第五十四話 白煙之術
(相手をよく観察して……)
私は息を整えつつアザミの様子を伺う。
不敵に笑ってはいるが、体からの出血は認められるし、それなりにダメージもある様に見える。
そして私はもう一つ仕掛けていた。
それは……、
アザミが動き出そうとして戸惑いを浮かべる。
「これ……は?」
アザミにつけられた体中の傷。
その場所が凍りついている。
私の持つ青い剣……アイスブレードと言うらしい……による効果だ。
これによりアザミは動きづらくなるはず……。
「……なかなかやってくれるわね!」
アザミが苛立つ様子を見せる。
そして懐に手を入れた。
(またクナイ?)
警戒する私であったが、取り出したのはいくつかの玉であった。
大きさとしては一個卵程度だろうか?
そしてアザミは私に向かって、
「やりようは色々あるのよ!」
そう言うなり私の周囲にその玉をなげつけた!!
ボボボン!!
一気に全ての玉が破裂して私の周りが一瞬にして白い煙に覆われる!
(もしかして毒ガス!?)
直ぐに腕を鼻と口に当てて息を止める。
そうして煙が晴れるのを待つ。
しかし……。
(煙が晴れない!?)
いつまで待っても煙が薄れない。
すると煙越しにアザミの声が届いた。
「安心してこの煙は毒なんかじゃないわ。 ただの煙幕よ」
「ただしー」アザミが笑いながら続ける。
「この煙はしばらくわ晴れないわよ?」
その言葉が終わるや否や風を切る音がした!
「!?」
とっさに身をよじったが、肩に鋭い痛みが走る!
見るとクナイが左方に深々と刺さっていた。
クナイか飛んできた方を見るが……煙に遮られ何も見えない。
私は周りを見回すが、煙の切れ間はなく白い煙が一面漂っている。
シュ!
背後から再び風斬り音がした!
直ぐに避けたが腕と脇腹を掠める!
(このまま煙の中にいるとマズイ)
私は煙の中から抜け出そうと適当に走り出す。
(何処か一方に走れば!)
ヒュン!
走り出す私の目の前、煙の中からいきなり刃が現れた!
「わわっ!」
急停止して仰け反った私の前髪が数本舞い散る!
刃は直ぐに煙の中に消えていった。
(こっちにはアザミがいる)
私は身を翻して反対方向に走り出す!
シュ!
再び風斬り音!
足を止めた私の太ももをクナイが掠める。
足を止めないとまともに刺さっていただろう。
(これはマズイ……考えるのよ)
私はその場にしゃがみ込んで聞き耳を立てる。
……アザミの足音は聞こえない。
しかし、
シュ!
風斬り音がした!
冷静になった為か、今までより方向がわかりやすく音を拾いやすい。
私はすぐに反応して回避する。
私を掠めたクナイが地面に突き刺さった!
その時、私の耳が微かな音を拾った。
それは氷の擦れる、そして割れる音。
(そうだ、アザミの足音は聞こえないけど、体についた氷の音なら……)
クナイを躱された為か、場所を移動しているようだ。
私はそっと立ち上がると地面に刺さったクナイを抜いて……。
アザミがいるであろう方向に走りながらクナイを投げつけた!
クナイを牽制にして私は煙の中を突っ切る!
キン!
「きゃ!」
走る私の耳に金属音とアザミの悲鳴が聞こえた。
いきなりのクナイを悲鳴を上げつつも何とか弾いたようだ。
その声がする方、そちらに走りながら剣を繰り出した!
バッ! と言うような感じに煙の中を飛び出す!
すると、見えてきたのは驚愕の表情を浮べるアザミ。
私の剣はそのままアザミを捉える!!
刃を止める!
アザミの首まで数センチと言う所だった。
「う……嘘」
アザミは未だ信じられない様な表情をしている。
「私の勝ちのようね?」
私の声に悔しそうに口を曲げて……。
「う……うぅ、うえ〜ん!」
え、ええ!? なんか泣き出した!!
「悔しい〜! こんな頭チリチリの奴に負けるなんてぇ!」
ぐっ! こ、この! 頭チリチリで悪かったわね!
私は顔を引つらせながらも、
「ま、まぁ、貴方凄かったわよ? 私の奥義も耐えたし、足音なんて全くしないし」
私が褒めてやると、グズりながらも、
「ふ、ふん! あ、アンタなんかに褒められても!」
そっぽを向く。
うわぁ……なんかリアに似てるわ。
アザミはしゃくりあげつつも、
「あんた……なんで私の居場所わかったのよ?」
「その氷。 それが擦れたりして音が出てたのよ」
「えぇ! なんて姑息な……」
「姑息って……あんただって煙幕とか使ったでしょうに!」
「うるさいわね! 私のこれは技だし!」
そうやって私とアザミが言い合いをしていると……。
ボカ!
バシィ!
私とアザミの頭が叩かれた!
かなり痛い!
「痛ぁ!」
「ぎゃん!」
私とアザミが頭を抑えてしゃがみ込む。
うぅ〜何なのよ一体?
見るとリアが杖を構えていた。
顔は微笑んているが……少し青筋出てない? お怒りっぽい。
「貴方達は戦いが終わってからも何をしてらっしゃるの! しかもそんな大怪我で!」
私とアザミがお互いを見る。
アザミは全身傷だらけで血が流れている上、数カ所は凍ったままであった。
私も肩には深くクナイが刺さったままで、数カ所切り傷がついている。
お互いにそれを見て、ふにぁと座り込むを
あいたた……今頃痛くなって来たわ。
「全く!」
ブツブツ言いながらもリアが私とアザミの傷を治してくれる。
「なかなか良い勝負だったよ」
「ライラカッコよかった! おめでと!」
マリーとカンナも近寄って来て私に言葉をくれる。
「ありがとう。 カンナのおかげですよ」
私はカンナに笑いかけると、カンナも笑い返してくれた。
いやぁ〜それだけで痛みとか疲れ無くなるわ。
カンナ素敵!
傷が治ったアザミは照れながらもリアにお礼を告げる。
そして私の方を向くと敵対心むき出しの目で、
「今回は負けたけど、今度は負けないからね! 覚えてなさい!」
そう言って走り去っていった。
だから何で私あんなに嫌われてるのよ!?




