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第七十話 牢屋脱出


「くっそ~! あのおばさんめ!」


私は牢屋の壁を殴りつけた!!


いったぁ!!!


「つぅ~~」

私は手を押さえてしゃがみ込む。


「何をおバカなことやってらっしゃるの」

リアが冷めた目で見てくる。



いや、だって感情の昂ぶりが抑えられなかったんだもん……。



「……ふむ、この牢屋の鉄格子や壁は魔法無力化が掛かってるね」

私がアホな事をやっている間にも、マリーは色々調べていたようだ。


「魔法を無効化って事は『転移テレポート』とかは……」


「使えないね」

あっけらかんと返事するマリー。


「魔法自体は使えるけど、格子や壁には無効化される」


「じゃあ、バーンって魔法で壊すとかは?」


「出来ないね」


「そんな……それじゃあどうやって……」


「……ひとまず今すぐ動くのは得策じゃないよ」

マリーが地面に座り込む。


「そんなこと言っても急がないとカンナの……」


「大丈夫。 シルベル女王が言ってたでしょ? 三日後の国立記念日に統合するって……恐らくその前の晩か当日にカンナと契りを交わすつもりだと思うよ」


「む~~あんな下品なおばさんにはカンナは絶対やらせないんだから!」


『「やらせない」などとはなかなかストレートな物言いじゃのう』

いきなりフェンリルが会話に参加してきた!


そういえばマリーの鞄に入ってたんだったわ。


「とりあえず、今は僕達が捕まった直後だから警戒していると思うし、建国記念日の前の日や当日も警戒が厳しいと思う」


「じゃあ……?」


「ここから出るのは明日の夜が狙い目。 それまでは体を休めておくべきだと思う」


「ここから出るって……出られるの?」


(魔法は封じられているし……私が斬るのかな?)


「ライラ姉、鉄格子斬れる?」

丁度私が考えている事をマリーが聞いて来た。


「ちょっと待ってね」

私は鉄格子を調べてみる……太さや鉄柱の状態……中が空洞なら三斬華で斬れるだろうけど……。


「う、ちょっと厳しいかも」

鉄柱は中までしっかり詰まっている。

支えている部分もかなり頑丈だ。


「何回って打ち込めば行けるかもしれないけど……ちょっと想像できないかも」


「では……別の手で行くよ」

私の返事にどこかを見つめたまま答えるマリー。


その視線を追うと……牢屋の奥の方に小さい部屋があり、中には警備の兵が詰めている。

そしてその壁には……子窓越しに鍵が掛けられているのが見える。

牢屋ごとに分かれてはいるが……。


「もしかしてあの鍵を取るのかしら?」

私が考えている質問をリアがマリーにしている。


しかしマリーは首を振ると、

「ううん、流石にあれは無理……あの部屋には扉もあるし、フェンリルでも取りに行くのは難しいかも」


『大暴れして良ければ余裕で取れるがの。 まぁ暴れるぐらいならこの牢屋ごと破壊してやるのじゃ』

ぴょこっと鞄から顔を出すフェンリル。


「まぁ……それは最終手段という事で」

私が言うと少しつまらなそうな顔をして鞄にもぐりこんでいった。


「で? 手はありますの?」

私の剣もフェンリルも駄目となると……という事だろう。


「僕に考えはあるけど……もし駄目だった場合はフェンリルにお願いするよ?」


『任せるのじゃ! 思いっきり暴れてやるのじゃ……ふっふっふ』

再び鞄の中から顔だけ出して嬉しそうに顔を振るフェンリルだった。






次の日の夜。



カ……チャン


小さい音が静かな牢に鳴り響く。

余りにも小さい音に、詰め所に控える兵士達には聞こえなかったようだ。


「開いたよ、ライラ姉。 後は兵士達をお願い」


マリーが牢屋の扉を少し開けて私に見せる。

その手にはカギが握られていた……それは本物の鍵ではなく布で包まれた鍵。


中身は氷で出来た鍵であった。



マリーはフェンリルにより、封印された魔法を含めていくつかの魔法を覚えていた。


神の系統であるフェンリルは水と氷を司る。

ちなみに神龍は雷と光、神鳥は炎と風、神人は地と金を司っている。


それゆえマリーは氷の魔法もいくつか習得していた。


そして出した氷を使って作ったものは三個。

一つは鍵。


そしてもう二つは凸レンズであった。

大きなレンズと小さなレンズを組み合わせて即席の望遠鏡を作り、詰め所内にある鍵の形を覚える。


後はそれに合わせて氷の塊を削り鍵を作り出してそれを布で覆って鍵を開けたのだった。

ちなみに布で覆ったのは、氷だけだと魔法無効化で消されてしまうから……だそうだ。


マリー曰く、対魔法や格子自体は頑丈だったけど、鍵は簡単な作りだったとの事。

そうだとしてもね~マリーって器用だわ。



「何?」

私がじっと見ていると何かあるのかと尋ねて来た。


「ううん、ひとまずあそこの兵士達を黙らせてくるよ」

私は首を振って静かに牢屋を抜け出る。


私は小部屋に忍び寄るとドアを素早く開き兵士達を気絶させる。

不意打ち気味だったのであっさりだった。




「じゃあ、カンナを探そう」


「場所なら私が掴んでおりますわ」

既にリアが祈りを捧げてカンナの居場所を掴んでいたらしい。


「じゃあ、行こう! カンナを取り返すよ!」

私の声に二人が頷く。


そして牢屋が並ぶ部屋から、扉を開けて外へと出たのであった。


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