第七十七話 指名手配
真っ暗な洞窟を手元の明かりを頼りに進む私達。
松明の炎は時折揺らぎ何処からか微かに風が吹いているらしい。
「みんな、足元気を付けてね」
私の言葉に三人から返事が返ってくる。
洞窟の中は徐々に下っていっている。
気を付けながら進んで行くと……先の方が明るくなっているのが見えた。
(なんだろう?)
どの道分かれ道などはないので、自然と明るくなっている方に歩いて行く事となる。
近寄っていくと、
「え、なにこれ? 壁が……光ってる?」
洞窟の壁や天井が全て仄かに光っている。
灯り自体は眩しいものでもないが、全ての壁や天井が光っているので松明が無くても全然問題なく歩ける。
「不思議だ。 鉱石自体が光っている? いや、これは魔法的?」
マリーが食い入るように壁を見つめては手でぺたぺた触っている。
『鉱石じゃな。 蛍光石と言う種類の石で何らかの圧が掛かると発光するのじゃ』
フェンリルがいきなり割り込んできた。
「おー、フェンちゃん物知り」
カナンが褒めると少し自慢げに、
『伊達に長く生きてはおらぬからのぅ』
声はするが姿は見えず……と、よくよく見るとマリーの鞄から顔だけぴょこんと覗かしている。
こんな可愛い子犬みたいな生き物が神獣と呼ばれる生き物とはだれも思わないであろう。
明るくなった洞窟を歩いて進んで行くと、先の方が開けているのが見えた。
そこまで行くと……。
「おおお!! ひっろ~い!!」
思わず声を上げてしまう。
そこは洞窟の中にも関わらず半球状に大きくひらけている。
天井までもかなり高さがあり……ストケシア城ぐらいの高さがあるだろうか?
直径も1km以上はありそうだ。
ここの壁や天井も全て光っており、まるで洞窟の中とは思えない。
また、広いドーム状の中心部分には建物がいくつも建てられているのが見える。
「ここがカタクリですの?」
「ううん、ここはコムギと言う街みたい」
私は地図を確認しながらリアに教えてあげる。
「ここからいくつか村や街を通ってカタクリに着くみたいだよ。 そこまでずっと地下を通るみたいね」
「じゃあ、それまでお日様見れないのかぁ……」
カンナが残念そうにつぶやき、私も少しがっかりする。
お日様が出て天気のいい日は気分が良いから……暫く太陽が見れないのは寂しいなぁ。
まぁ……何はともあれまずは宿屋で一休みしよう!!
……と思っていたよ? 村に入るまではね。
村に入った……ううん、入る前の段階で予想外の出来事が起こったのだ。
村に入ろうと簡素な門を通ろうとした私達。
そこに立っていた門番二人が私の顔を見るなり、
「お前!! ライラって名前で間違いないな!?」
「え?」
いきなり物凄い形相で尋ねられる。
「は、はい。 あの……それが何か?」
「お前はこの国で指名手配となっている。 大人しく我々と来てもらおうか!」
きつめの言い方でいきなり言葉を叩きつけられる!
「え! えぇ~!!」
いきなりの展開に驚きすぎて意味が分からない!
何でいきなり指名手配!?
「ライラ姉様……いきなり何かしでかしたんですの?」
リアがジト目で見てくるが……、
「いやいや! 何もしてないよ!! 大体この国にだって来たばかりなのに……っていうかみんなと一緒に来たでしょー!」
「まぁ、確かにそうだね。 ライラ姉が何かする暇はなかったと思うよ」
マリーが擁護してくれる。
「何をごちゃごちゃ言っている! お前! 大人しくこっちにこい!」
「ちょ、ちょっと待って下さい! ライラが何をして手配されているんですか?」
慌ててカンナが尋ねると、
「内容は極秘とのことだ。 ただしどこかの商人の娘が探しているとのことで捕縛依頼が来ている」
(ああああ~あいつかぁ!!!)
私の脳裏にお下げの変態少女が蘇る。
「この国有数の取引相手の娘らしい。 そんな娘相手に何をしでかしたんだか……」
呆れたような目で私を見てくる門番。
(いやいやいや! 私がされたんですけどぉ!!!)
……とはみんなの手前言い出せず、何とも言えない表情になってしまう。
「ここまで説明したら心当たりがあるだろう?」
そう言いながら門番は私の腕を掴もうとした。
私は飛び下がってその手から逃れる。
「お、おい! 貴様抵抗するか!?」
「抵抗も何も、私は何もしていないわ! 捕まるなんて嫌よ!」
捕まってクレアに引き渡されれば私は今度こそ逃げられずに体中を弄ばれるだろう…………そんなの絶対嫌だぁ!!!
そうしている間に門番が人を呼ぶ。
「おお~い、例の女がいたぞ! 手伝ってくれ!!」
すぐそこに門番の詰め所があったのか、小さな小屋から武装した二人が走り出てくる。
かくしていきなり四人の門番に包囲される私。
私は心中で叫んだ!
(いきなり一体なんなのよぉ!!!)




