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第九十話 討伐活動


「おお! かなり広いねぇ~」

部屋に案内された私達は、思わず感嘆の声を漏らす。



その部屋はカンザキの館同様赤い絨毯が敷かれ、高級そうな家具や美術品が並んでいる。

レンガ作りの部屋は暖かさを感じ、火はついていないが暖炉なども見える。


「見て見て! お風呂ついてる!」

部屋の奥にある扉を開けるとそこは脱衣所で、その先には浴室も見える。


「わーベッドふわふわする~」

ベッドをぽんぽんするカンナ。


「悪くありませんわ」

素直に褒めないものの嬉しそうなリア。


「……」

宿でもらったパンフレットを見始めるマリー。


ブルブルブル

フェンリルも久しぶりに鞄から出れて頭を振ると、伸びをしたりしてリラックスしているようだ。

……どう見ても犬だわこれ。



私達が宿について、言われた通りカンザキさんの名前を出すと、


「カンザキ様と繋がりのある方でしたか……それでは最上級の部屋をご用意させて頂きます」


と、この広い部屋に案内された。



宿代ただとはいえ、こんな高級な部屋で良いのかなぁ?

まぁカンザキさんお金持ちっぽいし……平気かな?



「とりあえずお風呂!! そして寛ぎつつ、ちょっと今後の打ち合わせをしよっか?」

私の言葉に全員が賛成した。




お風呂でゆったりと長旅の疲れを癒し、クレアのおかげですり減った精神力を回復させてもらう。

お風呂から上がってホカホカになった私達はベッドに座り込んだ。

椅子もあるんだけど、ベッドがフカフカでみんなこっちに座りだす。


「じゃあ、まずはやることだね」

私が切り出した。


「要石を守る事と魔族達にいるリーダーを倒すこと?」

はい!とばかりに手を挙げてカンナが答える。


「正解! さすがカンナ! 頭良いし可愛ぃ~」

私がカンナの頭を撫で撫でしてやると嬉しそうに微笑む。


わ~乾かしたてで髪がさらさらのふわふわだぁ。

私の爆発天パと違って手触りも良いし……良いなぁ……。


「はいはい、進めますわよ?」

まったりムードになりそうな路線をリアが戻して話を進める。


「とりあえず、最優先はリーダーを倒すこと。 リーダーがいなくなれば魔族達も崩れて、結果要石を破壊できなくなるはず」

色々意見を話し合う中、最終的にはマリーが方針を決めた。



「でも……問題はリーダーの居場所なのよねぇ?」

私はそう言いながらフェンリルを見つめる。


フェンリルなら分かるという事だったが……。


『吾輩は魔族の気配に敏感でな、近くにいれば見つける事も出来よう。 じゃが……』

フェンリルは頭をフルフルと軽く振ると、


『距離が開きすぎると流石の吾輩でも無理じゃ』


「どれくらいの距離?」


『そうじゃなぁ……1kmってところかの』


「それでも凄いよ」

私が言うと照れたのかそっぽを向く……でも尻尾が嬉しそうにブンブン振られている。



「大丈夫、要石は岩盤を構築しているものが狙われているから、この街を覆う壁沿いに歩いて行けば見つけられるはず」


「ん~……でもそれって要石を破壊している実行部隊でしょ? リーダーがそこにいるかなぁ?」

マリーとカンナの意見に、全員でう~んと黙り込む。


「ひとまず……リーダーを探して闇雲に動くよりは、要石を守りつつ魔族を倒していこう」

私が言うと、


『それが良いじゃろうな。 それに実行している奴らが倒されていけばリーダーも引きずり出せるかもしれん』

フェンリルが私に同意し、


『……こ奴と同じ意見って言うのはちょっと腑に落ちんがのぉ』


「ぶー! 何それ! 私が馬鹿みたいな言い方して!」

私が言うと、


『いつも筋肉で解決してたからのぅ。 吾輩と同意見になる日が来ようとは思わなんだ』

そう言ってベッドの上で包まった。


「あ、こら! 言うだけ言って寝るとか、卑怯者~」


私はベッドの上でフェンリルのお腹をくすぐる様にしたり撫でたりする。


『こ、こら! そ、そこは駄目なのじゃ! なのじゃーー』

ベッドの上でゴロゴロし始めるフェンリルと私。


そんな私達を、カンナは嬉しそうに、リアとマリーは呆れたように見るのだった。






そうして次の日から、要石を守りつつ魔族を倒していく作戦を実行していき、一週間程経ったある日の事。


今日も今日とて魔族を倒し、経過報告をカンザキさんに伝えた後、疲れた体を引きずりながら宿へ戻ってきた私達。



「む~今日もはずれだったね」

私ががっかりした様に言うと、


「それでも魔族の数は確実に減ってる。 堅実的」

マリーが慰めるように私に言ってくれる。


この一週間、ゴブリンやオークと言った魔族達を蹴散らしてきた。

彼等は岩陰などを利用して隠れるようにして動き、密かに要石を破壊しようとしていた。


まぁ、こちらにはフェンリルがいるからそれでも簡単に見つけられるんだけどね。

それに確かにマリーの言う様に、少しずつではあるが魔族が減ってきている様に思える。



(とりあえずお風呂! 湯船でゆったりとお湯につかって、また明日から頑張ろう!!)


気を取り直し宿に入ろうとした私だったが、


ドン!


「あ、ご、ごめんなさい!」

「これは失礼……」


丁度宿から出てこようとした人とぶつかった。

すぐさま頭を下げ……あちらも頭を下げていたが、お互いに顔を上げると……、



「あ、貴方!」

「ん?」


私はその人を見て一瞬狼狽えた!



小柄な体型に黒いボブカットの髪、可愛らしい顔立ちに白い肌と東邦の服装。


それはクレアの雇っていた少女アンズだった。



アンズは私を少し見上げる様な顔をしながら困惑しているようだ。


「アンズさんがどうしてここに? まさか……!!」


私は少し離れて距離を取ると、


「く、クレアに言われて私を拉致しに来たんじゃ……」

言いかける私の言葉を遮り、


「すまない。 お主の言っている意味がいまいちよく分からないのだが……。 だが、私の名前を知っているという事は、どこかでお会いしたのであろうか?」


あんずは困惑顔のまま私に尋ねてくる。

その顔は本当に分かっていない様だ。


「あ、あのねぇ……貴方あれだけ私に刃向けておいて……」


「そ、そうであったか。 覚えておらず申し訳ない。 お主と戦ったという事であるようだな」


「えぇ~……貴方って記憶喪失なの? つい一週間ほど前のことじゃない?」


「一週間ほど前……であろうか? それならば人間違いであろう。 私は今この街に着いたばかりなのでな」



どうにも会話がかみ合わない。

それに以前のアンズと違い、目の前のアンズは無表情ではないし語りも饒舌だ。


「……横からすみません。 僕はマリーと言います」


アンズはマリーに目を向けると、


「これはご丁寧に……私はアンズと言う。 何故かこの方は私の名前を知っている様だが……」


アンズが私に目を向ける、少し警戒気味にも見えた。



「アンズさんは今この街についたのでしょうか?」


「そうなのだ。 この街では魔族が活発化してるって聞き及んだのでな。 冒険者ギルド依頼で討伐に来たところだ」


私はまじまじとアンズを見る。

嘘は言ってなさそうだ……ただし外見はやはり先日戦ったアンズにしか見えない。



と、フェンリルが唐突に、


『このアンズは先日のアンズと違い危険な感じがしない……もしかすると』



流石の私でもフェンリルが言いたいことが分かった。


つまり目の前のアンズが二重人格や一卵性双生児でもない限り、先日戦ったアンズは偽物だった可能性があるという事なのだ。


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