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シリーズ化する陰キャ(お泊り会も終わり)

「あ、鴨川おはよ」


 自室から出ると、櫛で髪をといている千葉さんがいた。

 千葉さんは2日連続のお泊りをしたわけだが、勉強会は知っての通り土曜日に始まったので、本日は月曜日。学校へ向かわなければならないのだが……


「制服持ってきてたんだ」


「万が一のためにねー」


 どういう万が一を想定してたんだよ。

 時刻はまだ6時。制服を持っていたことよりも早起きの事に言及するべきだったか。

 とりあえず座ろうと思ったが、流石に向かい側は気まずいので、僕は左隣に座った。


「……あ、そういえば朝ごはんまだか?」


「うん。あ、でも気使わなくていいよ。コンビニとかで買ってくし」


「1人分も2人分も変わんないよ」


 先程座ったばかりだが早速立ち上がり、台所で朝食の準備を始める。

 トタトタと足音がしたかと思えば、普段学校で見かける姿の千葉さんが隣に来ていた。


「ありがとね、何作ってくれるの?」


「作ると言ってもベーコンエッグとか……あとはスープとかくらいかな、簡単なの」


 ちょうど昨日余った玉ねぎがあったはずだ。あれを切ってオニオンスープにしよう。


「いや朝から豪華だよ。私なんていつも食パンにスクランブルエッグ乗せるくらいだし」


 そう言いながら、千葉さんが冷蔵庫から卵とベーコンを取り出す。慣れた手つきで。


「ありがとう。でも、食事バランスとか気にするタイプと思ってた」


「気にするよ?でも朝弱いんだよねぇ……」


「今は普通そうに見えるけど?あ、玉ねぎとブロッコリー取ってくれる?」


「ん」


 僕が頼むと、千葉さんは迷う素振りを見せる間もなく取り出していた。すっかりこの台所に馴染んでいる。


「今日5時くらいに起きちゃってさぁ。もうちょい寝たかったよ」


「ならゆっくりしときなよ。客人なんだし」


 油をひいたフライパンにベーコンを投入。パチパチと油がはねる。


「私がゆっくりするタイプじゃないの知ってるでしょーに」


「まぁですよね」


 千葉さんはいつの間にか玉ねぎを切っていた。


「そうだ、話変わるけどさ。進路決まってる?」


「具体的な夢とかはまだ。まぁ2年だし志望大学は決めてるけど……千葉は?」


 卵をベーコンの上に割り入れる。


「私も具体的にしたいこと決まってないなぁ。あわよくば参考にさせてもらおうと思ったんだけど」


「参考にならなくてごめんね」


「いーよいーよ、お互いゆっくり見つけてこ」


 油が跳ねる音とスープを煮込む音だけが残った。

 どうやら千葉さん特製のオニオンスープも完成しそうだ。


「葵さん起こしてきてくれる?」


「はーい」


 千葉さんは火を止め、部屋へと向かった。僕はその姿を横目に見つつ、3つの皿に均等につぎ分けていく。





「おはよう二人とも」


「おはようございます」


 普段よりもシャキッとした葵さんが出てきた。千葉さんがいるので意識しているのだろう。

 葵さんは僕たちに「朝ごはんもありがとうね」と感謝しつつ席に着いた。


「じゃあ……」


「「「いただきます」」」


 3人で一緒に手を合わせ食卓を囲む。ふと葵さんと千葉さんを見ると、より仲良くなっているようだった。昨日の夜もまた何か話したのだろう。

 僕としてはクラスメイトの女子が家にいるという事態は気が気でない……と言うほどでもないが、それに近しい緊張感はあるので、こうして馴染んでいる姿を見ると少し落ち着く。

 この場合、仲睦まじい2人を見てというよりもは千葉さんが我が家の空気に馴染み異物感が薄くなったからだろう。


「鴨川、箸止まってるよ」


「ん、ああ」


 考え込んで食事を疎かにしていたようだ。

 僕は食事を再開した。


 その後皿を片付け身支度も終わらせた僕たちは、しばらく駄弁った後にそれぞれ家を後にした。

 まぁ僕と千葉さんは2人で登校するわけだが。


「あ、この道右」


「はいはーい」


 そんなこんなで。


 知人も少ない僕を冷やかす者などおらず、ごく普通に、いつも通りの1日を過ごしましたとさ。




「ただいま。さすがに今日は2人きりのようだね。ああいや、私はソウスケ君が誰かを招くのは大歓迎だよ。今日はどうだった?え、あー、普通か、そうか……特になかったのか……」

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