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第八十五話 対無表情

若干、残酷シーンでR15です。

ソフト表現だとは思いますが、苦手は人は注意して下さい。


(まずい!)


アンズは只者ではない、このままでは……。



「みんな、先に!」


私はみんなとすれ違い後ろから迫るアンズの前に立ちはだかる。




アンズは私に駆け寄るなり拳を繰り出す!


私がそれを受け止めると、素早く離れつつも蹴りを放って来た!


上体を逸らして蹴りを回避!



一旦距離を置くと、


「降参しろ。 お前は私に勝てない」


相変わらず無表情で抑制のない声。

可愛い顔立ちなだけに人形の様で不気味に思える。



「悪いけど、降参はしないわ」


「そうか……じゃあ怪我ぐらいは覚悟してもらおう」

アンズは手に革製のセクタスを付ける。


手をガードするとともに打撃の威力を増す、シンプルかつ効果的な武具だ。



「いくぞ」

次の瞬間アンズが目の前にいた!!


そして連続して拳が叩き込まれる!!


一撃目は払い、二撃目は後ろに下がりつつ腕で受けた!

後退して威力を抑えたものの腕が痺れる。


追いすがる様に迫るアンズに牽制で蹴りを繰り出した!!


しかし牽制と分かっていたのか、足を受け止めそのまま私の方に押しやった!

私はバランスして転倒してしまう!!


(まずい!)


思う間もなくアンズの拳が倒れた私の顔面に迫る!!


(ええぃ!)


私は胸に巻いているシーツを広げると拳を受け止めた!!

そしてそのまま相手の腕に巻き付けてその腕を捕まえると、


「ええい!」

一本背負いよろしく床に叩きつける!!


「ぐ!」

アンズから短い声が上がるが、すぐさま立ち上がるとシーツを振りほどこうとする。


そんなアンズに更にシーツを被せると、


「華月流 無刃術 鏡花水月」


足払いと胴への二連続回し蹴り!!



まともに食らったようでシーツに包まれたままと吹っ飛んで廊下の壁に激突する!!


そして……それでも倒れない。


次の瞬間!!


スッ


シーツに一筋の線が入り……はらりと落ちる。


そこには腰の短刀を抜いたアンズがいた。

表情は変わらない。

しかししこたま壁にぶつけたのか、額が赤くなっている。


「……邪魔だな。 その手足」



表情は変わらないけど、お怒りの様だ。



スッ!


気付くと目の前にアンズが居た!!


居たのを認識した瞬間下がったが……、



ブシュ!


シーツと腕の一部が裂けた。

血が出てシーツを赤く染めていく。



(……まずい、動きが速すぎる上に刃は受とめられない)


再度アンズがゆらりと動いたと思うと……目の前に現れた!


再び慌てて下がるが、



ピッ


掠める様な音がして髪が切られて宙を舞う。

同時に裂かれた耳から血が噴き出した!!


「っ!」


「……痛いでしょ? 降参する?」


「だ、誰が!」

私が言いかけると、


「でも降参しても止めない……その体に刻んであげる」

再度瞬時に間合いを詰められた!


受け止められず必死に躱す!!


相手の間合いが短く懐にも入ることも危険となる為、下がって躱すしか手はなかった。




シーツが大きく切り裂かれて……腰に巻いた部分を残してバサリと全て地面に落ちる。



「次はそのお腹ね……気を付けて。 深かったら内臓がでちゃうから」


怖い事を感情のない声で言う。



「!?」

今度は目の前ではなく横に現れた!!



躱せない!!


私の血に濡れた短刀が迫り……、


「『聖光障壁セイントウォール』」


光の壁が現れ刃が阻まれた!



予想外の事にアンズが一瞬困惑の表情を浮かべる。


(今だ! 華月流 無刃術 朧月)


アンズに対して縦三ヵ所を狙い拳を繰り出した!


場所は鳩尾、首、鼻!!


バシィ!

ザクッ!!


「!?」


一撃目鳩尾への右こぶしは手で払われて、そして左拳の二撃目を……、



「うあぁぁぁぁぁ!!」


短刀で受けられた。



私の左手から千切れた指がぼとぼと地面に落ちて、なくなった指先から血が迸る!!


私はあまりの痛さに左手首を押さえながら膝から崩れおちた。



「まずは左手」


ポツリと呟くアンズ。



「しっかりしなさいですわ!!  『回復ヒール』」


私の左手が光に包まれる……。


しかしその間にもアンズが短刀を閃かす!


そして正座のように座り込む私の左太ももと右太ももに次々短刀を突き刺した。

座り込む私の両太ももから噴水の様に血が噴き出す!



「もう一回左手と、最後に右手」


私の治ったばかりの左手に刃を向ける!



「『聖光障壁セイントウォール』」


ガッ!!


短刀の刃が障壁に阻まれる!!



そこへ、

「ライラ姉! これ!!」


マリーが私に向かって何かを投げつける。

それは床を転がり私の目の前で止まった。


(私の……剣!)



マリーは『転移テレポート』で一人戻り、私の剣を持って戻って来てくれたのだ。



私は這いつくばる様に急いで剣を拾い上げると、鞘から抜き放しつつ斬りつける!!



しかし鞘から抜くと同時にアンズは距離を取っていた。


「『回復ヒール』」


その間にリアが私の太ももを治してくれる。



「ありがとう、リア」


「飼い主たるものペットの面倒はきちんと見るものですわ」


「……その件はあとで反論させてもらうから」


私は立ち上がると剣を構えた。


ほぼ全裸状態だが構っていられない。

油断出来ない相手なのは十分感じていた。


アンズは短刀を逆手に握り、体の正面で横向きにして構えている。

かなり独特な構えだ。



私が神速を使うのと、アンズが瞬時に間合いを詰めるのがほぼ同時だった。



それで分かった……アンズがどうやって瞬時に間合いを詰めていたのか。


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