女だけの世界23
女性店主:「いらっしゃいませー」
その声を聞き女性店主と思われる人が近づいてきた。見た目は20代後半といったところだろうか、栗色の長い髪を後ろでまとめている。
かぐや:「こんにちは、あなたが店主さん?」
店主:「はい、そうです」
かぐや:「今日はお客さんいないのね。他に従業員とかは?」
店主:「はい、いるはずなんですけど‥」と言いながら店内を見回す。
羅夢:「なんだ?誰か来たのか?」
かぐや:「あっ、いたわ。奥の方に隠れてる人」
店主:「あれ?ホントだ。どうしたのかな、恵那ちゃん」
店主が声をかけると店の隅から一人の少女が出てきた。年の頃は14歳くらいであろうか、背丈も低く華奢で幼さが残る顔立ちをしている。
彼女もまた栗色の長髪で目元がぱっちりしており可愛らしい印象を与える容姿をしている。
服装は白いブラウスに青のミニスカートという格好だ。
恵那:「は、はい。あの‥実は先ほどから体調がすぐれなくて‥」
店主:「大丈夫?」
恵那:「すいません。お腹が空きすぎて力が出ないみたいで‥」
店主:「まったくしょうがない子ね‥じゃあ、カウンターで食べていなさい」
恵那:「ありがとうございます!」
そう言うと恵那はパタパタと小走りでカウンター席に座った。
それを見届けた後に二人は席に着いた。
かぐや:「私はメニューを見せてもらえる?羅夢さんは何食べる?」
羅夢:「いや、いい‥‥それよりこの嵐はいつまで続くんだ?」
店主:「あのーお客様。ここは一応喫茶店ですよ。飲食をしないのであればお引き取り願いますが」
羅夢:「いや、ちょっと待てって!注文するから!」
かぐや:「そうね、じゃあこれとこれお願いね。羅夢さんは何にする?」
店主:「畏まりました。少々お待ちください」と言いながら厨房に戻っていった。
かぐや:「嵐の件だけどね。多分この近くに雷鳴山脈ってところがあるらしいんだけどそこから魔物の大群がやってくるのよ。それで街や村が襲われてるんだって」
羅夢:「そうなのか?でも魔物の大群と嵐は何の関係があるんだ?」
かぐや:「うーん。それがわからないのよね。聞いた話だと原因は不明らしいわ」
羅夢:「原因がわからないってなんだよ。変な話だな」
かぐや:「変ではないんじゃない。実際に被害が出ているわけだからね」
羅夢:「そう言われても困るんだけど‥それで、結局私達はどうしたらいいんだ?」
かぐや:「しらなーい!ほっときゃいいんじゃないの」
羅夢:「…」
かぐや:「だって、こっちは遊びに来てるわけじゃないんだから関係ないでしょ。そんな面倒事に首を突っ込むつもりもないし」
羅夢:「それはそうだが……しかしお前って私以上に鬼だな。」
かぐや:「そう?よく言われるけど‥」
店主:「お待たせしました。お好み焼き2人前でございます」と言って皿を置く。
かぐや:「ありがとう。美味しそうだわ」
店主:「そうですか、それは良かったです。ではごゆっくりどうぞ」
かぐや:「あ!あとビールを二杯持ってきて!それからあなた達も一緒に食べなさい!店の中で立ちっぱなしも可哀そうだし。もちろんサービスだから!」
店主:「え?でも‥」
恵那:「いいんですか!」
かぐや:「いいのよ、気にしないで。私達も話し相手が欲しいの」
店主:「そこまで言って頂けるのでしたら……恵那ちゃん、運んであげて」
恵那:「はい!」
恵那は元気よく返事をするとカウンターに皿を並べていく。
羅夢:「こいつが話したいことがあるからって連れてきたんだが‥」
店主:「わかりました。それでは始めさせて頂きます」と言い、店主はかぐやの方へ向き直った。
かぐや:「まずは自己紹介しましょうか。私の名前はかぐやといいます。一応神人です」
店主:「あ、神人様だったんですね。どうりでお綺麗だと思いました」
羅夢:「かぐやって馬鹿?普通身分隠すもんだろ」
かぐや:「うるさいわね。そんな事どうでもいいでしょ」
羅夢:「いや、よくねーよ。万が一バレたらどうするんだよ!」
かぐや:「バレないわよ。それに仮にバレたとしても大丈夫だって」
店主:「いや、ご自身で名乗っておいてバレないはないと思いますけど」
恵那:「そーですよ!」
かぐや:「そうかしら?じゃあ、あなた達には内緒にしておいてちょうだいね」
店主:「はい!もちろんです!」
恵那:「はい!」
羅夢:「こいつらも神人って聞いた瞬間態度変わりすぎだろ。どいつもこいつも……」
かぐや:「あなた達、神人を知っているの?」
店主:「はい、もちろんです。神人はこの大陸全ての憧れですから!特に男性神人は随分オモテになるとか!」
恵那:「憧れますよねー!一度でいいからお会いしたいです!」
羅夢:「お前ら、こいつらのノリにあっさりついてくの止めろよ」
かぐや:「あなた達、神人に会った事あるの?」
恵那:「いえ、噂だけです。王都『オリンピア』の王様が神人ではないのかって噂がありましたが…お会いになった事はありません」
店主:「まぁ、本当かどうかは分かりませんがね‥」
羅夢:「なんなんだ?こいつら‥」
かぐや:「そうね、あなた達に限らずこの大陸に住む人たち全員、神人に憧れているみたいね」
恵那:「そりゃそうですよ!神人様は私たちに素晴らしい快楽を与えてくれるとか…」ウットリしてる。
店主:「それに神人様と交わればどんな病気や怪我も治るという話もありますよね。神人様との間に生まれた子供はどんな職業につこうとも大成するとも聞いております」
かぐや:「へぇ、すごいわね……」
恵那:「あなた様達は『オリンピア』からいらしたんですよね。王様にお会いしたのですか?」
かぐや:「王様?王様ってどんな人なの?」
羅夢:「いやいや、とぼけるのは無理があるだろ!あのハーレム男しかいねーじゃん!」
かぐや:「え?あの人?女性に囲まれてデレついて助けてくれーって言ってた自業自得馬鹿のこと?」
羅夢:「それ以外誰がいるんだよ!お前いじめまくってたじゃん」
店主:「いじめてた?酷い…」
羅夢:「だろー、こいつ可愛い顔してっけど鬼みたいな女なんだぜ!鬼の私が言うのもなんだが」
かぐや:「羅夢さん、そんな言い方しないで。私は優しい女よ!」
恵那:「確かに‥可愛らしい顔されてますね。お人形さんみたいです!」
店主:「まるで女神様の様な美しさですね!」
かぐや:「女神……いい響きね……」
羅夢:「また調子に乗らせてどうする?だったら雷鳴山脈でも行ってみるか?」
かぐや:「女神だったら雷鳴山脈の嵐なんて一瞬で消せそうだし行ってみますか。せっかくだからついでに王都のバカな男をシバキにでも行こうかな……」
羅夢:「おい、やめろって!また変なこと考えただろ!」
かぐや:「ふふん♪」
店主:「すいません。ここ最近王都からの客人が訪れたなんて情報は一切ございませんでしたが……本当に王都から来られたのですか?」
羅夢:「嘘だと思うなら確かめに行くか?」
恵那:「わ!怖い!」
羅夢:「おい、お前ら失礼だぞ」
店主:「失礼致しました。しかし、この店ではお客様に対して誠実な対応を心掛けておりまして」
羅夢:「神人の扱いだけ特別ってか」
かぐや:「いいじゃないの。私達の仲を深める為に乾杯でもしましょう!」と言ってグラスを持つ。
羅夢:「あー、もういい。勝手にやってろ!私はここで寝てるから」
かぐや:「つれないわね‥寂しいじゃない!ほら恵那ちゃんも飲みましょ!」
恵那:「はい!喜んで!」
店主:「では私も一杯いただこうかしら‥」
その後、二人は店中の酒を飲み干して帰って行ったそうだ。
恵那:「ありがとうございました!またのご来店をお待ちしております!」
店を出てしばらく歩いていく。
羅夢:「あいつら相当酔ってたな……まぁいいけど」
かぐや:「羅夢さん、ごめんなさいね。今日は悪ノリがすぎちゃった」
羅夢:「いや、それは良いんだが……明日からどうするんだ?雷鳴山脈ってどれくらいの距離があるんだ?」
かぐや:「そうねぇ、歩いて丸三日ってところかしら?」
羅夢:「結構あるな。途中で泊まる場所はあるのか?」
かぐや:「ないんじゃないかしら?」
羅夢:「……、だったら瞬間移動つかえよ!面倒くさいから!」
かぐや:「はいはい。羅夢さんはせっかちだな。いいわよ、じゃあいっきに飛ぶわよ!」
羅夢:「おう!」
そう言うと次の瞬間には目の前に大きな山脈が現れた。




