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第九十五話 死体兵話


「逃げられた!」


リリスが消えた空間を見て、私は悔しさから唇を噛む。


非道の限りを尽くしたリリスを逃すつもりは無かったのだが……。



「ライラ姉!」

マリーの叫びに慌てて振り返ると、リアとマリーが動く死体リビングデッド達に囲まれている。


そして私にも背後から今にも襲いかからんとしていた!


「華月流 五色!」


目の前に迫る二体のリビングデッド達を切り捨てる。


先程まで生きていたその姿は、今や土気色となり口は半開きで目も焦点が合っていない。

腕など身体の欠損も目立ち、それ故斬るのに抵抗が少しだけ薄まる。


そして杖を振り回して牽制しているリア達の元に駆け寄ると、


「華月流 四龍」


残りのリビングデッド達を切り伏せた!


そうして部屋が静かになった。




「一体これは何なのよ!」

私が切り伏せた死体を見ながら言うと、


「こんな魔法は僕も聞いた事がないね」

マリーも首を傾げる。


そんな中、意外なことにカンナから声が上がった。

「僕、似たような事、知っているかも」


先程まで死体を見て顔を青くしていたが、今は動かなくなった死体に向かって手を合わせ、黙祷を捧げていた。


私達の話に顔を上げると、

「お城でね、昔の話や記録を見ていた中に、これと似たような話があったよ」


「どんなお話か覚えておりますの?」

リアが言うと、頷いて話し出す。



カンナの話を纏めるとこうらしい。


魔族達と人間が戦いを繰り広げていた頃、兵士増加を狙った魔族が編み出した方法。

それが『人間の死体を兵士とする』方法であった。


これにより人間側はかなりの被害を被った。


仲間だった者達が戦死すると敵として襲ってくる。

その効果は単純に戦力を増やすものだけでは無かった。


仲間達を手に掛けることを躊躇する者や精神的に追い詰められ発狂する者など、人間側への影響は測りしれないものであった。



「そして死体を調べて見ると、どうやら死んだ者が生き返った訳ではなくて、脳に寄生して身体を操る寄生虫の仕業とわかったみたいなの」


「寄生虫?」


「うん。 魔族が創り出したものみたい」


「じゃあ今回のも?」

私はそう言って倒れている死体を見る。


「身体の大部分や、動きの指示を出す脊髄とかが駄目になると停止するみたい」

……確かに私が切断した死体は大きく身体を斬られたりしている。



「戦争時に使用していた寄生虫を持ち出したのですわね……」

リアが呟いていたがハッとして、


「これ、生きている人に寄生されたら……」


「そこは大丈夫みたい」

慌てたリアを安心させる様に、


「この寄生虫は低温じゃないと生きられないみたいなの。 過去に寄生虫を見つけて色々調べた結果、そう分かったらしいの」

カンナが教えてくれた。



「う……うぅ。 お、お父様……」

カンナが支えているクレアから声が漏れる。

気を失いつつもうなされているらしい。


「ひとまず、リリスも逃げ出したし一旦戻りましょう。 ここの事も誰かに伝えないと……」


「では私とマリーで冒険者ギルドや国の兵士達に伝えて参りますわ」


私は重そうにしているカンナからクレアを受け取ると、

「ありがとう。 私はカンナとクレアの家に戻ってクレアを休ませてくるわ」


そうして、この凄惨な現場をみんなで後にしたのだった。




この事は国の中で極秘とされ国民に知れ渡ることは無かった。

魔族による残虐行為があったと有れば国民の混乱は必至だろうし、その為の配慮と思われる。

それ故、賊によるものとして世間には公表された。



そして事実を知る私達は、後日カタクリの議会に呼ばれる事になったのだった。




「う〜ん、考えていた事と違う展開だったけど、とりあえず最高責任者や代表者達に会えるのよね?」


「そうなりますわね。 詳細な話が聞きたいらしいですし」

首都中心にある国会議事堂。

私達はそこに向かっていた。


元々カンザキを通じて渡りをつけてもらう予定だったが、彼が死ぬ事でこうして代表者達に会いに行くことになるとは、何とも複雑だった。


「クレアは大丈夫なの?」

私は一緒に同行しているクレアに声を掛ける。


「……すみません、おねぇ様。 ですが私にも同行依頼がきておりますので」

そう言って弱々しく微笑む。


やはり父親があの様な死に方をしたのはショックであろう。

いつもの快活さはなりを潜めていた。


「それに代表者の一人である父が亡くなったのですから、恐らくその座の事もあるのでしょう」


「にしてもね……ちょっと急すぎない?」


「まぁ、恐らく話を聴きたいだけだとは思いますけどね」

色んな事をクレアにはされては来たが、それでも今のクレアは不憫に見える。


私はそっとクレアの手を取ると、

「カンザキさんの事、救えずにごめんなさい」


私の言葉にクレアはハッとした様に顔を上げて私を見た。

そして見る見るうちに目に涙が貯まっていき……しかしクレアは涙を拭うと気丈にも、


「おねぇ様のせいではありません。 逆に色々して頂きありがとうございました」

深く頭を下げた。


(……芯の強い子だわ)

私はそう思うと共に、少しだけ……ほんのちょっとだけ見直したのだった。



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