表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/19

初世暦3474年3月31日 記録:モノ・クローム

 早く、行かなければ。

 前に車両が現れるたびに左にずれ、追い越す。スピードが上がる。


「エイマンの警察へかけて!」


<OK。アミフスク エイマンの交番へ電話します>


<注意:警察への電話を検知しました。通信を終了します>


 どういうわけだ?(つな)がらないぞ。


<ダスターファクトリー職員、モノ・クローム。警察への電話を検知した、なぜだ?>


「は!?」


 国防軍が(おれ)の車に細工した。俺たちが極秘計画をバラさないように仕組んだものだろう。

 この車はもはや移動手段ではなく、俺を閉じ込める動く檻だ。


「取り敢えず、これを聞いてください!」

 俺はバディのメッセージを流した。


<アミフスクのエイマン……?待て>

<……なるほど、事件だな。では我々から通報しておこう>


 警察の件はなんとかなったが、まさか俺の車にまで監視の目があったとは。国家って怖い。


 幹線道路を飛ばしたおかげで、アミフスクには半日足らずで着いた。


「ここら辺か」


 目的地の辺りに着いたので、車を降りて探すことにした。

 周りには家も少なく、畑や森林が多い。――いや、あの林の中に何か見える。


 家……ではなく館と言ったほうが良いだろうか。敷地はそこそこ広く、この国にはあまり見られない建築様式、西側諸国のそれに似ている。

 困ったことに、警察はまだ来ていない。さっきの人は本当に通報してくれたのか?


 近づいてみることにした。……不気味にそびえ立つ館以外には……車が一台、林の前に停まっている。


 あの車には見覚えがある。

 カタルシス所長の車だ。


 ダッシュで駆け寄るが、所長の姿は無い。ああ、館の前にはもう一台、バディの車だ。

 となると二人が館の中に?


「まずいな」

 携帯も細工されているだろう。近くの交番まで直接行くか?俺の位置情報も、軍に追跡されているのかな。


 そんな事を考えていて、後ろから忍び寄る影に気づかなかった。


 グサッ!


「ガッ!?何をし――」


 奴は俺の首に何かを刺した。これは……麻酔……。




「っは!」

 ああ、俺は、ベッドに。ベッドに寝ている?手も足も動かせない。

 完全に拘束された。


 何の部屋か、ベッドと、横には(なぞ)の機械が置いてある。


 ここにいても仕方ない。早いとこ逃げよう……と言っても、俺の手足には(かせ)がはめられていて、簡単には抜け出せそうにない。

 幸い枷はアナログな方法でロックされている。つまり鍵穴(かぎあな)に鍵を入れれば開く。


「うう、やるか」


 右手に感覚を集中させる。すると、右手の指が融解するように混じり合い、一本の触手になる。触手の先端の細い部分を鍵穴に入れ、中で形を変えると……。

 カチャン


「はあ」


 腕が一本外れた。後は割と簡単だ。

 やっと起き上がることができる。だがまだ自由の身ではない。


 静かに扉の方へ移動し、耳を当てる。何も音はしない。

 恐る恐る、扉を開ける。左右確認、異常なし。


 どうやら隣にも同じような部屋がある。彼がいるかも知れない。

 ゆっくりと隣の部屋に入る。


「モノちゃん!お前何してんだよ」


「それこっちのセリフな。なんで一人で来ちゃったんだよ……」


 すぐにバディの枷を外してあげた。

「モノちゃん、こういうこと普段は滅多にしないよね」


「これすごく疲れるから」

 それも、自分の中の『人間』が削り取られるような不快な疲労感が。


「あぁ、ありがと。……あれ見た?」


「襲ってきたやつ?よく見えなかった」


「俺も。ま早く出よう。はいはいっ」


 その時、廊下から床の(きし)む音が聞こえた。


「ッ!」

 この部屋には隠れる場所がない。口を覆って、ただ静かにした。

 幸運なことに、()()は部屋に入ってこなかった。その代わりに、別の部屋からは変な音がする。


 グガガガガガガッ!


 肉か何かを圧縮するような音だ。俺もバディも鳥肌が立った。


 また静かになったので、俺たちは移動することにした。出口は、分からない。だが、間違いなく、さっき不気味な音がした方ではない。


(こっちだ。たぶん)


(OK)


 ジェスチャーを交わしながら、少しずつ進む。


 廊下の先には玄関の間があった。


(玄関、開く?)


(ダメだ)


 窓や扉には木材が打ち付けられていて、壊して脱出、とはいかないようだ。


「!!!!」


「……!!!!!!」


「今の、(だれ)の声?」


 上の階からだ。一人は……所長の!

「俺の……上司だ」


「なんでモノちゃんの上司もっ!?」


 ギリギリッ!ドカァン!!

 上の階から激しい音がする。


「あーどうするどうする?」


「どうするって、逃げるしかないでしょ!」


「まあ、そうか。所長は強い。きっと大丈夫だ」


「強いって、モノちゃんみたいなことができるの?」


「いや――」

 こんな場所で話すべきではなかった。天井がひび割れる。


 バキッ!ガラガラ……ズズ……


「危な!」

 バディが俺の手を引いて、落ちてきた瓦礫(がれき)を避けた。

 瓦礫と一緒に、所長と()()が落ちてきた。()()は、人ではなかった。何かの、塊のような……。


「クッ!ん?モノさん!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ