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不思議な国編④

時雄は唇を噛んだ。言われてみれば確かに……だが納得できるかどうかは別問題だ。

「でもさ……チート能力まで偏る必要は……」


「チートが偏ってると嘆くのはお兄ちゃんだけかもよ?」ヒメカが口元を押さえて笑う。

「だってその偏りのせいで他の神人からは同じ位の神人レベルなら中二病気分で無双できるほどお兄ちゃんの戦闘力はチートすぎて卑怯だって思われてるわよ。きっと」


「は?」


「俺の戦闘力はチートすぎる卑怯者?」


時雄が自分の耳を疑うように聞き返した。


「そうよ」かぐやが腕組みしてうなずく。「修羅の国でのあなたの戦い方はまさにそう。たいして神力を使わず格上を倒すなんて普通は無理よ。あんたが自覚してないだけ」

「お兄ちゃんの才能は異常レベルなの」ヒメカがくるりと回転し、リボンがくるくる踊る。

時雄は褒められたことでちょっと嬉しくなり調子に乗る。

「バニーガール姿になってほしいんだけど」

時雄の言葉にかぐやが鋭く睨んだ。

「アンタまた変なことを……」

「いいよ~!」

「えっ?」かぐやが目を丸くする。

「ホント!?ヒメカちゃん天使!」時雄がガッツポーズ。

「でも条件があります」ヒメカが指を立てる。「この先の試練で一番頑張った人だけに『特別サービス』ってことで♡」

「よっしゃあああ!」時雄が拳を天に突き上げる。


「馬鹿みたい、やっぱりロリコンでしょ?」


かぐやの辛辣な一言に時雄が詰め寄る。

「違う!美少女フィギュア愛好家の健全な欲求だ!」

「一緒よ!この変態!」

「はいはーい喧嘩しないで~」ヒメカが手をパンパンと叩く。「まずは塔に登らないとね!」


赤レンガの塔は意外と古びていた。螺旋階段は石造りで足元が不安定だ。

「……てかさ、女王様のこと忘れてない?」時雄が三段目で立ち止まる。「あの『追跡者』置いてきたけど」

「忘れてないわよ」かぐやが先頭を行きながら冷たく答える。「そもそも女王が追ってきてない時点で何かおかしいと思わない?」

「お姉ちゃん鋭い!実はね~」ヒメカが飛び跳ねるように追い越し、「あの女王陛下は偽物なの」

「偽物?」「本物はいま試練の最終審判室にいるんだよ。でも誰かが代わりに罠を作っててさ~」


「なるほど。だからわざわざ階段登らせたり吊り橋渡らせたりするのね」

かぐやが石段を軽やかに上りながら言う。

「罠は突破できたみたいだよ?」ヒメカがくるりと回転し、「残るは『塔の頂上』だけ!」


五〇〇メートルをロープで登った後の百メートル階段は過酷だった。

「ぜー……はー……」時雄が膝に手をつく。

「情けないわね」かぐやが平然と上っていく。「修行不足よ」

「こんな美人先生いたら毎日筋トレするんだけど……」


「変態発言やめなさい!」


かぐやの叱責が飛ぶ中ヒメカはふわりと二人の頭上に浮かび上がった。

「あともう少し!このペースだとお兄ちゃんダウンしちゃうから──」

「え?」

突然ヒメカが消えた。と思ったら時雄の背後に出現。

「サービスの前払い!」

ヒメカが後ろからぎゅっと時雄の背中を抱きしめる。アリスドレスのフリルが背中でぷにぷにと当たる。

「ひゃっ!?おいヒメカちゃ……」

「お兄ちゃん元気出た?」

「出た!超元気!」

「バカ!」かぐやの回し蹴りが時雄の尻に炸裂。「ほら急ぎなさい!」

「はいぃっ!」

ヒメカに励まされて時雄は苦しくても頑張って登って行き遂に頂上への扉をみつけた。

扉は二つあり扉の上に看板があり何やら文字が書かれていた。

一つは『ジョルアーガの塔』、もう片方は『ジョラゴンバスター』と書かれている


扉の前で立ち尽くす一行。二枚の看板が風もないのに揺れている。


**左扉『ジョルアーガの塔』**

磨かれた銅版に楔形文字が刻まれている。触れると指先に熱が伝わる。


**右扉『ジョラゴンバスター』**

木彫りの竜が扉を咬み砕かんばかりに蠢く。その爪がガリガリと地面を掻く音が聞こえる。


「どっちを選ぶ?」ヒメカがくるりと回転し、リボンが広がる。「選んだ先に最後の試練が待ってるよ」


時雄が額の汗を拭う。「ここはやはり『ジョラゴンバスター』だな。勇者っぽくて燃えるだろ?」


「アンタに勇者素質なんて微塵もないでしょうに」かぐやが呆れ顔で腕を組む。「『ジョルアーガの塔』の方が謎解きメインで頭脳派ね」

「お二人とも意見バラバラだねー」ヒメカがにこにこ笑う。「ここはお兄ちゃんはヘロヘロで力にならないからかぐやお姉ちゃんが正解ね♡」

「うーん、ジョシター様にジョイちゃんか…それもいいんだがジョラゴンバスターのジョリア姫も捨てがたい…それにジョリア姫ならコスプレもあるし…」



「ジョリア姫のコスプレかぁ~」

時雄が目を輝かせるが膝はガクガク。

「おいおいここが勝負どころだろ!勇者っぽい方が──」


「却下」

かぐやが冷ややかな瞳で言い切る。「アンタの思考回路はもう信用しないわ」


「えぇっ!?」

ヒメカ:「ほんとに好きだね〜でもそれってただのエッチ目的じゃん?」


「『ジョラゴンバスター』の扉は物理ダメージ前提よ」かぐやが指で竜像の爪を指す。

「この爪の動きを見て。エネルギー消費量が尋常じゃない。普通の人間なら接近するだけで粉々になる」


「そ、そうなのか……?」

時雄が顎を撫でる。

「でも俺って『異常に強い』ってヒメカちゃん言ってたよな?だったら──」


「今のアンタは限界超えの体力消耗中でしょ」かぐやがトドメの一言。

「神力枯渇状態のまま竜に突っ込むつもり?自殺行為よ」


ヒメカが小さく拍手した。

「お姉ちゃん正解!『ジョラゴンバスター』ルートは実質即死トラップだよ♡」


「えぇぇっ!?騙されたァァ!」

時雄が膝から崩れ落ちる。

「じゃあ結局『ジョルアーガの塔』しかないってことか?まあ、でも女神ジョシター様とジョイさんに会うのが楽しみにして頑張るか」


石の扉が重々しく開く。

内部は予想を裏切るほど暗く静寂に包まれていた。

中央には巨大な祭壇があり、その上に荘厳な女神像が鎮座している。

イシター様だ。その姿は威厳に満ちていて一瞬でも下品な想像をしてしまった事を恥じ入ってしまうほど美しい姿だった。金のティアラを戴き薄布を纏った姿は優雅で慈愛に満ちた微笑を浮かべている。


「おぉ……これが伝説の……」時雄が膝をつき合掌する。

「なんかこう……感動的な出会いを期待してたんだけどなぁ」


「ちょっと」かぐやが鋭く遮る。「神殿内でふざけた態度はやめて」

彼女の視線はイシター像を捉えている。青い瞳が微かに光っているのに気づいたのだ。


青い光が螺旋を描いて収束し、かぐやの周囲で煌めく粒子が弾けた。


「これは……!?」

かぐやが自分の体を見下ろす。薄い青銀の鎧が全身を覆っていた。装甲は最小限で可動域を確保しながらも、重量級の鎧の様にしか見えない。


「おいおい!」時雄が目を皿にする。「かぐやちゃんが鎧姿に?しかも兜つけて顔も見えないし全然可愛くない‥さっきまでの方が数倍良かった」


「へへーん!」かぐやの顔が得意げだ。鎧は重さを感じさせず、まるで肌と一体化しているかのようだ。

「露出がなくて残念だったでしょ!おや、剣と盾も装着っと」


**BGM:** ちゃちゃらちゃんちゃちゃちゃらちゃんちゃちゃ……

低音弦楽器と高音シンセが絡み合う往年の8ビット風ファンファーレが神殿内に響き渡る。空間が歪み始め、床面がグニャリと曲がって複雑な石柱が林立する迷宮へと変貌していく。


「すごい……」かぐやが袖を通した感触を確かめながら呟く。

「でもこの衣装、異様に軽いわね。重力制御みたいな……」

時雄:「え?もう開始ってか?俺のはないの?俺だけ丸腰?」

ヒメカ:「私もないんだけど」


迷宮入り口で立ち尽くす時雄と鎧をまとったかぐや。奥からは奇怪な生物の鳴き声が聞こえる。

「なあ……この戦い……俺一人で挑むのはハードル高くないか?」

時雄が恐る恐る尋ねると、かぐやが剣を構えながら冷たく一瞥した。

「当たり前でしょ?あなたは『神人レベルが低い』んだから。今回はサポートに徹することね」

「来るわよ!」

かぐやが盾を掲げ、剣を一閃。獣の群れが粉砕される。

時雄:「ちょっ……俺の出番は?」

迷路のような回廊を進む二人。

「なあ、かぐやちゃん」

「何よ」

「あのさ……俺も武器とか防具欲しいんだけど?」

かぐや:「あら、ざんねんね。ここでは神人の力は封印されてるのよ、解かるでしょ、あっヒメカちゃんは危険だから私から離れないでね」

ヒメカ:「はーい♡」

時雄:(まるっきり無視されてるようで全然たのしくね。かぐやちゃんも鎧兜で曲線美すら拝めねーし‥しゃーないヒメカちゃんの体見てるだけで我慢してるか…しかし子供なのに綺麗な曲線美してるねぇ♡あっやべー、かぐやちゃんに妄想が筒抜けなんだよな。今のばれてなきゃいいけど)

「全部聞こえてます!何考えてんの?ヒメカちゃん7歳なのよ!そんな子の曲線美って頭おかしい、この変体ロリコンエロガッパは・・・」

かぐやの怒号が迷宮に響き渡る。青銀の鎧がキラリと光り、腰の剣がカチリと鳴った。

「落ち着いてよかぐやちゃん!誤解だって!」

時雄が後退りしながら手を振る。

「誤解?アンタの脳内妄想が『共有』されてることを忘れたの?ヒメカちゃんの……曲線美とか……」

かぐやの顔が兜越しでも分かるほど紅潮している。剣先が震える。

「いやいやそれは冗談で……ほら!目の前に敵が!」

「ちっ!」

かぐやが歯噛みして盾を構える。

襲いかかるのはトランプ兵──だが描かれている絵はスペードやハートではない。一枚ずつのカードに緑色のスライムが描かれているのだ。

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