不思議な国編③
梯子から転げ落ちた時雄が地面をバウンド。
「エロガッパは、私が上り終わってからきなさい。」
「はい。ごめんなさい。」
(たく、仕方がないよな、目の前でお尻が揺れてるのを見て妄想するなと言われるのが無理難題だよな)
そして三人梯子を上り終わりまた別の部屋に出た。
「よーし今度は俺が探すぜ」と透視を試みるが全然できない。
「え‥俺には使えんの?なんで?なんで便利なチート能力はかぐやばかりなんだ?これ酷くね?かぐやちゃんの服透視できなーじゃん」
「はぁ?」
かぐやの冷徹な視線が時雄を射抜く。その瞬間──
ゴン!
かぐやの回し蹴りが時雄のこめかみに炸裂。時雄は螺旋を描いて吹っ飛ばされ壁に激突した。
「なっ……なにすんだよ!」
「二度も同じミスするなんて学習能力ゼロなの?」かぐやが氷のような冷笑を浴びせる。
「ごめんなさい!ついポロっと!でも透視能力使えるのズルくないですかね!?」
「使えるも何もアンタは神力コントロールできてないだけでしょ」
「そうだけど……」時雄が唇を尖らせる。
「ちょっと待って、ちょっと離れたところに私にも透視できないあやしい部屋がある。行ってみましょう」とかぐやが言った
## 透視不能ゾーンと女王陛下の逆鱗
かぐやが示した通路の先には、奇妙な紋章が刻まれた重厚な扉があった。
「この扉だけ透視できないわ」
かぐやが壁をなぞる。指先が触れた瞬間──バチッ!
「っ!」
彼女の指が青白く光る。
「防御障壁かしら?」
「へぇー!これは『女王陛下の間』だね!」ヒメカが両手を広げて踊る。
「陛下って……アリスに出てくる女王様?」時雄が眉をひそめる。
「その通り!」
ヒメカがくるりと回転し、ドレスの裾を広げる。
「だけど今日は特別にお茶会の日に陛下が休暇申請を出しちゃってるの!」
「休暇?」
かぐやが怪訝な顔で扉を睨む。
「それってつまり不在ってこと?」
「いいえ!」ヒメカの声が甲高く跳ねる。
「陛下は『代替わり』を予定していて──」
ゴオオオッ!!
突然、扉が轟音と共に吹き飛んだ!
「わああっ!?」
砂塵が舞う中、玉座に座った女性の輪郭が浮かび上がる。金の冠を戴いた二十代半ばの美女──だがその瞳は翡翠のように透き通り、頬には青い鳥の羽飾りがついている。
「……騒がしい客人ね」
女王が扇子を閉じる。その動作だけで空気が凍りついた。
「かぐやの神力感知では……」
「あの、すみません。あなた様が女王様で?」
女王はかぐやの方をチラッと見る。
「いかにも妾がこの国の女王じゃ」
女王がかぐやの耳を見た。
「……兎が何故ここに居る?」
女王の声が冷たく響く。扇子がピシリと床を叩き、大理石の破片が飛び散った。
「あっ」時雄が思わず一歩踏み出す。
「すげえ美人だな!でもかぐやちゃんの方が可愛いかも──」
「黙りなさい」
かぐやが肘鉄で時雄の横腹を抉る。
「ぎゅふっ!?」
「そんなことより、何かまずいわね、ひとまず逃げるわよ」のかぐやの一言で時雄はヒメカを抱きかかえかぐやと一緒に逃げ始めた。
「なんか体重くね?」と時雄
「そうね、この空間では神人の力は使えないみたいね。要するに今はただの人間状態ってわけ」
「いや、マジかよ」と言いながら必死に走り続ける。
しばらく走っていると小さな小屋がありそこへ逃げ込むとまた普通の部屋の中にいた。
「ひゃー、頭の中が混乱してるわ」と言いながら抱えてるヒメカをみる。
「よく見るとヒメカちゃんかわいい♡柔らかくていい匂い♡いや、いかんいかんガキ相手に‥でも可愛いな」
時雄が鼻の下を伸ばしてヒメカをぎゅっと抱きしめる。
「ちょっと!離しなさい!」
ヒメカが足をバタつかせるが時雄の腕はがっちりとロック。
「おいおい大人しくしなよ。おじさんが怖い顔で追ってくるかもしれんだろ?」
「おじさんじゃなくて女王様だよ!あとその言い方超キモい!」
「ちょっとそこ!不適切接触禁止!」
かぐやがの肘が時雄の脇腹に刺さる。
「何考えてるのよ。こんな七歳の子供相手に。あんたロリコン癖もあったの?」とかぐやが仁王立ちでこめかみをひきつらせ激怒してる
「ちょっと!離しなさい!」
ヒメカが全力で時雄の胸を押し返す。しかしかぐやの指摘で我に返った時雄は渋々少女を解放した。
「ごめんごめん。ちょっと興奮してて……」
「最低……」かぐやが吐き捨てるように言う。
「でもこれってさ」時雄が小屋の壁を叩く。「また普通の民家に戻っちゃったってことだよね?」
確かに窓の外には住宅街が広がり、東京タワーは遥か彼方に普通サイズで佇んでいる。顔はない。
だが二人とも神人の力は封じ込まれたままだった。
ふと何気にヒメカが窓を開けるとロープがぶら下がっていた。上空を見上げると少し離れて500メートルほどあろう場所に家が浮かんでいた。
「ここ上るんじゃないの?」と言いながらヒメカはするすると上って行った。
「ちょっと、危険よ!ヒメカちゃん、待ちなさい!」とかぐやは叫ぶがヒメカは無視して上って行った。
「仕方がないわね。私達も行きましょうか。空飛べないから体力勝負になるけど時雄さん大丈夫?」
「ヒメカちゃんのスピード早すぎでしょ!」
時雄が必死にロープを握りしめる。かぐやに先導されながら、まるで蜘蛛のように壁面を這い上がる。
「くっそ!こんなロープ一本で500mとか死刑宣告だろ!」
汗が目に入り視界が滲む。地上300m地点で足が震え始めた。
「ちょっとアンタ!ここで止まったら振り落とされるわよ!」
かぐやの叱咤が上から降ってくる。神人パワーが使えない彼女も苦戦しており、小さな手が青白く光っている。
「おねえちゃーん!こっちだよー!」
先に辿り着いたヒメカが屋上の手すりにぶら下がり、手招きしている。純白のアリスドレスが風になびき、リボンがくるくると回転する。
「おいおい子供は元気だなぁ‥」時雄は汗を拭いながら苦笑いした。
その時。
ビュウッ!
突風が巻き起こり時雄の体がぐらついた。
「うおっ!?」
ロープにしがみつくも、体力温存のためゆっくりゆっくり登るしかない。
「やっほー!あと少し!がんばれお兄ちゃーん!」
ヒメカが可愛らしい声援を送る。
***
五分後。
「ふぅ……やっと到着……」
かぐやが最後の一段を登り切り膝をつく。額から流れた汗がシーツのように張り付く青いドレスを濡らす。
「お疲れさま~!」
ヒメカが駆け寄りかぐやの首に飛びかかる。
「ひゃっ!ちょっと離れなさい……」
「でもお姉ちゃん汗だく!わたしが拭いてあげるね!」
幼い手がドレスの裾からハンカチを取り出し、かぐやの頬を優しく撫でる。
「……ありがとう」
珍しく照れたような笑みを浮かべるかぐや。一方時雄は屋上の中央で大の字に倒れ込んでいた。
「こりゃダメだ……神人パワーなしじゃ肉体労働耐えられん……この後は?」
「簡単だよ!」ヒメカが胸を張る。
「上に行けばいいだけ!」
指差した方向に古いレンガ造りの塔がそびえ立っていた。高さ100メートルはあるだろう。
「え……また昇るの?」時雄が青ざめる。
「それにしてもさ、かぐやも人間のはずなのに体力おかしくないですかね?スピードとパワーが俺と比べて別次元なんですけど?」
「あんたが弱すぎるだけよ」
かぐやが腕組みして鼻で笑う。その細い腕には青い血管が浮き上がっている。
「私は単に鍛え方が違うだけ。ロボット時代に培った運動神経が残ってるのよ」
「おーい!お兄ちゃん早く来てよー!」
すでに塔の入口にいるヒメカが手を振る。扉には赤い薔薇が描かれ、取っ手は金色のリボンで結ばれている。
「おいおい待ってくれよ!」
時雄が這うように近づくも入口の段差につまずいた。ガクン!
「痛ってぇ……」
膝を擦りむき血が滲む。
「もう無理……体力ゲージがゼロなんだけど」
「しゃきっとしなさい」
かぐやが冷たい目で見下ろす。
「ここまで来たのに引き返せるわけないでしょ」
「はいはいわかってますよーでも少し休憩‥限界過ぎる」ぜいぜい肩で息をしてる状態だ。
「しかし修羅の国であれだけ基礎体力作りをしたのになんでこんなバテる訳?逆になんでベースがロボットだからと言ってもかぐやは元気なんだ?しかもいろんな武術も使えて…魂は同じなんだから大きさで考えると本体の俺の方が優秀になると思うんだけどね」と時雄はぐちぐちと不満だらけ
「おまけにかぐやは美人で基礎体力も知識も圧倒的に上で聖女だしチート能力はかぐやに全振りだし、それに比べ俺なんてモテる顔でもなく知識もないし基礎体力もないうえ煩悩の塊だし…」ぐちぐちと愚痴がさらに続く。
時雄のぐちぐちとした愚痴が続く中、ヒメカがくるりと振り返った。
「ふーん?お兄ちゃんってこの状況の方が幸せだって事に気づいてないんだね!」
「は?」
時雄が顔を上げるとヒメカがにんまりと笑っている。その瞳の奥に一瞬だけ赤い光が閃いた。
「だってさー『俺なんてモテないし知識もないし基礎体力もないうえ煩悩の塊だし』ってずっと文句言ってるけど」
「今の立場が逆だったらって思ったことある?」
「え?」
時雄が固まる。ヒメカの指がくるくると回転する。
「だってさーお兄ちゃんがモテモテのイケメンでさ、そのうえなんでもそつなくこなせるのに、逆にかぐやちゃんの容姿が残念で何にもできない無能な女性だったらどう思う?」
「……そりゃ当然相手にする価値なし……」
「でしょう?」
ヒメカがくるりと回転しドレスの裾が広がる。
「今の状態こそバランスいいんだよ!お兄ちゃんの欠点がみんなかぐやちゃんの強みで補われてる♪逆にここぞという時には攻撃に特化した能力で守れてるし」




