第七十二話 軋轢感情
「カンナ、シルベル女王から署名頂いた?」
私が尋ねるとカンナは大きく頷く。
「じゃあ、大丈夫かな? よっし! 次の国を目指していこう!」
「次はどこを目指しますの?」
「スノーフレークの東側、地底の国カタクリかな?」
「地底の国?」
「そう、連なる大きな山脈の地下に大きな空洞を開けて、そこに住んでるみたいだね」
(……なんか本にそう書いてあったけど)
「へ~なんかすごいねぇ」
みんな興味津々らしい。
まぁかなり変わっている国ではありそうだ。
女王と和解した私達は城に何日か泊めてもらい、次の国目指して出発することにした。
いやぁ~参ったわ。 お城にいる間シルベル女王がカンナに猛アプローチ掛けてくるもんだから気が気じゃなかったわ……人って変わるものなのねぇ。
スノーランドの魔法陣から街の外へ出る。
ここからひたすら東を目指せば地底の国カタクリに着くだろう。
「カンナ王子!」
いきなり目の前にシルベル女王が現れた!
いくら『転移』出来るからって気軽に来過ぎじゃない!?
「もうお別れだと思うと居ても立ってもいられなくて……」
頬を染めるシルベル女王。
この一週間でここまで変化するというのか……。
「ええと、いえいえ、ありがとうございました。 また会いに来ますね」
流石のカンナも戸惑い気味だったが、再会を告げるとシルベル女王の顔が喜びで溢れる。
うぅ……これってますます惚れちゃうんじゃない? 心配だわ。
何度も別れを告げて、ようやくシルベル女王から解放される。
私達は旅を再開したのだった。
スノーランド周辺はずっと荒野が続いている。
その真ん中を街道がどこまでも続いている感じだ。
「あ、これ美味しい!」
私はお土産にもらったチーズクッキーを齧りながら歩いていた。
「ライラ姉様、もしかして歩きながら食べているんですの?」
リアがじろりと私を睨む。
「う、だ、だってお腹すいたんだもん……」
「仮にも王女なのですよ? 何てはしたない!」
リアが大げさに空を仰ぎ見る。
「カンナはこんな礼儀のない人を結婚相手に選んではいけませんよ?」
「!?」
リアが私を指し示しながらカンナに話しかける。
「そ、それとこれとは違うんじゃない!? た、確かに行儀悪かったかもだけどさ」
「でも、ライラ姉は日頃から行儀が良くない」
ま、マリーまで……!
「そ、それを言うならリアだって日頃から口悪いでしょ! マリーだって何考えているか分かんないし!」
「な、わ、私は別に口悪くないですわよ!」
「別に考えている事を言う必要はないはず。 ライラ姉横暴」
「だ、だっていつもいつも私ばっかり!」
何故だろう……色々落ち着いたからなのか、それとも日頃から溜まっていたのか……その時の私は止まらなかった。
「大体私が年上だからって考えてるのに、二人は任せるだけ任せて全然協力してくれないじゃない!!」
「そんなことはございませんわ」
「被害妄想」
被害妄想とか……私が悪いみたいに!!!
「ふざけないでよ!! 何が被害妄想よ!! いっつも私が行先決めて、交渉も全てして、お任せしている癖に失敗したら私ばっかり責めて!!」
カチンと来てしまったのか、二人に対して怒鳴りつけてしまう。
「ら、ライラ……」
私達の様子を見ながらカンナがオロオロしている。
でも、その時の私はそんなカンナも目に入らなかった。
「確かに私は魔法使えないし、そんなに頭良くないし、礼儀もあんまりなってないかもだけど、だからってカンナに選ぶなって言うのはあんまりじゃない!!」
「選ぶなとは言っておりませんわ。 結婚相手に選んではいけないと言っただけですわ」
「一緒じゃない!! いっつもそんな上から目線で!!」
「ライラ姉言い過ぎ」
マリーが言葉を挟むが、それでも私は止まらない。
「またそうやって私ばっかり! ふ、二人して!!!」
何だかわかんないけど悲しくて悔しくてイライラして……私の頭の中はぐちゃぐちゃだった。
ただ、なんで私ばっかり……否定されてばっかり!!
何故か涙が溢れる……目を瞑り腕でゴシゴシ涙を拭くと、
「も、もう良いわ! 私みんなから離れて歩くから……カタクリで合流しよう」
私の提案にびっくりしたカンナが、
「ええ、ライラ別行動するの?」
「……ごめんなさい、カンナ。 でも私こんな二人とは……」
カンナの悲しげな顔に心動かされる。
しかし、
「分かりましたわ。 別にライラ姉様がいなくても支障はありませんもの。 どうぞお先に」
リアの一言でまた炎が燃え上がる。
「っ! 分かった!! それじゃあね!!!」
叩きつける様に言うと私は駆け出した!!
もうあの二人なんか!!!!
大っ嫌いだ!!!!




