修羅の国編⓾
「どこだッ!?」
本体を見極めようとする羅刹の前で分身たちが一斉に動き出す!
「レンジアターック!」
時雄Aが左から斬りかかる
時雄Bが右から蹴りを放つ
時雄Cが真下から土煙を巻き上げて奇襲
時雄Dが背後で忍び寄る
時雄Eが遠距離から飛翔刃を連射!
「ぐおおッ!」羅刹の黒い神力障壁が無数に分裂し全方位防御を構築。しかし……
「ふふん♪」
時雄Eが投げたのは本物の刀ではなく鏡の破片だった! 反射光が羅刹の眼を焼き、一瞬の隙を作る。
「狙いはここだ!」
本物の時雄が唯一の死角—羅刹の股下に滑り込み、逆袈裟斬りを放つ!
「グ……グハアアッ!!」
ズバッ!!
羅刹の左足甲が深く裂け衝撃で巨体が傾いた。
「今だかぐや!」
「了解!」
かぐやが冷却システム全開で飛び出し羅刹の胸部に触れる。瞬間─
バリバリバリ!!!
高圧電流が走り羅刹の内部機構がショート! 皮膚から青白い火花が散った。
「ぐがああぁぁぁ!?こっ……このような攻撃……侮った!!」
「見事なコンビネーションね」かぐやが汗で透けたインナー越しに胸元を抑えながら言った。「ただ……そろそろ冷却ユニットが限界よ」
「待った。なんか今変な事想像したでしょ?」
「いや、してないって」
「し・て・ま・し・た!『透けたインナー』とかで妄想してわよね?」
「してねーよ!」
「くだらない漫才をやっている場合かッ!!」
ドガァン!!
羅刹の怒りに呼応し地面が割れ、黒い神力の柱が噴き上がる。かぐやの冷却システムが爆発音を上げ機能停止した。
「しまった!」かぐやの戦闘服が焼け焦げ肌に貼りつく。額の冷却パネルから蒸気が噴き出していた。「……熱暴走するわ」
「なにやってんだ!」時雄が【天照】を構える。「お前がやられたら作戦全部パーだろ!」
「黙れ!愚か者共が!!」
羅刹の全身から血管が浮き上がり赤黒い脈動が走る。周囲の大気が歪み空間に亀裂が入った。
「これが真の皇帝の力!虚神核解放だ!!」
ゴオオオッ!!
羅刹の胸部装甲が爆発的に隆起し内部から九つの結晶体が出現。それぞれ異なる色の光を放つ虚神核が禍々しく回転し始めた。
「まずい!」かぐやが喘ぎながら警告。「虚神核を完全解放した……!神力総量が3倍に上昇してる!」
「マジかよ」時雄が唾を飲み込む。「ってことは計算上俺の攻撃はほぼ通らないな」
「冗談言う場合じゃ……ああもう!」
かぐやが冷却パネルを外し乳房を露出させる。「私の神力を直接注入する!」
「ちょっと待ったあ!?ここでヌードサービスかよ!!」
「違うわ馬鹿!結合孔に接続するの!!」
時雄の左手首と合わせ、かぐやの神力を直接供給するリンクが確立された。時雄の瞳が金色に輝き【天照】が虹色の光を帯びる。
「こ……これが『天照』本来の姿か」
「ええ。だけど持続時間は10秒よ!その間に核を破壊しなければ私たち全員消滅するわ!」
「10秒ね……了解」時雄が不敵に笑う。「なら──」
「究極奥義・【天照鳳凰】ッ!!」
轟音と共に【天照】が巨大な炎の翼へ変化。時雄の全身が炎に包まれ燃え盛る鳥の形態と化した!
「行くぜ羅刹!!これが神人・時雄の本領だああ!!」
シュパアン!!
鳳凰の形をした炎の弾丸が虚神核の中心へ直進する。羅刹が絶叫と共にすべての障壁を集約させて迎撃態勢をとった!
「ぬうう……!来いッ!!」
「これで終わりだあああっ!!」
カッ!!
両者の力が激突し眩い光が辺り一面を覆い尽くした────
カッ!!
閃光と轟音が海岸一帯を飲み込む。爆風で砂塵が数百メートルまで舞い上がり視界が完全に遮断された。
「……ッ!?」
かぐやが両目を庇いながら叫ぶ。「時雄!どこなの!?」
「…………こっちだ」
爆発地点から数十メートル離れた岩陰。かぐやが駆け寄るとボロボロになった戦闘服を纏う時雄が膝をついていた。全身の皮膚が焼けただれ衣服はほとんど炭化している。
「何てこと……!」「大丈夫……それよりあいつは?」
二人の視線の先で爆煙が晴れ始めていた──
そこには巨大なクレーターの中に佇む羅刹の姿があった。全身が瓦礫と灰で覆われているがなお立ち続けている。
「ぬう……」羅刹がゆっくりと頭をもたげる。「まさか我が虚神核の九割を損傷させるとは……神人とはいえ予測不能な存在だ」
「まだ生きてるのかよ、だがちょうどいい。こいつにどうしても聞きたいことがあったんだ」時雄が血を吐きながら立ち上がる。
「何が聞きたいのだ?ここまでわしを苦しめたことに敬意を表しお主の最後として冥途の土産としてなんでも教えてやろう」
「残念でしたーーもう冥途には行ってきたんだよね。冥途には羅夢ちゃんて可愛い子がいて‥とと違う違う、かぐやちゃんに怒られてしまうわ」
「……何?」
羅刹の動きが止まった。額の血管が青く浮き上がる。
「貴様が冥府を訪れたというのか?羅夢だと?あの忌まわしき罪人が『可愛い』だと……?」
「ああ。地獄巡りしてたら出会ったんだ。案外面白い子でさ」時雄が血まみれの笑みを浮かべる。「お前んとこの娘だろ?」
「娘……!?」羅刹の怒りが沸騰した。「あの穢れた女が我が娘だと?認めぬ!認めぬぞ!」
「はいはい。それで質問なんだけど」時雄が焼け焦げた指で虚空を指す。「前々から不思議だったんだがここへ来てから女の子を見かけないんだがお前らどうやって子孫残してるわけ?」
「貴様!そのような下劣な質問をするとは!」羅刹の怒号が砂塵を舞い上げる。「冥府の穢れを……いや!そもそも女子など不要!神人は生殖行為など超越した存在なのだ!」
「ふーん。でもさ」時雄が焦げた髪を掻き上げる。「かぐやちゃんみたいに女の神人もいるじゃん。矛盾してね?」
「あら?」かぐやが汗まみれのインナーを脱ぎ捨てながら口を挟む。「それってつまり『男色至上主義』ってこと?気持ち悪ッ」
「だまれっ!!」羅刹の血管がさらに浮き上がる。「創造神の意志により神人は男子のみで繁殖可能な完璧種族なのだ!女子など邪魔な存在……!」
「……待って」かぐやが突然真顔になる。「だから地獄に堕とされた女たちは?」
「ほう?」羅刹が一瞬沈黙し嘲笑を浮かべる。「気づいたか……愚かな娘め」
「やはり……」かぐやの目が鋭く光る。「地獄に封印されたのは堕天使だけじゃない。神力を宿した女性たちも……」
「その通り」羅刹がゆっくりと歩み寄る。「『羅夢』なる者は例外中の例外。忌々しき失敗作よ」
「なるほどな〜」時雄がニヤリと笑う。「だから地上で女に興味なくなった連中が地獄に押し掛けるわけね」
「お前が……!」羅刹の目に憎悪が滲む。「冥府の秩序を乱したのも……!」
「はいはい怒らない怒らない」時雄が両手を広げる。「そろそろネタバレタイム終了?で本当の目的は?」
「目的だと?」羅刹が哄笑する。「我は天界の再興を……」
「嘘つけ」時雄の眼光が鋭くなる。「本当は怖かったんだろ?女たちが逃げ出すのが」
「黙れェ!!」
ドガァン!!
羅刹の神力が爆発的に膨張する。周囲の岩石が砂に還元され衝撃波がかぐやの身体を揺らす。
「この世の秩序を統べる皇帝に逆らうとは!お前の命……否!この星諸共滅ぼしてくれるわ!」
「やれやれ」時雄が肩を竦める。「やっぱ最終兵器キチガイモードだな」
「何言ってるの!」かぐやが警告する。「虚神核を完全に開放したら半径50キロが真空状態に!」
「まぁ見てなって」
時雄がゆっくりと焼け爛れた左手を上げる。そこには先程のリンク孔から微かな光が漏れていた。
「羅刹」
「ぬ……?」
「お前の弱点知っちゃった♡」
「なにぃ!?」羅刹の動きが一瞬止まる。
「それがこれだよ。あがががが」時雄の目が白目をむく。
「ちょ!?」
「冥王の権能【黄泉返り】!」
時雄の体内から黒い炎が迸り羅刹の虚神核へ奔流のように流れ込む!




