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Vol.25:コロンシリーズ再び(6)

僕は今ブレス・オブ・ザ・ワイルドをプレイしてます。

「私達の中に裏切り者がいるって事か」

 ミミミの発言に対して最初に反応したのはアプリコットだった。

「んー……正確にはちょっと違うかな。元々向こうと繋がりがある奴がボクらの仲間としてこの中に紛れ込んでるんじゃない?」

「で……でもここにいるのはお前も含めて全員ユウコさんに選ばれたんだぞ。その中に向こうの知り合いが偶然いるなんて可能性低過ぎだろ」

「いや、それもちょっと違う。ユッコちゃんだけで選んだ訳じゃない。ボクはおっさんが推薦したみたいだし」

「……!」

 シドはごくりと唾を飲み込んだ。

「……おいおい、じゃあ何だよ、敵と繋がってる人間が元から機構にいたって事なのか……?」

「……ま、ただの推測だけどね」

「そんな事を言われては心外だな」

 ヤンが静かに口を開いた。

「……考え過ぎじゃないのか」

「考えないよりはいいよ」

「……」

 一同の間に沈黙が走る。疑心。どうしてこいつは確証も無いのに全員の前でこんな事を言い出したのか。緊張感が漂う。

「……お前の言う様に、引っかかる部分は確かにある。ま、あくまでも仮説として私は頭に留めておくよ」

「悪いが嬢ちゃん、俺はこの場の全員を仲間として信じてる。嬢ちゃんの意見には賛同出来ないな。裏切り者なんていない」

「……どちらにせよオイラは機構の一員として与えられた仕事を遂行するだけだ。もしもお前の言う通りだったとしても、その時はオイラの異能力で何とかしてみせるさ」

「……そだね。何か空気が重くなっちゃったな」

 お前のせいだよ!

「まーまー、もっかい言うけどただの推測だから。仕事は楽しくやろうよ楽しく! はいリセット!」

 ミミミがぱんぱんと手を叩く。だからお前のせいだって。

「取られちまったもんはしょうがねえ。それじゃこれから俺達はどう出るか……だ」

 気持ちを切り替え風見が話題を変える。

「決まってるっしょ。もう1冊を今度こそ先に取る。んでパクられた方を奪う。これで完璧」

「お前相変わらず簡単に言うよな……奪うって、相手は異能力者なんだぞ? そんな簡単にいくのかよ」

「だが実際そうするしかないだろう。最優先は本だ。確実に手に入れておきたい」

 アプリコットはミミミに同調した。ヤンは何も言わないが異論は無いという意味だろう。

「話はまとまったな。『岩戸の深奥』はもうわかった。次は『御姫の御足元』だ」

「やっぱり像を探すのか?」

「それなんだが、正直もうわからん……岩戸が井戸を指してたんだし、文字通りではなさそうだ。御姫って言うからには女性に関連したものだとは思うが……」

「私達も西の方を探してみるか? あっちはほとんど見ていないだろう」

「全員で動くのは効率が悪い……各自自由に動いてみるか? どうせヒントは無いんだ。それぞれが情報を集めた方がいい気がする」

「それには賛成だが……その……」

 風見の提案に対してヤンが何やら言い淀む。

「どうした?」

「確かに効率は悪いが、全員でまとまっていた方がいい気もする。その……もし、仮にこのバット娘の言った事が本当だったとしたら……」

「全員でまとまってた方が相互監視にはなるよね」

 彼の言いたかった事を代わりにミミミが伝えた。

「なるほど……しかしそれにこだわり過ぎて結局本を見付けられなかったら本末転倒だ。敵の狙いはまさに俺達をそうする事かもしれねえしな。ま、俺は裏切り者なんていないと信じてるが」

「じゃあもしボクが内通者だったら、自由行動中に一旦向こうの仲間の元へ行って相談するかも」

「お、おいお前自分から何言ってんだよ!」

 シドは焦る。ミミミが内通者だなんて百パーセント思っていないが、彼女の「自分がそうなら」などという発言に対して他の三人はどう思うのかわからない。

「……それでも構わねえさ。どっちにしろ手がかりは無いんだからな」

「まあー確かに」

「一旦車で旅館に戻ろう。それから各自行動してくれ。日暮れを目安に旅館に集合だ」

「OK」


 そして日が暮れ、各自行動を終えたメンバーは旅館に戻ってきた。シドはとりあえず引き続き女性の像を目当てに旅館近くを歩き回っていたが、有力そうな情報は見付からなかった。食事の席での各自の報告によると他のメンバーも成果は芳しくなかったらしい。

「西の方に行ってみたら奴らを見付けたよ」

 アプリコットは本探しではなく、敵ハンターに接近する事を図った様だ。

「直接話した。しらばっくれていたがあの様子だとやはり1冊は既に手に入れているな。奴らがどんな異能力を使うのか少しでもわからないかと思ったが、そこまではさすがに無理だった。長居したら私が危なくなるしな。さすがに明日はちゃんと本の手がかりを探すよ」

 一方風見は町の史料館に行ってきたとの事だ。

「古い文献に何か関係がありそうなのが無いかと思ってな。明日も行くつもりだから付いてきたい奴は付いてきていいぞ」

「ねえシド、食い終わったらゲームコーナー行かない? 確かはじっこの方にあったっしょ?」

「唐突に何だよお前」

 一連の報告が終わった後ミミミがシドに話しかけてくる。確かに旅館の通路の奥の方にゲームコーナーがあった。

「ええ~いいじゃ~ん、可愛いぬいぐるみがあったんだよ~、ねえ~、取ってよ~」

「どこの女子高生だよ」

「女子高生ですが何か」

「はっは、いいじゃないか少年。せっかくのデートのお誘いだぞ。付き合ってやれよ」

「きゃっ、デートだなんてそんなぁ……ポッ」

「お前はいちいちノるんじゃないよ!」

「デート、デートか……オイラもいつかリリィたんと……」

 という訳で食後、シドはミミミと一緒にゲームコーナーを訪れた。人は誰もいない様だ。

「で、どれだよそのぬいぐるみっつーのは」

「え? んなもん無いよ」

「何だよそれ……じゃあ何の用だよ」

「……いちいち言わないとわかんないの?」

「わかるか」

「……シドと……ふたりきりになりたかったから……言わせないでよ!」

「トゥンク……で、そういうのはいらねえから」

「嘘じゃないよ。シドにどうしても伝えたい事があって」

「何だよ」

「……明日の朝さ、ふたりでこっそり抜け出しちゃおうよ……ね?」

「……! もしかして見付けたのか? お前……」

「多分ね」

 ミミミはぱったりと演技をやめた。始めるのも突然だが終わるのも突然である。

「どうだった? 修学旅行の宿泊先でクラスメイトの女子と一緒にこっそりいけない事をする予感を感じさせるシチュは」

「お前じゃなきゃ最高だったっていつも言ってる……で話を戻すが、見付けたんだな? もう1冊の手がかり……さっきは成果無しとか言ってなかったか?」

「あーあれ嘘。ボクは自分の推測を信じてるからね」

 自分の推測……内通者がいるという物だ。

「お前何であんな事をあの場で言ったんだよ。気まずくなったじゃねーか」

「デブのおっちゃんも言ってたじゃん。全員の前で言えば相互監視に繋がるし、あと内通者さんも少しは動きづらく感じるかなと思って。ボクがそいつならこうするってのも、今後の行動に少しでも制限をかけられるかもって思ったから」

「お前の考えはわかった。でよ、行くんならその相互監視が働く全員で行けばいいんじゃねえか。もしその場で内通者とやらが正体を現して本を奪い取ったとしても、4人……じゃねえ3人……いやふたりか。とにかく他の複数の異能力者を相手にしたら不利になるんじゃねーか? だとしたら下手に動かない気がするんだが」

「でも異能力って実際何がどうなるかわかんないじゃん。だから行くのは100(パー)内通者じゃないボクとお前のふたりだけ」

「僕が内通者じゃない確証はあんのかよ」

「お前内通者なん?」

「いや違うけど」

「どうせお前がそうだったとしてもバットでボコボコにするだけだし」

「わかんねえぞ? お前には言ってないだけで実は異能力に目覚めて……」

「どーせお前に発現する異能力なんてスカートの中を透視するとかパンツの柄なりバストサイズなりがわかるとかそういう下らない異能力でしょ」

「なっ……何だその素晴らしい異能力は……!」

「引くわ。とにかく明日は7時に出発ね。おっちゃんにもあんちゃんにも気付かれない様に部屋を抜け出してこいよ」

「へいへいわかったよ」

 話を終えた後、せっかくなので古い対戦格闘ゲームをしばらく遊んでから部屋に戻った。


 ブックハント五日目早朝。ミミミの指定した通り旅館のエントランスであくびをしながら彼女を待っていると、出発時刻から十分ほど遅れて彼女がやってきた。眠気が取れておらず目をこすっている。

「……おせえぞ」

「はっはっは。ボクが遅れるのはデフォじゃん」

 清々しい開き直り。

「よし、じゃあ行こう」

 ミミミと並んで旅館を出た。一体もう一冊のコロンシリーズがどこにあるのか、まだ聞かされていない。

「なあ、どこに行くんだよ。近くなのか?」

「んにゃ、近くはないね」

 旅館を出て少し歩いた所にあるバス停で彼女は足を止めた。どうやらバスに乗っていくらしい。

 定刻を五分ほど過ぎた所でバスが到着し、ふたりはそれに乗った。そして揺られる事三十分。降車したのはツルギ山の麓だった。

「ツルギ山……? やっぱ防空壕にあったのか?」

「付いてくりゃわかるよ」

 再び歩き出した所で携帯に着信が来る。風見からだった。まずいと思い無視をしたがまたすぐにかかってきたのでしょうがなく出てみた。

〈おお少年。今どこにいるんだ?〉

「えっ……」

 ミミミを見てみると唇の前に人差し指を立てている。秘密にしろという念押しだろう。

「えっと……散歩してます」

〈散歩? 何だそうか……ヤンを見てないか?〉

「ヤンさん? 知りませんけど」

〈そうか……起きたらふたりともいなかったからちょっと確認しただけだ。飯にはまだ早いし、風呂も今の時間は閉まってるし……荷物はあるからハントに行った訳じゃないと思うんだが……少年みたいに散歩してるのかな〉

「ヤンさんがいないって事ですか? ……もしかして……」

 彼は少し間を空けてから恐る恐る次の言葉を継いだ。

「……ヤンさんが、ミミミが言ってた内通者だった……とか。勘付かれたから逃げたとかじゃ……」

〈……確証は無いから俺は何とも言えないな。もう少し経ったら戻ってくるかもしれないし。とにかく少年と連絡が取れて安心したよ。じゃあまたな〉

 そう言って風見は通話を切った。相変わらずお人好しというか、真っ直ぐな人間だ。

「あんちゃん? 何て?」

「ヤンさんの姿が見えないってさ」

「あのデブが内通者だったって言いたいん? ダイエットのランニングでもしてるんじゃない?」

 ミミミに連れられて着いた先は昨日調査した防空壕跡ではなかった。途中で道を外れ、古い民家にやってきたのである。敷地の入口には大きな竈がある。

「こんなとこに家があったのか……」

「ん。昨日は他のふたりは気付いてないみたいだったけど、何か見えるなーって遠目に思ったんだよね」

「ここに住んでる人がもう1冊のコロンシリーズを保管してるって事なのか?」

「いや? 昨日役場で確認したけど、ここはとっくの昔に廃墟になってるよ。陶芸家が住んでたらしい」

「だから竈があるのか……」

「そう、そしてボクの読みだとずばり、この竈の中にコロンシリーズがある」

「竈の中? 何でまた……」

「あのヒントの文章についてもう一回考えてたんだ。『御姫の御足元 岩戸の深奥』。このふたつのヒントには関連性があるんじゃないかってさ。岩戸ってのが天岩戸だったら、『御姫の御足元』も日本神話に関係するんじゃないかと思って。んで調べたらさ、どうやら天岩戸に隠れた天照大神の別名のひとつに大日女(おおひめ)ってのがあるんだよ」

「大日女……御姫……じゃあ『御姫の御足元』ってのは『大日女の御足元』って言いたいのか?」

「うん。大日女の御足元……アマテラスは太陽神でしょ? って事は太陽の(もと)……()の下……火の元!」

「……だから竈?」

「ん。多分。役場でここを確認した時これだ! って思って」

「……く、下らねえ……けどそう言われると確かに説得力はあるな……?」

「っつー訳で、これからこの竈の中を調べよう」

「お、おお。なるほどな……さすがだぜ相棒」

「! ……」

 竈に近付こうとしていたミミミの動きがぴたりと止まった。

「どうした?」

「…………誰だ、お前?」

「…………は?」

 いきなりそんな言葉をかけられた彼は思わず困惑する。何を言い出すんだこいつは。

「何言ってんだよ急に」

「……誰だよ、お前……」

「誰って……シドだよ。何の真似だよ」

「……全然気付かなかった……いつから……? いつから替わってた(・・・・・)……?」

 ミミミは彼の話などに全く聞く耳を持たず、狼狽えた表情でこちらを見つめていた。

「……あのなあミミミ、さすがの僕でも怒るぞ? 何が言いたいんだよ」

 すると彼女は牽制する様にバットを彼の顔の前に突き出してくる。

「……だからさっきから言ってんじゃん……誰だって言ってんだよお前は……!」

「………………くっ、くくくくっ……」

 ……ここまでか、と観念した()は、不気味な笑い声と共に怪しく口元を歪めた。

ミミミのバストサイズは81cmという公式設定があります。

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