第20話【城への招待】
アレンの魔眼の開眼から早いもので1ヶ月、アレンはと言うとレイラのぬいぐるみになっていた。
「ねぇお母さん? そろそろ離してくれたり……」
「ヤダ。 離したらアレン居なくなる」
レイラとディアスは人身売買組織を無傷で壊滅させた後、アレンのご褒美を楽しみにルンルンで屋敷に帰ったがもぬけの殻。
セルカも居ない事で何事かと王都中を爆走して捜索し、半狂乱になっていた。
そしてセルカに連れられて帰ってきた時にはセルカもアレンも雷を落とされてお説教された。
セルカは動揺して置き手紙すら残していなかった事を反省し、アレンも心配をかけたと反省したのだが、帰宅してアレンが行方不明になった事がレイラにとってかなりのショックだったようで、今日に至るまでアレンをぬいぐるみのように抱き締めて何処にも行けないようにしていた。
「しかし、新種の魔眼とはな。 確かに聖剣の魔力がアレンの左眼から感じ取れる」
ディアスは一週間程はレイラと同じ状態だったが、既に立ち直っていた。
「お母さんの魔力とは少し違うけど似た魔力を感じるんだ。 お父さんもハーフだし影響したっておばあちゃんが言ってた」
「ディアス自身も珍しい勇者だからな。 そういえば城の宴に招待されてたんじゃないのか? いつだ?」
「「!?」」
セルカの問いにレイラとディアスは目を逸らす。
2人の様子にセルカは嫌な予感がする。
「おい、いつが宴だ?」
セルカに睨まれ、冷汗ダラダラの2人は観念したように呟いた。
「「……明日」」
その言葉にセルカは頭を抱える。 城の宴、つまり王族に面会するにはそれなりの準備が必要だ。
日頃、宴などの席に招待されるレイラ、ディアス、セルカは正装を持っているが、アレンとセレンは無い。
セレンは赤子な為、必要ないだろうがアレンには必要だ。
不幸中の幸いなのは、アレンに許容があり、王族との会話に問題がない事だ。
「アレンの正装はどうする!? 今からでは間に合わんぞ?!」
「お、おばあちゃん? 最悪僕は欠席ってわけには……」
アレンは青褪めながらダメ元でセルカに聞く。 流石にアレンも正装無しで王族に会うのは畏れ多い。
「今回の宴はお前がレイラとディアスの子と国中に認知させる目的だから無理だ……不味いぞ。 どうすれば……」
セルカは悩むが解決するわけもなく、アレンは青褪めていると玄関がノックされる。
「この忙しい時に……」
セルカとアレンが出ると城の執事と兵士が立っていた。
「セルカ様とアレン様ですね? 王の命でお迎えに上がりました。」
その言葉にセルカとアレンは青褪める。
「す、すまないがアレンの正装が間に合っていない。 正装無しで王族に合わせるわけには……」
「ええ、王の言葉ですが、レイラ様は伝え忘れている可能性があるとの事で、勝手ながらアレン様の正装はこちらでご用意させて頂きました。 本日はその合わせでございます。 レイラ様から聞いておりませんでしたか?」
アレンとセルカはグルンとレイラを見る。 今にも凍りつきそうな目で……
「お母さん?」
「レイラ?」
ディアスはセレンを連れて退避し、レイラは冷汗ダラダラで涙目である。
その様子にアレンとセルカの目尻がギュンと吊り上がり、レイラに雷が落ちた。
「「なんでそんな大事な事を言わないんだ(の)!!」」
「ご、ごめんなさぁぁぁぁぁい!!」
その後、レイラはたんこぶを作った状態でセルカに引き摺られて王城へ入城したのだった。
城の応接室ではアレンの聡明さとあどけなさのギャップでメイド達をメロメロにしてアレンは着せ替え人形にされた。
その様子を保護者3人は……
「アレン、モテモテだな……」
「まぁ我々は耐性があるとはいえ、まさかここまでとはな」
ディアスとセルカはある程度予想してたのか、着せ替え人形にされてるアレンを見ても動揺はなかった。
「アレンは私の子なのに……私がアレンを着せ替え人形に――」
「レイラ、たんこぶ増やされたいか?」
メイド達を押し退けてアレンを着せ替え人形にしようとするレイラを笑顔で制すセルカにレイラはピシッと固まる。
その後、満足したメイド達が選んだ正装のアレンは疲れた様子でセルカに抱き付いた。
「お疲れだったなアレン」
「女の人怖い。 おばあちゃんから離れない」
「可哀想なアレン。 ほら、お母さんの所においで?」
「お母さんも同類だから却下。 お父さんはセレン抱いてるから」
「アレンさん!?」
アレンは今にも参加しそうなレイラをしっかりと見ていた。 そして一番安全なセルカに抱き付いたのだ。
セルカは挑発的な笑みをレイラに見せて言う。
「見ろレイラ、コレが日頃の行いというものだ」
「今回はレイラが悪いと思うぞ?」
「あぅあ!」
セルカに加えてディアスもレイラの行動を戒め、セレンも同意するような声を上げる。
「ディアスとセレンまで……あぁ、目眩が……」
家族全員から叱られたレイラは崩れ落ちた。
だがそれよりもアレンの傷は深く、しばらくの間、メイドを見ただけで怯えるようになったのだった。




