第六十四話 古代神殿
旅を続ける私達はスノーフレークの首都であるスノーランドを目指していた。
その為ユーフォルビアの街を出てバラバラの森を通っているところだった。
森自体は深く茂っているが、その中を通る街道は荒れてもなく普通にあぜ道であり歩きにくくはない。
また気候も暑すぎず寒すぎずで丁度良かった。
そもそもスノーフレークの気候は温暖でテッセンと違って暖かい。
昨夜魔法兵団と戦いその後明け方に街を出たので今は昼過ぎとなっていた。
そして天候は快晴……ポカポカ陽気のおかげで眠くて仕方がない。
実際歩きながら寝ていたカンナは私が背負っている。
本人は少し抵抗していたが……まぁ眠ってしまえば無抵抗だしね。
スヤスヤ眠る王子は……どう見ても十歳ぐらいのお子様か、もしくはマリーと同じぐらいの少女のように見える。
本当は十五歳の大人なんだけど……そんな感じないなぁ~。
まぁ可愛いから良いんだけどね! 私はこっちの方が好きだし!!
背負うのも幸せだけど……その柔らかそうな頬っぺたぷにぷにしたいです!
そんな(ちょっと邪な)考えをしながら歩き続ける私の耳に、大勢の人の足音が飛び込んできた。
「リア、マリー。 隠れよう!」
私はそう言うと街道から外れて傍の茂みに隠れる。
リアとマリーも私に習って側に隠れた。
こういう時は特に反論もせずに従ってくれるので助かる。
暫くすると、木々に覆われた先の道から多くの兵士達が現れた。
どうやらスノーランドからの増援の様で、この前の魔法兵団だけでなく剣や槍を持つ兵も見受けられる。
ざっと見た所二百人程度だろうか?
(私達を捕まえる……というより捜索の為に多く派遣されたみたいね)
街を取り囲んでいる兵と併せて、街中をローラー作戦するつもりかもしれない。
(危なかった……今朝出ていないと鉢合わせたか、街で捕まっていたわね)
兵達が通り過ぎるのを待つ……しかし予想外の出来事が起こった。
見ていると街道沿いにチラホラ兵が残っている。
『どうやら街道の見張りで兵を配置しているみたいだね』
マリーが私に後ろからコソッと話しかけて来た。
『ううん……これは困ったね。 どうしようか?』
私が返答し思案していると、
『この調子だと他の場所にも兵がいるかもしれないし、街道は諦めて森の中を通った方がいいかも』
私は少し思案したが、兵達もいついなくなるか分からないし、何より街に私達がいなかった場合スノーランドへの街道を捜索する可能性もある。
『そうだね。 じゃあ、森の中を通ろうか』
マリーの案を採択し、みんなで街道から離れて森の中に入って行った。
そして森の中を進む私達は変な遺跡を見つけたのだった。
「なんだろ? あれ」
最初に気付いたのは前を行く私だった。
森の中に建物らしきものが見えた。
何となしに行ってみると、
「おおお!! これは……」
マリーが目を輝かせる。
それは石で出来た神殿やら祭壇?やら建物やら……つまり古い遺跡だった。
大きな石を四角く切り出し積み上げて作られている。
風化してボロボロになりつつも、大部分はその姿を保っていた。
珍しく興奮しているマリーがダダッと遺跡に駆け寄っていく。
「ああ! マリー危ないよ!?」
私が言うが……どうやら耳に入っていない様だ。
すでにあれこれ見て触って調べている。
私とリアも崩れたアーチをくぐり遺跡の中に入っていく……。
草が辺り一面に生えており、建物を構築する石にもコケやら蔦が張り付いていた。
正面に神殿、その前に祭壇?の様な物、左右には小さい建物がある。
扉は無かったのか……それとも壊れたのか全ての入口が口を開けている。
私はカンナを背負い直すと……っていうか、まだ寝ているのね。
左の建物に入ってみる。
リアも私についてくるようだ。
部屋の中は薄暗くガランとして何もなかった。
窓はなく、私達の入ってきた入り口から差し込む光が室内を辛うじて照らしている。
建物を出ると右の部屋にも行ってみる。
しかしそちらも何もなかった。
昔は色々置かれていたのかもしれないが……盗賊などに取られてしまったのだろうか?
部屋を出て祭壇らしきものを見る……ただの台座の様だが文字が彫られている。
「う~ん、読めないなぁ」
初めて見る文字で全く読めない。
後ろからリアがのぞき込みながら
「私にも読めませんわ」
私もリアも読めなかった。
マリーはどうだろうか?
「古代文字かな?」
「そうかもしれませんわね」
「……生贄を……」
「!?」
いきなり背後から声がして驚いたが……カンナだった。
どうやら目を覚ましたようだ。
「カンナ、これ読めるの?」
「うん……あやふやかもしれないけど。 城の書籍にこの文字の本あったから」
(なにそれ、王子すごい!)
本があってもその内容まで覚えているなんて……。
カンナは私の背から飛び降りると、トトッと台座によって文字を目で追い始めた。
「う~んと、……生贄を……捧げよ……封印?かな? ……知識の……あ違うかな? 英知かも」
カンナが少しずつ読んでいく、
「守護者が……怒る……起こる? ううん、どっちかな?」
台座の文字を読んでいくカンナ、その金髪が陽光を受けてキラキラと輝く。
瞳にも日が当たりエメラルドグリーンに煌めく。
……絵になるなぁ。
「えっと、あのね」
読み終わったのか私達の方を向くと、
「この神殿には古代の英知が封印されているみたい生贄を上げることで封印が解かれるみたい! でね! 封印を解いた場合、守護者って言うのが起きるみたい」
カンナが説明した瞬間、
ゴゴゴゴゴ……
地響きのようなものが鳴り響き始めた。
「え、ええ!?」
「な、なんなのですわ?」
慌てる私達にカンナが指さした。
「神殿!」
カンナに言われて神殿の方を見ると、神殿の入口から青白い輝きが溢れている!!
「な! 一体何が!」
私達が神殿の中に駆けよると……。
「ま、マリー?」
神殿の中は広く空いており、その真ん中には大きく青白い魔法陣が光輝いている。
そしてその魔法陣の中心には……マリーが立っていた。
「マリー! これはいったい……?」
床からの光に照らされたマリーの表情は苦しそうだ。
私は慌ててマリーに駆け寄ろうとする!
「来ないで!!」
マリーから鋭く叱責が飛ぶ。
「僕なら……大丈夫。 少し魔力を取られているだけだから」
「と、取られているって誰に?」
「封印」
「ええ!!」
私達の会話を聞いて、カンナがハッとすると、
「生贄って……もしかして魔力?」
……どうやらマリーも古代文字が読める様だ。
この部屋にも色々書いてあってそれを読んで紐解いたのかもしれない。
そしていると……徐々に魔法陣の光が収まり……魔法陣は消えてしまった。
そしてマリーは、
「っ!」
その場で片膝をつき、息を荒くしている。
「マリー!」
私達がかけよると、マリーは手で制止して、
「だ、大丈夫。 全部は持っていかれなかった」
恐らく魔力の事だろう。
「で、でも何で魔力を?」
「ここには古代の魔法が封印されているみたい。 だから僕は……」
マリーがそこまで言った時、
ゴソ……
不意に神殿の奥で何かが動く音がした!
私以外にもその音が聞こえたのか、みんな揃って神殿の奥を見る。
薄暗い中うっすらと円い台座が見え……その上に何かがいた!
それは……台座からピョンと飛び降り……こちらに歩いて来る!!
私達が固唾を飲む中……寄って来たそれが……入り口からの光に照らされた!
「きゅい?」
小首を傾げてクリっとした黒い目が私達を見上げる。
青い色をしたふさふさの毛に覆われた……子犬の様な子狐の様な生き物がそこにいたのだった。




