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Vol.47:バック・イン・ザ・デイ(2)

―MYMIMI:2011―

 食事を終えたミミミとシドは場所を移し、近くの喫茶店にてひとりの女性と対面していた。彼女もまた、先ほど逃げていった男と同様にミミミにブックハント……すなわち本探しの依頼をしてきた人物である。年齢は四十代、三角眼鏡にやや厚化粧なのが特徴だ。

「この度はご依頼頂きありがとうございます。超☆美少女女子中学生ブックハンターのミミミです」

座間須(ざます)ザマス。よろしくザマス」

 座間須はくいっと眼鏡の位置を正した。

「あの……ところで隣の彼は一体誰ザマスか」

「ブックハンター見習いみたいな物ですよ。気にしないで下さい」

「勝手に変な設定付けるのやめてくれない」

「では早速内容を伺いたいんですけど」

「はい……望月鳴子(もちづきなるこ)先生……本にお詳しいブックサンタさんならご存知ザマしょ?」

「ブックハンターです……え、えー……も、もちろん知ってますとも……」

 ミミミの指先が落ち着かない様子で急に遊び始める。シドは彼女が嘘をついている事を何となく理解した。見栄を張っているに違いない。

「き、君も知ってるよなあ見習い君」

「いえ知らないです」

「な、何だとー!? あの望月先生だぞ!? それを知らないなんて無知にも程がある! そうですよねえ座間須さん!」

「……まあ知らなくてもしようがないザマス」

「しょーがない! 知らなくてもしょーがないよ見習い君! なっはっは!」

 見ているこっちがヒヤヒヤする。

「正直、望月先生はとても有名とは言えない方ザマス……ブックサンタさんならご存知ザマしょうが」

「ブックハンターです……えーえーモチのロンご存知ですよ……あれだけ素敵な作品を書かれているのに非常に残念です!」

「やっぱりそう思うザマしょ!? 『氷の仮面』なんて傑作中の傑作ザマス! 当時の少女漫画の中でもあの作品は際立っていると思うザマスよ!」

「そうそう少女漫画! ……あーごほんっ! 知ってましたよ? 少女漫画家の望月鳴子先生ですよね? もちろん知ってますとも。確かにあれは素晴らしい! いやーまさしく少女漫画の王道を行く作品でした!」

「……そうザマスか? あたくしは異彩を放っていると感じているザマスが」

「勘違いでした! 覇道! 覇道の作品ですまさしく! 望月先生の描く繊細な心理描写がもう見事で見事で……!」

「そうザマスよね! さすがブックサンタさん! わかってらっしゃるザマス! 望月先生の作品の魅力は何と言ってもそこザマスよ!」

「ブック! ハンター! ……いやまったくその通り! 名だたる女性作家の中でもその点は望月先生がダントツで上手いですよね!」

「望月先生は男の方ザマスよ」

「男かい!!!!」

「……あなた、本当に望月先生を知ってるザマス?」

「ギクッ! ……な、何を仰るんですか……知ってるに決まってますよ、ちょっとしたジョークですよジョーク……で、さっさと本題に移りましょうか。今回のターゲットについてお聞かせ下さい」

「…………わかりました」

 何やかんやで上手く誤魔化せた様である。座間須は思い出を語り始めた。

「あれはもう25年前になるザマスね……あたくしは大学受験を控えて勉強漬けの毎日を送っていたザマス。両親の躾は厳しく、一流の高校に通っていたあたくしは一流の大学に入るために必死に努力していたザマス。だけど時々受験勉強のプレッシャーに耐え切れず、中古の本屋に足を運んで息抜きで漫画の立ち読みをしていたザマス……あの時は漫画を買って親にでも見付かったら酷く怒られる事が目に見えていたザマスから。ですがそこで……」

「望月先生の作品に出会ったと」

「その通りザマス! 受験勉強も終盤になった頃、たまたま読んだ『望遠の彩華(サイカ)』にとてものめり込んでしまったザマス。立ち読みはあくまでも息抜き。一度に単行本を1冊だけ読むとすぐに家に帰っていたあたくしは『サイカ』を2巻まで読んだザマス」

「はいはい」

 ミミミはじっくりと話を聞いていく。

「そして念願の一流大学に無事合格し、ひとり暮らしを始めたあたくしは思う存分読めると思って『サイカ』の単行本をしっかりと購入していく事を決めたザマス。いくつかの書店を回ったザマスが、25年前の時点で『サイカ』は既に完結してから数年が経っていた作品……どこにも置かれてはいなかったザマス。そこでしょうがなかったので中古で買っていく事にしたザマス。ですが……」

「ですが?」

「……3巻だけが! どこに行っても無いザマスよ! 全4巻の内! 3巻だけが!」

「あー、あるあるですね」

「『サイカ』ですっかり望月先生のファンになったあたくしは先生の作品を調べて片っ端から集めていったザマス! ですが『サイカ』の3巻だけは! どこにも売ってないザマス!! 四半世紀経った今でも未だにあたくしの手元にはありません!!!! あとはそれさえ手に入れれば先生の作品をコンプリート出来るザマス!!!! 一ファンとして何としても揃えたいザマス! 何よりあたくしはあれだけサイカと仲の悪かったメグがどうして命を落として、サイカにとってかけがえのない存在になったのか、その経緯を未だに知らないザマス!!!!!!!!!」

 途中の巻を読んでいないせいで大事な展開、物語における重要な転機を知らないという事だ。二十五年もの間ずっと。確かにそれは非常にもやもやする。

「なるほど。つまり今回ハントを依頼したいのは……」

「はい! 望月鳴子先生の名作『望遠の彩華』の3巻! これを探して欲しいザマス!」

「喜んでお引き受けしましょう! 信頼と実績の超☆美少女ブックハンターミミミちゃんにお任せあれ!」

 ふたつ返事でミミミは依頼を引き受けた。

依頼人とのやり取りをする場面は書いてて好きです。何というか、キャラクターの人生を垣間見ている気がして。

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