第45話【連合SIDE】 最強の権力を『実質的に』行使できる。という盲点。
「クソが! 絶対に許さんぞアイツら! 俺は本部役員だ! これまで多くの功績を出した男だ! その俺に楯突きやがって!」
セデル連合本拠地。
その最上の執務室で、パストルは荒れ狂っていた。
冒険者による世界の統治を掲げ、これまで動いてきたことが全て水の泡になったのだから、もともと癇癪を起こしやすい人間であるならば、荒れ狂うのも当然だろう。
「ぱ、パストル様。俺はどうすれば……」
「チッ、全世風靡を追放されたお前に価値なんぞないが、演説で人が集まっている中であのやり取りだ。もうこの町で『他』には頼れん。今はまだお前の首をつないでおいてやるが、失態を演じたらどうなるか。覚悟しておけ!」
「は、はい! 申し訳ございません!」
頭を下げるセデル。
「もはや、宮廷冒険者を認めさせることは不可能か……いや、まだ弾はある。ディアマンテ王国の方にも俺が関わっている冒険者が宮廷冒険者の話を進めているはずだ。王国に移動するぞ!」
「か、畏まりました!」
「俺を侮辱した奴らは全員許さない。俺は管理者だ。管理する側の人間だ。それを、大した知恵もない管理される側の人間が粋がりやがって」
フツフツと湧き上がる怒り。
その原動力は、アイヴァンとエリーに向けられたもの。
「俺は優秀な人間だ。俺は優秀な人間なんだ! クソっ! 勇者が調子に乗りやがって。絶対に後悔させてやる!」
彼がそこまで叫んだ時、扉が勢いよく開かれた。
「パストル様! 協会本部からの文書が!」
「何!? ここからどれほど離れてると思って……魔道具を使った通信文書か」
人を転移させる魔道具があるのだ。ものすごーく頑張れば、文書を送ることくらいは『そこそこの頻度』で出来るようになる。
パストルは紙を受け取って、内容を読み……。
「はっ? お、俺が……異動? その先は、『ゲンデル王国』の支部の雑用だと……」
「馬鹿な……」
セデルも驚いている様子。
「ゲンデル王国。魔王の侵略の一歩手前だった国家で、自給自足ができる程度の農業をやっているだけの国。人口も10万人とか」
「そんな貧国に俺が異動だと!? どんな理由があって……!?」
さらに驚愕する事実があったのか、パストルの顔がゆがんだ。
「俺が異動に応じない場合……ラスター・レポートは、『冒険者を辞める』だと……バカな。そんな馬鹿な! 冒険者を辞める!? そんなことが!?」
パストルにとっては驚愕の交渉カードだ。
ただ……これはある意味当然のこと。
ランジェアが国籍や市民権を手に入れたのは、『キンセカイ大鉱脈』に入るため。
別に、冒険者であろうがなかろうが、『国籍』と『市民権』があれば、元冒険者であってもどうとでもなる。
金もたくさんあり、『そんじょそこらのアイテム』なら商人から買える。
彼女たちは魔王を倒すために冒険者になったほうが都合がよかっただけで、別に冒険者という立場に固執する理由がない。
だからこそ、『冒険者という立場の放棄』すら、簡単なのだ。
「そのために俺を切り捨てるってのか! ふざけるな! こんなの認められるか!」
パストルは何度も、『管理者側』であるということを話している。
そんな彼に、『小国で雑用をやれ』などというのは、最大の屈辱だろう。
エリーはそれがわかっているからこそ、『解雇』ではなく『異動』なのだ。
「このまま一時的に身を隠す。絶対にこんな言葉に従ってたまるか! 俺は管理する側の人間なんだ!」
パストルは賢い。
それゆえに、とあることを理解した。
「クソっ、勇者め。冒険者協会の『人事権』すら掌握するというのか。これほどの交渉カード。いったいなぜ使わずにとっておいた。なぜ今出した。クソオオオオオッ!」
……権力というのは、強い言葉だ。
ただ、『誰にその権力を与えるのか』を決めるのが『人事権』というものであり、これを掌握する人間が、実質的に『最も強い権力を持っている』と言える。
そして、冒険者協会は、『勇者を手放すことなどできない』のだ。
もうすでに、『冒険者によって魔王が倒されたことで、これからは冒険者の時代だ』と吹聴しているがゆえに、ここで勇者に見限られたら、どんな報復が返ってくるかわからない。
だからこそ、勇者を手放せない。
「この屈辱、絶対に十倍にして返してやる。覚えてろ!」
激昂するパストル。
「まあまあ、落ち着きましょうか」
そんな彼に、話しかける存在がいた。
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