Vol.34:コロンシリーズ再び(15)
ミミミ達は二冊のコロンシリーズを手に入れる事に成功。そのままコトトネを後にするのだった。
「な……何だこれは……!!」
駐車場に着き自分達の乗ってきた車を見てジェイクとエルシィは愕然としていた。タイヤが全てパンクしており、とても運転出来る状態には見えない。降りた時は何の異常も無かったはずだ。
「まさか……奴等の仕業か……!?」
「……も、もしかしたらあのゴスロリさんが傘で……ウ、ウチがマリーの所に行っている間に……!」
エルシィは抱きかかえているミアマリーに視線を落とす。すやすやと寝息を立てていた。キースとダンは車で拾おうとその場に残してきた。
「す、すいませんっスジェイクさん……ウチがあの場を離れたから……」
「……クソが……!」
ジェイクは怒りから車を蹴り始めた。
「クソが…クソが……! 諦めろって言うのか……!? もう少し……もう少しだったんだぞ……!」
「ジェ、ジェイク……エル……」
その時ふたりの前に意識を取り戻したキースが姿を見せた。申し訳無さそうな表情で言葉を探している。
「や……奴等はどうなったんだい? コロンシリーズは……」
「……奴等に奪われちゃったっス」
「……! す、すまない、僕が気絶していたせいで……」
「あーあー、せっかくの車を台無しにしちゃって」
「!」
今度は車の中から突然ひとりの男が出てきた。今回のハントの依頼をしてきた歴史書解放戦線の諜報員の男だ。確か北条と名乗っていた。なぜ自分達の使っていた車に乗っていたのかとエルシィは疑問に思ったが彼の異能力について思い出し合点した。
「高かったんだよこれ……まあよかったよ、ドアがまだ使える状態でさ」
北条は微笑を浮かべながら一同を見回し状況を理解する。
「その様子だと、どうやらコロンシリーズは奴等に奪われちゃったみたいだね」
「……ああそうだ。ハントには失敗した」
ジェイクが悔しそうに返した。
「……俺達を殺しに来たのか?」
「!」
その場に緊張が走る。エルシィもキースも同時に身構えた。しかし北条は目を丸くした後にけらけらと笑って言った。
「殺す? おいおい、俺達を殺人集団か何かと勘違いしてるんじゃないのかい? 別に何もしやしないさ。気になって状況を見に来ただけだよ。ただハントに失敗した以上金は払わないし、定期契約の話は無くなるけどね」
「……」
「……だけど、諦めるのはまだ早いよ、ミスターズ・アンド・ミス」
「……? どういう事だ」
「どうやら上はこの場合に備えて予備計画を立てていたみたいなんだ。これからそっちの準備に入るらしい」
「予備……プラン……?」
「奴等はこれから高速に乗って東京に帰るつもりだ。ルートはわかってる。副都心に入った所で歴史書解放戦線が足止めをするからその間に君達が奇襲をしかけるんだ」
「……! まだチャンスはあるってのか……?」
「君達次第だけどね」
「け、けど……どうやって東京まで……! あ、そうか……あんたの力で……」
「そういう事」
彼はぼこぼこになった車の扉を示した。
「『D2D』で君達は一瞬で東京に先回り出来る……条件に変更は無いから安心するといいさ。コロンシリーズを奪い返せたら当初の約束通り君達とは定期契約を結び、優先的に仕事を与えよう。依頼は山ほどある。もちろん金は弾むよ。特にミスター・ジェイクは必要なんだろう? 妹さんの療養費が」
「……」
ジェイクは静かな、しかし鋭い眼差しで北条を睨んでいる。
「そういえば、あなたの妹さんはミス・エルシィや今回機構が依頼したあの『ミセス・〈マム〉』の娘と同じくらいの年だったね……もしかして今回はそのせいで気持ちが緩んじゃったのかな? オーガと恐れられるほどの男が」
「……違う。そんなんじゃねえ……だが油断していたのは否定出来ないかもしれねえ。所詮はただのガール……1対1なら俺が負けるはずは無かった……実際あのガールに負けた訳ではないしな」
「でも負けは負けだ」
「わかってるさ」
「これがラスト・チャンスだよハンターズ・サークル。さあどうする? 受けるか受けないか」
「言うまでもないだろう」
ジェイクの言葉にふたりは力強く頷いた。
「……オーケー。それじゃあ行こうか」
「ちょっと待ってくれ。その前にマリーとダンを宿まで連れ帰りたい。ふたりはここに置いていく」
そして、ブックハンター対ブックハンター……暦史書管理機構対歴史書解放戦線のコロンシリーズを巡る攻防は最終局面を迎える。
次回より終盤戦に突入です。いつも通り予定よりも長くなっちゃってます。舞台は移って明け方の東京。最終決戦の始まりです。もう少しお付き合いを。




