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地獄界編②

**同時刻・現世:ヒミコ邸の洋館**


鏡面モニターに映る血の池地獄を前に、かぐやは戸惑いの溜息をついた。

「時雄さん……楽しんでませんか?」

ソファの肘掛けを掴む手に力がこもる。漆黒の着物の裾が微かに揺れた。


「中二病ね」

紅茶を一口啜ったヒミコが愉快げに眉を上げる。銀髪の先端が静電気で揺れている。

「いい傾向よ。恐怖より高揚の方が身体強化率が高いのは科学的に証明されてるもの」


「でも……怖くありません?」

かぐやの視線が画面へ戻る。時雄が無邪気に跳ね回る姿は子供のようでさえあった。

「あれが本物の地獄だなんて信じられない……」


ヒミコの碧眼が鋭く光る。

「信じなければ戻って来れないわよ。ましてやお釈迦様の羽衣なんて夢のまた夢」

冷気が漂う洋室でティーカップが僅かに凍結した。

「だからこそ時雄君には――」

言葉の途中で鏡面が乱れた。血の池地獄に新しい波紋が広がる。

###血の池地獄 鬼達の逆襲

遠くから地響きとともに鬼の集団が迫ってきた。「1・2…ざっと8匹ってところか」

「さーてどんな技でるかな。漫画みたいなのでないかな」と時雄は面白がってる

「オタクの力を舐めるなよ、かぐや瞬殺黒人形!」とアニメキャラになりきってポーズを決めるとかぐやの形をした黒い炎が具現化し鬼どもを瞬く間に焼き尽くした。


時雄は満足げに拳を握りしめた。「よーし!必殺技が現実にできたぜ!」

黒人形の炎が消え去った後には灰の山と焦げた硫黄の匂いだけが残されていた。中二病全開の興奮が背筋を駆け上がる。


「待て待て……」

突然視界が揺らいだ。頭を抱えると掌にねっとりとした汗がまとわりつく。左肩から腕にかけて奇妙な痺れが走っていた。

「……これは?」

視線を落とすと金棒を持つ左手の甲が微かに紫に変色している。血管が浮き上がり、鱗のような模様がうっすら浮かび始めていた。

(さっきの炎の反動か? 飛影だって使い過ぎると出血するもんな)

「まぁいいか、まだ力は使えるしな」


***


現世・ヒミコ邸応接間


「時雄さん……!」

かぐやがモニターの映像を食い入るように見つめる。画面の中の彼の左手には確かに異形の兆候が見て取れた。

「ヒミコ様、あれは……!」

「制御不能な神力の暴走ね」

ヒミコが紅茶カップを置くと陶器が軋む音を立てる。

「黒人形はエネルギー効率が悪すぎる。中二病ごっこに付き合わされると寿命縮まるわよ」

「でも……」

「心配? それとも羨ましい?」

「……どっちもです!」

かぐやは自らの頬をパチンと叩いた。黒髪がわずかに波打ち、胸元が小さく膨らむ。

「今の私……ますます『女の子』になってる。なのに時雄さんはどんどん危うくなっていく」


「だからこそ『羽衣』が必要なのよ」

***


地獄門内・血の池深層

「次は何が出るかな~♪」

時雄がスキップしながら赤い水面を掻き分けていると鬼が次々とやってきた。

「はーーーー」時雄は右手一

本で金棒を振り回しながら縦横無尽に走りそして飛び回り片っ端からなぎ倒していった。

すでに金棒にも神力が宿り始め鬼達には手の付けられない暴れっぷりだ。


時雄の狂騒が最高潮に達していた。

「まだまだァ!」

空中で金棒を旋回させるたびに紅蓮の炎輪が放たれ、接近する鬼どもを炭へ変えていく。彼の顔は喜悦に歪み、戦場を遊園地のように駆け巡る。

「ははは! これぞまさに無双モード!」


だが異変は既に進行していた。金棒の柄が黒く焦げ始め、握る左手の指先から紫色の煙が立ち上る。皮膚には蛇のような鱗模様が浮かび上がり、関節が軋むような音を立てた。

「……痛っ!」


突然の激痛に動きが鈍った瞬間、赤黒い水底から巨大な影が躍り出た。


『炎殺などとは随分と懐かしい名を使うじゃないか』

地獄の底から湧き上がるような声が水面を震わせた。水中から浮上したのは禍々しい女神。黒曜石の肌に炎を纏う姿――


「イザナミ様……?」


現世・ヒミコ邸応接間


「なっ……!」かぐやが席から立ち上がり鏡面モニターに顔を寄せた。水面から現れた女神の姿に息を飲む。

「そんな……なんで彼女が?」


ヒミコが静かにカップを置いた。

「本来なら八大地獄の主を務める存在。しかし彼女は人間嫌いで有名だわ。時雄くんの神力に惹かれて出てきたのね」



『小僧、ちとお遊びが過ぎたようじゃな』

時雄の周りの空気が一変し、強烈な渦が巻き起こりその直後棺桶のような箱に閉じ込められて身動きが取れなくなった。

『聖なる懲罰房じゃ、その中でちと反省せい!』

「ちくしょう、なんだこれは?全力で破壊しようとしても傷すらつかん」

『当り前じゃ!神が作った物だからのぅ。低レベルの神人ごときに壊せる代物ではないわ』

そう言い残し消えてしまった。そして閉じ込められたまま2年もの月日が流れ地獄も平常に戻っていった。

「この棺桶……いつになったら開くんだよ!」

時雄は狭い石室の中で腕立て伏せをしながら怒鳴った。聖なる懲罰房と呼ばれる立方体の内部は薄暗く、四方を透明な黒水晶で囲まれている。外からはイザナミの残した瘴気が滲み出ていた。


2年――その歳月は外界ではわずか数ヶ月の出来事に過ぎない。だが拘束された身には永遠に等しかった。


「しかし何にもできないのがこうもつらいとは」

この時はすでに疲れも全身のダメージも消え元気だけはいっぱいだった。


***


現世・ヒミコ邸地下書庫

「……まだ目覚めないの?」

かぐやは古文書を閉じながら嘆息する。ページに挟んだヒマワリの押し花が光を失い、枯れたように色褪せていた。


「予定より長いわね」ヒミコが暗闇から姿を現す。銀髪が仄かに揺れ、碧眼が闇を切り裂いた。「イザナミ様が思った以上に手加減なしだったようね」

「手加減なし……?まだ当分このままって事?」かぐやが眉をひそめる。


「そうでしょうね。私だって以前人間の結界に閉じ込められた時すら500年たってしまいエイリアン襲来でやもなく出してもらったんだから、イザナミ様ならそんな迷いもないでしょうし。」


***


血の池地獄・封印結界内部

「はぁ……退屈だな……」

時雄は水晶壁を背に寝転がりながらぼんやりと考えた。外界の亡者たちの悲鳴すら届かない静寂が耳障りだ。


(あの鬼どもも少し可哀想だったかな……)

中二病テンションで無双していた過去が恥ずかしく思えてきた。同時に妙な感傷が胸を締め付ける。


「かぐや……元気にしてるか?」

「くそ……こんなんじゃ羽衣を借りに行ったって笑われるだろうな」


時間が流れない空間だった。水晶壁越しに見える水面の色は常に真紅。時折揺らめく亡者たちの影だけが、外界との唯一のつながりだった。


(どれだけ経ったんだ……)


時雄は指を伸ばし壁面をなぞった。硬質な感触だけが返ってくる。聖なる処罰某は神力による結界。彼の超人的な膂力でも傷一つつかなかった。


「……ふぅ」


壁に寄りかかると、革ジャンが擦れて微かな埃が舞い上がる。この2年間(地獄時間)、彼はただ座り込んでいるだけではない。

**瞑想**を続けていた。

と、ある日来客が訪れた。この地獄では珍しい女性の鬼だ。

「あった、あった。これが以前この辺りであばれまわっていたという人間ね、?いやちょっと違うわね。」

「ねえねえ、閉じ込められちゃって、ウフフ♡、こんなところに何しに来たの?」と尋ねてきた。

時雄も他人と会話するのも久しぶりだったし何よりもやることがない。なのでこれまでの経緯を話し代わりに情報収集をかねて地獄にたいする情報を貰おうと考えた。

「しかしこれ不思議な物質ね」といいながら興味本位で叩いたり触ったりしてして楽しんでた。


「へえ……そんな面白いことやってたのね」

黒髪を腰まで垂らした鬼女・羅夢らむは興味深げに聖なる処罰某の壁を叩いた。鬼特有の鋭い爪が水晶面で火花を散らすものの傷ひとつ付かない。

「普通の人間なら10秒で窒息だけど……神人なら余裕ってわけね」

「2年間ずっとひとりぼっちですよ」時雄は苦笑しながら壁に背を預けた。「おしゃべりができるだけで嬉しい限りだ」

「じゃあ地獄ツアーのガイドでもしてあげるわ♪」羅夢が翡翠色の瞳を細めた。「代わりに聞かせて? あの金棒で鬼の軍団を瞬殺したってホント?」と聞きながら外壁を眺めたり触れたりしてるのだが、彼女には触れないとはいえこうも至近距離で太ももやら体のラインやらが目の前でチラチラして娯楽が何もなかった身としては目の保養にはとても良いとは思うが、かぐやに筒抜けなのは非常に困る

「やべっ、ちょっと興奮してしまった。これみんなかぐやに筒抜けなんだろ。」とあせってしまう。


「どうしたの?」羅夢が首を傾げた。黒髪がさらりと流れ、鬼特有の角が光を反射する。翡翠色の瞳がまっすぐ時雄を見据えていた。


「いや……ちょっと集中できなくて」時雄は慌てて視線を逸らす。羅夢のタイトな黒装束が水晶壁越しに透けて見えそうで危険だ。

「なあに? 淫らな想像してるでしょ?」羅夢がにやりと笑い、水晶壁にぴたりと体を寄せた。柔らかい曲線が薄い壁越しにくっきり浮かび上がる。

「ちょっ……やめろって!」思わず後ずさる時雄。革ジャンが壁を引っ掻き鋭い音が響いた。


現世・ヒミコ邸地下室


「時雄さん……やっぱり覗き込んでます!」

かぐやが鏡面モニターに向かって頬を膨らませた。地獄の情景は鮮明に映し出されている。

「見たくない……見たくないのに……!」

だが視線は釘付けだ。漆黒の着物の袖をギュッと握りしめる。

「フフッ♡ 可愛い嫉妬ね」

隣で椅子に腰掛けたヒミコがくすりと笑った。銀髪が蝋燭の灯りで妖しく輝く。

「地獄って退屈なものよ。刺激を求めてしまうわね」

「ヒミコ様まで……!」かぐやが抗議する


血の池地獄・封印結界内部

「ふふ、冗談よ。でも嬉しかったでしょ♡」

「そりゃ、嬉し‥いや、勘弁してくれ」

「もうちょっと見せてやってもいいんだけどお願いがあるの」

「お願い?鬼にお願いされるような事って?」

「あなた、さっき殺してしまった鬼の事を可哀そうだって言ってたけどそれは全然違うの。逆に感謝してるわ」

「感謝?殺されて浄化されたのに感謝って」

「そう。ここは地獄、亡者でなくとも出たがってる鬼はたくさんいるの。だが不死身のため出られない。そんな時あなたが浄化してくれたから魂は転生輪廻の状況に入ることができる。要するに他の世界に生まれ変われるの」

「あなたも不思議に思ったでしょ、あれだけ圧倒的に消滅させてるのに鬼達が怯む様子も見せず闇雲に襲ってくる姿に。あれは人間を拷問せよという命令を逆手にとって救いを求めて攻撃してきてるの」

「え?じゃあ、もしかしてお願いっていうのは…」

「そう、ここから出ることが出来たら私を殺して浄化してほしいの」

「気持ちは理解したが…やっぱり女性を手にかけることは嫌だ。しかもこんなに可愛い子を‥」

「そのかわりこんな事位しかお礼は出来ないけど」

と言いながらいろんな悩殺ポーズをしてくれた。が、非常にまずい‥目を閉じればいいだけなのに可愛いので見入ってしまう

理性を抑えようとしても興奮が止まらない。

## 聖なる牢獄の乱舞


「もっと近くで見る?」羅夢が妖しく微笑みながら水晶壁に密着する。柔らかな胸の輪郭が曇った表面に浮かび上がり、甘い吐息が壁面を濡らした。

「バカ野郎……!」時雄が顔を背けようとするが、本能が彼を引き戻す。革ジャンの背中に汗がじわりと広がった。

「私を殺せば……自由になれるわよ?」

鬼特有の鋭い爪が壁を軽くひっかく。薄い水晶膜を通して微かな熱を感じた。


現世・ヒミコ邸地下室


「やめて……!見ないでください!」

かぐやが鏡面モニターを両手で覆う。漆黒の袖が震え、指の隙間から真っ赤な頬が覗く。

「かぐやちゃん?」

ヒミコが紅茶カップを置くと陶器が軋んだ音を立てる。

「何を見せられているのか解ってんでしょうね」

「わかりますけど……あんなに嬉しそうにしてるのを見るのは辛くて……!」

かぐやの声が嗚咽に変わった。着物の裾を握りしめる拳が白くなる。


血の池地獄・封印結界内部


「そこまでして殺してほしいのはよくわかったが俺にはできないが、殺してくれるようヒミコ様にお願いしてみる。ヒミコ様なら以前人類を虫けら同然といって殺しまくっていたんだから躊躇しないだろうし」とヒミコ様に丸投げすることにした

「ヒミコ様……?」

羅夢の翡翠色の瞳が驚きに見開かれる。鬼の鋭い爪が水晶壁をカリカリと引っ掻き始めた。


現世・ヒミコ邸地下室


「ヒミコ様!」

かぐやがモニター前で立ち上がった。漆黒の着物の裾が床を滑る。

「今すぐ行ってください!時雄さんを助けてあげて!」

「あらあら、酷い言われようね。私だって恋する乙女なのに勝手に丸投げされても困るわね、自分の試練なんだから自分でなんとかしなさいね。私は何もしないわよ」とうっすら笑みを浮かべた


## 封印内の選択


突如脳裏にヒミコの声が入ってくる

『勝手に私に丸投げしないで。あなたの試練なんですから私は干渉しませんからね』

げ、と時雄は声にもならない悲鳴をあげた。

「でも!殺すなんて……女性を傷つけるなんて!」

金棒を抱え込むように俯く時雄。革ジャンの裾が擦れる音だけが虚しく響く。

「お優しいのね」

羅夢の口元が歪んだ。彼女の長い黒髪が壁面に触れた。

ふとあることが脳裏に浮かんだ。そうだ自分が彼女を転生させられるようになればいいんだと。

「とても俺には殺せない。その代わり俺は階段を上ってかならず転生輪廻の能力を手に入れて見せる。そしたら羅夢ちゃんの望んだ生き物や世界を制御できるようになる。それまで待っていてほしい」


## 鬼女との取引


羅夢の翡翠色の瞳がじっと時雄を射抜く。薄暗い水晶壁の中で彼女の顔が陰影を浮かべた。

「転生能力……ふうん」

細い指が壁面をなぞり、その動きは明らかに計算づくだ。鬼の爪が鈍く光った。

「つまり2年間ここで何もせず妄想してただけの人間が神になりたいってわけね?」

時雄は顔を上げた。革ジャンの襟が喉元でこすれる音が耳につく。

「そうだ。でもお前たちを傷つけたくない気持ちも本当だ」

「信じられないわね」羅夢が鼻で笑う。しかし次の瞬間、その表情が変わった。

「……でも面白い」彼女の唇が弧を描く。それは獲物を見つけた獣の笑みだ。「提案を聞いてあげる。ただし条件付きよ」


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