第12話 ディアマンテ王国にあるもので、勇者コミュニティが欲しい物……あるわ、それを貰おう。
「大変なことになりましたね」
「そうね。『頭はいいけど想像力のない人間』がここまで面白いとは思っていなかった」
「面白いって……」
ラスター・レポート本拠地。
相変わらず人は少なく、ランジェアとティアリスしかいない。
なお、ホーラスはキンセカイ大鉱脈に行って鉱石集めをしている。
ランジェアをつれたりしないのか。という指摘に関しては、『稽古なら連れていくが、基本的にはランジェアですらついてこれないエリア』に向かっているので、連れて行くと死ぬ可能性があるので残しているのだ。
とはいえ、レアストーン・マーケットに行けば、ホーラスがダンジョンに行く時間帯によってはなかなか手に入らない鉱石もある。
ランジェアはゴーレムマスターではないし、マジックアイテムに対する造詣も深くないので、ホーラスが求めている鉱石が何なのかはいまいちわからない。
ただ、本を読んだりすると、『おおむね、ゴーレムマスターはこういった鉱石を欲しがっている。なんでか知らんけど』という情報を集めることができるのだ。
そういった鉱石を見つけ次第、確保しておくのも重要である。
そんな感じで、ホーラスがダンジョンに行っている間に、とんでもない情報が舞い込んできたのである。
「勇者コミュニティ施設への同時多発襲撃ですか。血迷っているのでしょうか」
「私は、金貨2万枚の返済を行うといった時点で、こうなると思ってた」
「そうですか?」
「さっきも言ったでしょ? 『頭はいいけど想像力のない人間』」
「彼らが頭がいいとは思いませんが……」
「フフッ、バカが知恵を一つや二つつけたところで賢い人間になったりはしないし、賢い人間がボケを一つや二つ覚えたところでバカになったりもしない。バカは一生バカ。賢い人は一生賢いのよ。ただ、『想像力』っていうのは、頭の回転の話じゃなくて視野の話だから……」
「だから?」
「社会経験が足りないということね」
「貴族に対してなんてことを」
優しい微笑を浮かべてなかなかぶっ飛んだことを言うティアリスだが、ランジェアも同意はしているようだ。
「とはいえ、あちこちでコミュニティメンバーが憤慨しているのは間違いないですし、どうしたものか……ディアマンテ王国の借金額は?」
「今回の大問題を一括返済で解決するなら、必要なのは金貨10億枚ね」
「金貨10億枚……我々の全資産と比べてどの程度ですか?」
ティアリスはランジェアのこれを聞いて『お前自分たちの資産状況全くわかってねえのかよ!』と内心で突っ込んだ。
まあ、金の話を考えず、魔王を討伐するだけでいいように調節してきたのはティアリスたちのほうなので、責める気はないが。
「そうねぇ……大体金貨400億枚ってところかしら」
「自分たちだけで使い道はあるのですか?」
「あるわけないわ」
魔王討伐。
その旅の軌跡は甘くない。
魔王の男性支配は絶対的であり、例えば虜にした男性に、『モンスターになる代わりに圧倒的な力が得られる薬』を与えた場合、躊躇なくその場で飲む。
魔王が最初に掌握した国は、かつて常任理事国を務めていたほどの大国であり、研究にも力を入れていたので、わけのわからん薬もたくさんあった。
で、この世界は『モンスターを倒すと硬貨が手に入る』のだが、薬によって『人間がモンスターになっている』わけで、元人間だろうと倒しまくったら金貨が大量に手に入るのだ。
道中で必要な素材を集めるために、『大氾濫発生中のダンジョン』を丸ごと壊滅させたりと、まあ派手なことばかりやっているので、勇者コミュニティは全く金に困っていない。
「というか、そこまで大量の金貨を、一体どこに保管しているのですか?」
「移動拠点においてある『異空間収納箱』。師匠が作ったものだけど、魔力を注ぎ込めば注ぎ込むほど容量が増えていくから、そこに入れてあるわ」
「アレってそんなにすごい効果があったんですね」
ティアリスは『こいつ何も知らねえな』と思ったが言わないことにした。
「……まあ、私たちの資産に関してはここまでにして、どう落とし前をつけましょうか」
「彼らが持っていて私たちが欲しい物……何かあるかしら?」
「師匠のことを考えると、何かの金属がほしいところではありますが……」
そこまで言ったとき、ランジェアは一つ閃いた。
「ディアマンテ王国の王都にある『アンテナ』を貰うというのはどうでしょう」
「アンテナ? そんなものがあの王都に?」
「師匠以外に使っている形跡がないので、話題にも上がらないのでしょうね。現在、師匠のゴーレム操作範囲は自分から半径3メートルが限界ですが、アンテナを使うことで、王都をワンオペしていたそうです」
「その上で、現在師匠が『自分の足で歩いて金属を取りに行っている』ことを考えると、アンテナを作ることそのものは簡単であったとしても、『王都にあるアンテナ』を作ることは素材的にも技術的にも難しいと……」
少しの沈黙。
「貰いましょうか」
「貰っちゃおう」
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