第10話
【剣神の帰還】
黒い空。
太陽はあるはずなのに
光は届かない。
世界は
常闇に覆われている。
瓦礫の街の外れ。
丘の上で
レナたちは空を見ていた。
ガルムが腕を組む。
「……遅いな」
レナは小さく言う。
「カナタ……」
シオンは黙って空を見ていた。
その時。
空が歪んだ。
空間がねじれる。
黒い空に
光の裂け目が走る。
レナが叫ぶ。
「来た!」
次の瞬間。
光が弾ける。
二つの影が
地面に降り立った。
カナタだった。
そして
もう一人。
黒いコートの男。
長い剣を腰に携えている。
ガルムが目を細める。
「……誰だ」
カナタが息を整える。
「みんな」
「ただいま」
レナが走り寄る。
「カナタ!」
だが途中で止まった。
Rを見ている。
カナタが言う。
「紹介する」
「Rだ」
シオンの目が動く。
「……R?」
ガルムが聞く。
「強いのか」
Rが答える。
「そこそこ」
その瞬間だった。
遠くの街から
叫び声が聞こえた。
「見つけたぞ!!」
レナが振り向く。
瓦礫の向こうから
黒い影が現れる。
常闇兵。
黒い仮面。
黒い外套。
だがその目には
狂気ではなく
崇拝の光があった。
先頭の男が叫ぶ。
「常闇の敵だ!」
「アルカディア様に捧げろ!」
次々に現れる。
十人。
二十人。
三十人。
レナが言う。
「まずい……」
ガルムが拳を鳴らす。
「ちょうどいい」
シオンが剣を抜く。
だが
Rが前に出た。
「待て」
カナタが言う。
「R?」
Rは剣を抜いた。
シャッ――
静かな音。
Rは前を見る。
迫ってくる常闇兵。
Rが呟く。
「なるほど」
「崇拝型か」
カナタが聞く。
「わかるのか?」
Rは言う。
「仮面は人を操る」
「でもこれは違う」
「心まで染めてる」
常闇兵が叫ぶ。
「アルカディア様のために!」
「この世界は救われた!」
「抵抗する者は罪人だ!」
レナが小さく言う。
「……これが」
「常闇の思想」
Rが剣を構える。
「まあいい」
常闇兵が突撃する。
「捕らえろ!」
「仮面を捧げろ!」
次の瞬間。
Rが動いた。
一歩。
それだけだった。
視界から消える。
ガルムが驚く。
「速っ――」
次の瞬間。
ザンッ!!
一閃。
空気が裂ける。
常闇兵の武器が
すべて斬れていた。
剣。
槍。
鎖。
全部
真っ二つ。
兵たちが止まる。
何が起きたかわからない。
Rが言う。
「武器は落とせ」
静かな声。
だが
次の瞬間
全員の武器が地面に落ちた。
カナタが呟く。
「……すごい」
だが
常闇兵は笑った。
「無駄だ」
一人の兵が言う。
「アルカディア様の意志は」
「止まらない」
別の兵が言う。
「この世界は」
「常闇に導かれる!」
Rが小さく笑う。
「……なるほど」
そして剣を肩に乗せる。
「面白い」
レナが驚く。
「え?」
Rは空を見る。
黒い空。
どこか遠く。
そして言った。
「この世界」
「思ったより腐ってるな」
カナタが言う。
「だから」
Rは頷く。
「わかってる」
そして剣を構える。
「全部斬る」
その時だった。
遠くの塔。
常闇の城。
その頂で
一つの影が立っていた。
黒いマント。
白い仮面。
静かに街を見下ろしている。
その存在は
ゆっくりと呟いた。
「……来たか」
声は静か。
だが
絶対的な威圧。
その名は――
アルカディア。
常闇の王。
アルカディアは
小さく笑った。
「面白い」
「仮面を砕く男」
「R」
その目が光る。
「歓迎しよう」
「この世界の終わりへ」




