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第九十四話 凄惨部屋


「カンナ!」


私は会場の外に出ると、そこに立ちすくんでいるカンナ達に事情を説明する。



話を一通り聞いたマリーが、


「……あの人達がそんな怪物に……」


「うん。 倒しはしたけど、まだカンザキさんも偽のアンズも見つかってない」


「心配だね。 早く見つけないと……」


「本当は手分けするのが良いんだろうけど……」


「さすがに危険ですわね」


リアの言葉に私は頷いた。


先程のような怪物がいないとも限らないし、偽のアンズもいるかも知れない。


「ひとまず会場にはいなかったから、こっちに行こう」


私はそう言うと会場横の通路に入っていく。

通路への扉は破壊されており、通路に面したいくつかの部屋が見える。



私達は全員で一つずつ部屋を見ていった。


「うっ!」

「なんて酷い……」


どの部屋も開ける度声が漏れる。


どの部屋も血が床一面を濡らし、身体をズタズタにされている死体が転がっている。

壁や天井にまで血がはねて滴り落ちていたりしており、どれ程凄惨な事が起こったのかが伺い知れる。


「みんな有力な商業会の方々です」

後ろから青い顔をしたクレアが教えてくれる。


そうして部屋を巡り、ある部屋を開けた時だった。


「お父様!!」


クレアが私を押し退けて部屋の中に飛び込もうとする。

私はその腕を掴んで引き寄せた!



その部屋も他の部屋の例に漏れず、血が床から天井まで一面に飛び散っている。


そして部屋の中心にはメイドや執事の死体が積み上げられており、その一番上にはカンザキが仰向けに乗せられていた。


恐らく生きてはいないだろう……頭と首に剣が刺さっても平気な人でない限り。


カンザキの目はカッと見開かれ虚空を睨み、その顔は苦悶の表情を浮かべていた。




そしてカンザキの体の上には、偽のアンズが立っていた。


「遅かったね。 もう少し早く来れば良かったのに」

偽アンズはニヤリとすると、


「そうしたらコイツの最後が見れたのにねぇ」

刺さった剣を抜くとカンザキの死体を足蹴にする。


カンザキの体は死体の山から転がり落ちて床に力無く横たわった。

顔が天井を向き、光を無くした瞳が天井を睨みつけて止まる。



「お、父様……」


そのあまりの仕打ち……さすがに限界だった様でクレアの体から力が抜ける。

腕を握っていた私は、咄嗟にその体を抱えた。


どうやら失神したようだ。



「お前は一体誰だ?」

あまりの残虐さに私の中で怒りが駆け巡る。


「私? 私はアンズ……」


「違うでしょ! 本当は誰なの?」

私は会話しつつ自分を抑えつける。

感情に任せてはいけないと頭の中で警鐘が鳴る。



「ふむ、せっかちさんだねぇ〜」

偽アンズはヤレヤレと言うふうに肩をすくめると、


「私はギタリス国の魔王軍で暗部を率いる者。 名前は〜そうだねぇ、リリスって名乗っておこうか。 これで良いかな?」


「魔王軍……どうして魔王軍が!」

私に同調するように、


「魔王軍は魔王が倒されて壊滅した筈。 何故動いているの?」

マリーが質問を挟む。



リリスはそれに答えず、

「まぁまぁ、取り敢えず……」


パン! と手を叩くと、


「遊んでいってよ」

ニコッと笑顔を見せる。


外見は可愛らしい少女だけに一層不気味さを感じる。



「ライラ姉様!」

リアが私の名前を叫ぶ、リアが示した方を見ると、



ズッ……ズズッ


倒れていたカンザキの死体が……動き出している!


それだけではない、メイドや執事の死体もぎこちなく体を動かし始める……。



「……どこまで死者を愚弄するというのですか!!」

珍しくリアが怒っている。


しかしリリスは気にも止めず、

「一緒に踊って上げて〜仲間になろうってさぁ」

嘲るような口調で死体達に告げている。



……なんて奴!


私はカンナにクレアを託すと、剣を抜き放つ!


私の静かな怒りに応えるように青白い刀身がキラリと輝いた。



「あらあら? その人達を斬っちゃうんですか? 元は人なのに?」

リリスがそう告げる。


偽アンズの様な寡黙さはなく、飄々とした様な言い方……恐らくこっちがリリス本来の性格なのだろう。


私はリリスに返事をせず、


「神速! 華月流 奥義之壱 百華龍乱」


動き出す死体達の間を縫ってリリスに駆け寄り袈裟掛けに斬りつけた!


キーン!


甲高い音が鳴り響き見えない何かに阻まれる!


しかし私は足と手を止めず二撃目、三撃目と斬りつける!!


キーン! キーン!


時間がゆっくりなせいで弾かれる音が間延びして聞こえる。


八撃目!


ピシッ!


阻まれると同時に今までと違う音が聞こえた!



九撃目!


パリーン


見えないガラスが砕けるような感触。



そして最後の十撃目!

渾身の一撃をリリスに向かってお見舞いする!!


青白い刃は、阻まれることなくリリスの体を斜めに斬りつけた!!



距離を取り……神速が終わる。



「ぐっ!」


リリスが片膝をついた。

その身体から血は流れず凍り付いた傷が斜めに走る!


「し、死体どもではなく私を直接狙ってくるとは……」


傷を手で押さえつつ立ち上がると、


「しかも障壁を破るとは……やりますね」



完全に入ったのに……切断出来なかった!

倒したと思ったけど……。


私も決めるつもりで奥義を使った為、しばらく神速が使えない。



「『防御プロテクション』が無ければ危ない所でした」

リリスはそう告げると凍り付いた傷を見て、


「ですが……この傷はちと厄介そうですねぇ」


そう言うと両手を広げる。

私を悔しそうに見ていたが、急にニコッとすると、


「残念ですがここは退却させて頂きます。 また今度会えると良いですね」


「な! ま、待て!!」

私が叫ぶも、



パン!


手を叩いたリリスの姿が消えていく。


「その時は……もっと歓迎いたしましょう……」


そうして消える寸前、微かに耳に届いたのだった。


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