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第六十五話 小犬神獣


その生き物を見た瞬間、私達四人が一斉に声を上げた!


「「「「可愛い~~!!!」」」」


その声に小さな生き物はビクッとして固まる。


「なんだろー? これふさふさしてワンコみたい!」

「尻尾も膨らんでてなんかモフモフしたい!」

「可愛いですわ! 抱っこしても宜しいのかしら?」

「僕もなでなでしたい」


興奮する私達だったが……。


『うるさいのじゃ! ピーチクパーチク小娘共が囀り寄るでないのじゃ』


それは突如頭の中に響いた。

声……とは違う、唐突に頭に聞こえてくるという様な……そんな感じだった。


私以外の三人も黙り込む。


「え? もしかしてみんなも?」


「え、ええ、私も声が聞こえましてよ」

「僕も聞こえた~声って言うより直接話しかけられたような」

「僕もそうだね。 魔法的な力かも知れない」


私達が自分達の身に起きたことを言い合っていると。



『ふむふむ。 そのと~りなのじゃ! 吾輩はお主等の頭に直接話しかけておるのじゃ!』


「!?」

私達四人が顔を見合わせる。

そして、


「ど、どこから?」

「誰なの~?」

「姿を見せなさいな!」

「……」


四人で辺りを見回すが……誰もいない。



『お主等はバカなのじゃ? この流れでそれはないじゃろう……』

呆れたような声が響き、


「じゃあ、やっぱり君なのかい?」

マリーは……気付いていたようで、その青いワンコに話しかける。


『勿論そうじゃ。 吾輩はこの神殿に封印された魔法を守護する神獣フェンリルなのじゃ』


フェンリルと名乗ったワンコが誇らしげに胸を張った……様に見える。


「あの……」

私はおずおずと手を挙げると、


「神獣ってなんでしょうか?」

ワンコに向かって尋ねてみた。


だって……神獣って言われても聞いたこともないしなぁ……。


『のじゃ! ……そ、そんな、神獣の事はこの世界で忘れ去られているのじゃ?』


あら? ふさふさの尻尾が力なく項垂れたわ。

かなりショックだったみたい。


「ライラ姉……」

マリーが呆れる様な目を私に向けると、


「神獣って言うのは、この世界に数多くいる神様の一種。 神獣だけじゃなくて、神龍、神人、神鳥とか色々種類がある」


マリーの言葉に気を取り直したのか、


『おおー! 神獣の事を知っているとは……お主はなかなか見どころがあるのじゃ』

今度は尻尾が激しくブンブン振られる……やっぱりワンコじゃない?これ。


『さて、吾輩はここに封印されし魔法を守る守護者じゃ。 吾輩が起きたという事は……』

フェンリルの目が鋭くなる。

……って言ってもまだワンコの様で可愛いが。


『誰ぞ封印されし魔法を望むのじゃ?』



フェンリルの質問に、マリーが進み出る。

「僕だよ。 フェンリル」


フェンリルが細くなったままの目をマリーに向ける。


『ほう、見どころがあると思ったお主なのじゃな……。 準備は良いのじゃ?』


「うん」


『では、まず場所を変えるのじゃ』


ワンコの様なフェンリルが一声鳴いた。


「きゅぃ!」




「!?」


一瞬で場所が変わる!!

いつの間にか私達は巨大なコロシアムの中にいた。


円形上のコロシアムで中央には闘技場として円形の場所がある。

その周囲をぐるりと観客席が囲んでいる様な形だ。


空は雲もなく青い空が続いている……太陽は見えないが暗くはなく昼の様な明るさだった。



『ここは現実世界ではないのじゃ。 言わば精神世界の様な物じゃ』



私やリア、カンナは客席側……そしてマリーはコロシアムの中央でフェンリルと向かい合っていた。



『さて、マリーとやら。 お主が魔法を手にするに値するかどうか……見極めさせてもらうのじゃ!』


「……具体的には?」


『簡単な事じゃ、吾輩と勝負してもらうのじゃ』


「戦えって事?」


『端的にいえばそういうことじゃ』

それを伝えた瞬間……子犬の様だったフェンリルの体が光り輝き……そして大きくなっていく。



私はあまりの眩しさに腕で顔を隠す。

そうして……光が収まったその場所には、大きな狼の様な姿をしたフェンリルが立っていた。



大きさとしては家二軒分ぐらいだろうか?  

四足で立っているが、それでも高さは三メートルぐらいありそうだ。


ふさふさの毛も青白い毛色も変わっていないが、狼の様に鋭い目つきとずらりと並んだ牙は見る者を圧倒する。




そしてそんなフェンリルを前にしたマリーは……。


「もう始めてもいいの?」

フェンリルに対していつもと変わらない様子で尋ねる。


『ほう、吾輩の本当の姿を見ても臆せぬのじゃな?』


「……」


マリーは返答をせず、フェンリルに背を向けて距離を取る。

そして振り返ると杖をフェンリルに向けた。


「……」

闘技場の上で向かい合う。



時間が過ぎる……どちらも動く気配がない。


「……いいの? 仕掛けて」


『いつでも良いのじゃ』




「わかった。 『火炎ファイヤ』」


突如マリーが仕掛けた!!


マリーから放たれた火球がフェンリルに向かって飛んでいく!



ペシッ!!


フェンリルはそれを前足ではたき落とした!!

火球が闘技場の石畳に叩きつけられて弾け飛ぶ!



フェンリルが目を向けると……マリーがいない!




「『雷撃サンダー』」


フェンリルの右側から雷撃が飛来する!

マリーが火球を囮にして移動し、そこから魔法を放ったのだ。


しかし……、


ペシィ!!


フェンリルの尻尾が素早く動いて雷撃を弾き飛ばす。


『ふむ。 なかなかいい動きじゃの。 さぁ、どんどん仕掛けてくるのじゃ』


そう告げるとフェンリルはその鋭い目をマリーに向けるのだった。


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