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第八十八話 父親登場


「も~口ほどにもないです」

クレアはバコパとコピアを冷たく見下ろしてそう言うと、


「アンズもやられちゃったようですし、こうなったらうちのメイドと執事に頑張ってもらいましょう」


そう言って合図すると、メイド達が広間の真ん中に立つ私をずらりと囲みだした!



「いい加減にしなさいよ! クレア、貴方のせいでどれだけの人が怪我したり迷惑していると思っているの!!」


私はいい加減頭にきて怒鳴りつける。



クレアはその言葉を聞いて俯く。


「ここのメイドさん達だって、本来こういう仕事じゃないでしょ? 私達を止められるわけ……」


クレアが顔を上げる。

その顔を見て、私は思わず口を噤む。



その表情は……頬を赤く染め悦に入っていた。



「ああ!! おねぇ様! 私の事を本気で怒ってくれるだなんて!!」


息を荒くしながら体をよじる。


「ああ……私の体にビンビン来ます! 来ちゃいます!!」

首をブンブン振り、おさげも一緒に振られる。


「はぁはぁ……良いです。 凄く良い……私が受けでも全然平気そうです」


目は焦点があっておらず、じゅるりと涎を拭っている。



……商家のお嬢様にはとても見えないが、ちゃんとハンカチで拭っている所はマナーが出来ていた。

それ以外は駄目駄目だけど……。




「受けってなぁに?」


「いえいえ、カンナは知らなくていい事ですのよ」

あどけなく首を傾げるカンナに、リアが子供を諭すように話している。


……っていうか、リアは知っているのかなぁ?  聖女に関わる身の上だと思うんだけど……。


ち、ちなみに私はちょっと本で読んだというか……まぁ城のメイド達の話で聞いたというか……そんな感じ。




「やっぱりおねぇ様を逃すわけにはいかないわ! 全員で捕まえなさい!!」


熱い吐息を漏らすクレアの指示で、メイド達が一斉に飛び掛かろうとした!





「これは一体何事だ!!!」



いきなりハスキーな声が広間に響き渡る。



見ると入り口の扉が開いて、壮年の男性が一人立ちすくんでいた。

タキシードをきちっと身にまとい、傍には荷物を持った執事が数名控えている。



「お、お父様!」


クレアが驚きの声を上げる。



(お、お父様!? じゃあ、あれがクレアの……)


厳めしい堀の深い顔つき、白髪を蓄え整えられた口髭、有数の商家と言われれば納得するだけの容姿と恰好をしている。


「暫く出張だったハズでは……」



「ああ、そうだったのだが色々あってな。 急に戻ることになったのだ。 それより__」


クレアの父は私を囲むメイド達や床に倒れているバコパ達に目をやると、


「クレア! これは一体何事だ。 何をしている!」


「お父様! 聞いて下さい、私は運命の人と出会いました!」


質問の答えになっていないが、クレアの衝撃的発言に、


「何だと!?」


クレアの父は大きく目を見開くと、


「どこの男なんだ? お前に相応しいかどうか見てやらなければ……」


広間をぐるりと見回して……私達に気付いた。



「クレア、あの方達は?」


「あの方達の中にいらっしゃるんです。 運命の人が……」


「そうなのか?」


クレア父が改めて私達に目を向ける。


「全員……女性の様に見えるが?」


「だってライラおねぇ様は女性ですから」

頬を染めて恥ずかしそうに両手で顔を隠す。


「な、なんだと!?」

この言葉にはクレア父も驚いた表情のまま固まってしまった。




「僕男なのに……」

後ろからカンナの小さな呟きが聞こえる。

カンナはカンナでショックを受けているようだ。




その間にもクレアは父に一生懸命説明をしているようだ。


ライラがどれほど素晴らしいかを延々話している。


本当は今のうちに逃げ出したいけど……玄関先でやられてちゃあね~。




暫くして話が終わったのか、クレアの父が私達の方に来ると、


「この度は何とお詫びを申し上げればいいか……誠に申し訳ない」

深々と頭を下げる。


私達が何と答えようと思っていると、


「まずは改めて自己紹介を……私の名前はカンザキと申します」

軽く会釈する。


私達も、

「私はライラと言います。 ストケシア王国から来ました」


「私はリアと申しますわ」

「僕はマリー」

「ぼ、僕はカンナと言います」


リアとマリー、そしてマリーの後ろから隠れぎみにカンナが挨拶する。


「そうでしたか……みなさんストケシア王国から?」


私達が頷くと、


「それはそれは……遠路はるばる遠い所を……。 そしてそんな貴方方に娘が多大なるご迷惑をお掛けしまして……」


カンザキは申し訳なさそうな顔をしっぱなしだ。

チラリと少し離れた所にいるクレアを見ると、少し頬を膨らませている。


(たぶん、説明したら怒られたか注意されたんだろうなぁ……)


まぁやり方が尋常じゃないしね……指名手配とか睡眠薬とか監禁して拘束とか。



カンナがおずおずと進み出て、


「あの、僕達の方としてはライラに掛けられた指名手配を解いてほしいのですが……」


「勿論です。 まさか娘がそんなことまでしているとは……お恥ずかしい限りです」


厳つい顔をした壮年の男性が肩見狭く謝罪する。




(あ、そうだ……どうせなら……お願いしてみよう)



「あ、あの?」


急に話しかけた私にカンザキが視線を向ける。


「カンザキさんのお仕事ってカタクリの代表者と繋がりがあるんですよね?」



ここカタクリの国は王国制ではない。


市民からの代表制になっており、12人の代表者と1人の最高責任者から成り立つ。

基本的には最高責任者が国の方針を握るが、行き過ぎにならない様にブレーキを掛けるのが代表者達だ。


また、政については全員で足並みを揃えて行う仕組みとなっている。



カンナが署名をもらうとすれば最高責任者の者からだろう。



「あ、ああ。 確かに繋がりがある……と言うよりも、私は代表者の内の一人なのだよ」


「えぇ! そ、そうだったんですか?」


カンザキさんは国の偉い人だったのか……。



「おかげで仕事に追われ娘がこんなことをしているとは知りもしなかった情けない親だが……」


クレアを見るが、当のクレアは腕を組んでぶー垂れている。


ため息交じりにカンザキはこちらに視線を戻すと、


「それで……どうして繋がりを?」



「実は……」

私はカンナの事をカンザキに話す。


ストケシア王国の王子で各国代表者の署名をもらう旅をしていると。



一通り話を聞き終わると、カンザキは腕を組んで考え込む。


難しい案件なのだろうか?

私は不安になりカンナ達をチラリと見る。


三人共カンザキの言葉を待っている様だ。



そんな中、カンザキが重く口を開いた。


「今は……難しいかもしれないな」


今は……?


私達はお互いに顔を見合わせる。

いまいち要領を得ない……。


そんな私達の様子を見ると、カンザキは声を落として私達にだけ聞こえるよう小声で囁いた。


「実はだね。 今、カタクリの国では大変な事が起こっているのだよ」


毎度毎度ありがとうございます!


拙い文章ですが楽しんで頂けましたら幸いです。



【花の名前③】

らいら「ああ……ついに数字までついて……」

りあ 「完全にシリーズ的な流れですのね」

まりー「そんなわけで今回は僕だよ」


マリーの名前はマリーゴールドから。

鮮やかな黄色や橙の花が咲きます。

キク科なので花びらが複数ある上、どんどん咲くので幸せ一杯です。


花言葉は沢山あり、花の色でも変わります。

主に「絶望・悲しみ」等ですが、色によっては「真心・健康」みたいに変わるようです。

気になった方は是非調べてみて下さいね。



では引き続き物語をお楽しみ下さい。


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