第七十八話 監視追加
門番達にいきなり囲まれた私。
戦うしかないのかなぁ……。
私は諦めて剣の柄に手を当てた。
「ちょっと待つのですわ!!」
突如リアが私と門番達の間に割って入った!
(?)
私がどうしたかとみていると、リアは門番達に、
「ここにいるライラはこれでも剣聖の娘で剣の腕はそれなりに立ちますわ。 恐らく貴方達四人がかりでも捕まえられません」
「はぁ?」
「俺らをバカにするのか!?」
いきり立つ門番だが、私を見る目線が少し変わった気がする。
ちょっと後ずさったり警戒し始めた。
「このまま戦えばお互いに怪我しかしませんわ。 そこで!」
リアがいきなり私の方を向いた。
「要はライラが、その何とかって娘のところに行けばいいのですよわね?」
「……まぁ、そうなるか?」
「そうだな……結局はそちらに引き渡すことになるし……」
門番達がお互いに顔を見合わせる。
「であれば、こちらからそちらに行きますわ」
「えぇ!!」
門番達が驚いたが一番驚いたのは私だ。
「な、なんで!?」
私の問いかけに、
「『なんで?』だなんてわかりませんの? ……全くもって呆れますわね! 私達は国の中心に向かっているのですわよ? このまま指名手配のままですんなり進むことなんて出来ませんわ」
う……た、確かに。
「それにどんな理由があってライラ姉様を捕縛しようとしているか理由もわかりませんし……」
そちらは重々存じ上げております……言えないけど。
リアの提案に私も門番達も黙り込む。
しかし、門番の一人が、
「お前達が約束を守る道理がどこにある? 向かうと言って向かわないとも限らないだろう!」
「……そう思うのであれば、誰か一人見張りを付けて下されば結構ですわ。 ついでに旅の道案内でもして頂きたいですわね」
リアの言葉に門番達の中から一人が前に進み出る。
「……では、こちらから一人付けさせてもらう。 ただし道案内はしないし、ただの見張りとしてだからついていくだけとさせてもらおう」
「……分かりましたわ。 ですがそれならこちらからも極力関わりませんことよ?」
「構わないよ。 こいつは一人の方が向いている奴でね……アンズ!」
門番の一人が名前を呼ぶ……が、誰も来ない。
しかし門番はそのまま話を続ける。
「聞いていたな? お前はこのままカタクリの街までこいつらについて行け。 連絡のあった商家の家までな」
「……分かった」
「!!」
いきなり私の後ろで声がした!
弾かれる様に振り返ると、私のすぐ後ろに小柄な女性が立っている!
「い、いつの間に!!」
私の耳でも捉えられていないし、気配も掴めなかった……。
女性は以前アザミが来ていたような東邦の服を着ている。
ただしアザミとは違い袖も裾も短く、結構際どそうだ。
髪は東邦の出に多い黒、肩までのボブカットにしており、服も黒いため全体的に目立たない格好だ。
ただし肌が凄く白く黒い服のせいでより目立つ様にも思える。
年若く見え、可愛らしい顔立ちではあるが、無表情であり何を考えているかも掴めそうにない。
腰の後ろには短刀を横向きに携えており、刀の長さは短いが抜きは速そうだ。
アンズと呼ばれた女性は、私達から少し距離を取るとこちらに視線を向ける。
離れた所から監視をするようだ。
先程交渉をしていた門番が、
「あいつはアンズと言う名前の傭兵らしい」
「らしい……とは?」
「例の商家の娘だよ。 あいつがここに寄こしてきやがったんだ。 この国に入ると通るのはまずこの村だからな」
(あんの小娘は~! どんだけ手を回しているのよ! 何でそこまで私を狙うかな!?)
クレアに対してちょっと怒りが湧いてくる……文句の一つも言いたいけど、どっちかと言うと会いたくない。
なんか、勝てる気がしないのよねぇ~……。
「じゃあ、とりあえずはそれでよろしいかしら?」
リアの言葉に門番達が頷く。
「あくまで指名手配だから金が入るわけでもないしな……あんたらが自分達で行ってくれるなら、こちらとしては余計な仕事が減るし助かる」
門番達は元の位置と小屋に戻って行く。
後には私達と、少し離れた所から見ているアンズだけとなった。
「ねね~アンズさん。 どうせなら一緒に行かない?」
どわぁ!
いきなりアンズに話しかけているカンナ。
得体のしれない人に不用意に近づくなんて!
私がカンナを止めようと近付く前にアンズが動いた……無言でさっと距離を取る。
どうやら馴れ合いは嫌いらしい……カンナが少し残念そうな顔をしてこちらに歩いて来た。
「なんか嫌みたい」
カンナが寂しそうに私に告げる。
うん……見てたから分かるよ……。
私は無言でカンナの頭をポンポンして慰めた。
ひとまず門番達とのやり取りは終わったし……ここでこのままいる訳にもいかない。
「やっと村に入れるし、とりあえず宿に行こうか?」
私はそう促し歩き出した。
その時フェンリルが私達に話しかけて来た。
いつの間にか鞄の中に丸々引っ込んでいる。
『あのアンズと言う娘、嫌な感じがするのじゃ。 十分に警戒しておいた方が良いかもしれん』
その言葉に私はチラリと目の端で確認する。
特に変わった様子はなく一定の距離を置いて私達の後をついてきている。
しかしやはり無表情であり不気味さを感じるのであった。




