第13話 救出作戦-2
【前回までのあらすじ】絶体絶命の五十嵐の前に突如現れた救出部隊の大型ステルスヘリ。救出作戦は五十嵐の脱走により想定外の事態となってしまう。
突如として密林の上空に現れた2機の大型ステルスヘリが、五十嵐の周囲を取り囲んだ。
先行する一番機のサイドキャノピーがスライドし、暗視ゴーグル(NVG)を装着した漆黒の隊員が身を乗り出す。
その手にある6銃身のミニガンが火を噴き、凄まじい銃声と弾丸の雨が敵と密林の木々を引き裂き始めた。
同時にヘリ下部のフラットな装甲板が左右に割れてウェポンベイが開き、格納されていた重機関砲が一門、機外へと競り出し、敵が潜む茂みへ向けて容赦ない面制圧の掃射を開始する。
さらに、別のハッチからはサーマル(暗視)スコープを搭載した多弾倉式セミオート・スナイパーライフルを構えた隊員が、密林の中にうごめくフラッシュライトの光に向けて正確無比な狙撃を連射で浴びせていく。
五十嵐は両膝から下を身体の左右に広げた状態、いわゆる「ぺたんこ座り」のまま地べたにへたり込んでいた。
撃ち抜かれた肩口を血に染まった手で必死に押さえながら、すでに生気を失った瞳で、目の前で展開される圧倒的な戦闘シーンをただ呆然と見つめることしかできなかった。
回収地点に着陸した2番機のハッチが開くと、2名の隊員が素早く飛び出した。
装備するアサルトライフルの構えは独特だった。ハンドガードの先端付近を、左手で「C」の字を作るように上から深く握り込んでいる。
ヘリによる猛烈な攻撃をかいくぐり、五十嵐へ迫ろうとしていた複数の影を、2人の隊員による射撃が次々と排除していく。
「ゲタ、ダリ、3時方向にも制圧射撃を頼む!取りこぼしが出ているぞ!」
無線機から低く響いたのは、2番機から降り立った隊長の声だ。
「こちらゲタ、了解。オーバー」
ミニガンを委ねられた隊員が瞬時に銃身を3時方向へと振り向け、ありったけの弾丸の雨を密林へ撃ち込む。
スナイパーの隊員も間髪入れずに3時方向へスコープの照準を合わせた。アサルトライフルで迫る脅威を排除しながら、隊長は隣を走る小柄な隊員へ鋭く指示を飛ばす。
「リャン、目標を確保しろ!」
「了解」
五十嵐の傍らへ猛烈な勢いで駆け寄ってきたのは、リャンと呼ばれる女性の隊員だった。彼女は瞬時に五十嵐の容体を確認する。
銃弾が飛び交う戦闘の渦中、大雑把ではあるが致命的な外傷の有無を見極め、五十嵐の瞳孔にライトの光を当て、意識を確認した。だが、五十嵐の瞳の反応は鈍い。
「助けに来た。後方に待機しているヘリまで走れるか」
「う……か……あ……」
声にならない。限界をとうに超えていた五十嵐の精神は、すでに「自分はここで死ぬのだ」と強固に思い込んでしまっていた。
隊員の顔を見る気力すら残っておらず、逆に力無くうなだれてしまう。
「しっかりしなさい!」
リャンは戦闘服のサイドポーチから、軍用エピネフリン(アドレナリン)が充填されたオートインジェクター(自動注射器)を素早く引き抜き、保護キャップを外すと、迷うことなく五十嵐の首筋へ突き刺した。
「ぐはっ……!?」
無意識に肺から悲鳴が飛び出た。それと同時に、五十嵐の視界は強烈な白い閃光に包まれて鋭く引き締まった。心臓が爆発せんばかりに高鳴り、全身の血管を駆け巡る劇薬によって、泥のように堆積していた疲労と痛みが一瞬で吹き飛んだ。限界まで見開かれた視界の真ん中に、女性隊員の冷静な瞳があった。
「こっちよ!急いで!」
強引に腕を掴まれ、五十嵐の身体は意識もろとも引きずり起こされた。
リャンはすかさず、もう片方の手でサイドポケットから2機の自立型護衛ドローンを放り投げた。
ローターが駆動し、空中に浮いた小型ドローンに向け、遠隔デバイスのペアリングボタンを押しながら最優先の指示を送り込む。
「アサイン、対象は目標。最優先保護、盾になりなさい」
端末と同期した2機のドローンが、即座に五十嵐の周囲を旋回し始めた。
この自立型護衛ドローンは、アサインされた保護対象への被弾リスクを瞬時に予測し、その弾道上へ自ら割り込んで盾となる機能を備えている。
鉄壁の盾となるドローンをまとい、五十嵐はリャンが指し示すヘリの方向へ向けて、全力で走り出した。
五十嵐を救出に来た特殊部隊。その中にはリャンと呼ばれる女性隊員の姿が。敵との交戦状態から無事に脱出することはできるのか。次回ご期待ください!
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