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第五十話 質実業剣


「ぐえ!」

何かが潰された様な声を出して、男が地面に横たわる。


数名いた男達は気が付けば残り一人になっていた。

他の男達は全員気を失っている。



「さ、て、と」


私は残った男に向き直る。


男は化け物でも見るような目を私に向けて後ろに後ずさる。

手にはナイフを持っているが……見てわかる程震えている。


「あら? そんなに怖がらなくてもいいのに? お話さえしてくれればいいんだから」

私は一歩ずつ男に向かって歩いて行く。


男の手からナイフが滑り落ち地面に転がった。


(そんなに怖がらなくても……ちょっと数人まとめてぶっ飛ばしただけなのに)

男は崩れる様に膝まづき、


「わ、分かった! 話す。 話すから」


「うんうん、良い選択だと思うよ」

私は男の側にちょんとしゃがむと、


「で、誰に頼まれたのかな?」


「冒険者だ。 冒険者の女で派手な……ぐあ!」


ゴッ! という音と共に、男が急に叫び声を上げて倒れる。


そしてコロコロと拳ぐらいの石が転がった。

どうやら石が飛んできて後頭部を直撃したようだ。


(まぁでも……)

冒険者で派手な女性って言えば……あれなんだろうなぁ……。


聞いていたリアもマリーも察したらしい。

カンナは不思議そうな顔をしている。


どうして男が気絶したのかわかってない様だ。



「ごめん、お待たせ。 晩御飯に行こう」

私が言うと、


「ほんと、貴方って面倒なのに絡まれますわね」

リアが呆れる様に言うと、


「好かれたり嫌われたり……ライラ姉も忙しい」

マリーもぼそっと呟いた。


(うぅ、私のせいじゃないのにぃ~)





「美味しかったねー!」

カンナが満足そうに私を見上げている。


(その笑顔も可愛い。 心に刻み込もう)


「鳥尽くしでしたわ……私はもう少しお野菜が欲しかったのですけど」

肉が苦手なリアにはいまいちだったらしい。


「なかなか興味深い鳥でした。 手羽先は小さく、代わりに足の部分が大きく発達していて……」

……マリーは人とは違う感性を持っている様だ。


私達は腹ごなしも兼ねて武器屋を目指していた。


別に明日でも良かったのだが、意外に遅くまで開いているようで、それならばーと向かっていた。


カンナも見たいといって釣られる様にリアとマリーも付いて来た。


ちぇ! カンナと二人きりが良かったのに!

それってデートみたいで……で、デート!! ああ、デートだなんて!!


私は恥ずかしくなって一人身悶える。



「うわぁ……何あれ? 呪い?」

「いえ、恐らく悪魔が乗り移ったのですわ」

「ライラ……おかしくなっちゃったの?」



「あっ……」

我に返ると三人が少し離れて他人のフリをしていた。

くねくねする私の奇行に恐怖を感じたらしい。


ああ、カンナまで……。


と、

「あ、ここだわ」

気付くと武器屋の前に着いていた。


今だ離れている三人に、

「ほら! 着いたよ? いつまで離れているのよ」

声を掛けて店に入る。



ガランガラン……古めかしいドアを開けると、上部に付けられた鐘が喧しい音を立てる。


中には剣や槍や斧など、多くの武器が乱雑に置かれている。


奥の方にカウンターがあるようだ。



そちらに歩いて行くと……カウンター付近は整理されていて、壁に丁寧に武器が掛けられている。

入り口付近のが大量生産の安物で、こちらが高価なものらしい。


カウンターの上には武器を手入れする小物が大量に並べられている。


そしてカウンターの内側には、一人の中年男性がパイプをふかして座り込んでいた。

頭が薄くなりつつあるが口の周りには立派な髭を蓄えている。

丸眼鏡をかけており、その視線は手元の新聞に向いていた。



(勝手に色々見ていい感じかな?)



ドアベルが鳴ってカンナ達も入ってきた。


入り口付近の武器をキョロキョロ見ている。


ちなみに、リアもマリーも杖を持っておりこういった刃物の武器は使わない。

むしろ聖職者のリアは持つこと自体も禁じられている。


……はずだけど、そこら辺の剣を持ち上げて掲げている。


まぁリアはなんちゃって聖職者だから!


……本人が聞いたら怒りそうだけど。




私は壁に掛けてある剣に目を移す。


……ん~。


私は剣を見る目はない。

ただデュランダルを触っていたせいか、ここら辺の剣は全てなまくらに見えてしまう。


良い値段がする剣も持ち上げて見て見ると、なんかいまいちな気がする。


私の雰囲気が伝わったのか、パイプをふかしていた店員……店主? が、


「良い剣はないか?」


「あ、すみません」

店のものにケチをつけたって思われたのかな?


「いや、ここにある剣が『良いもの』って言うなら、そいつは駄目だな」

そう言うとカウンターの下から剣を数本取り出した。


「これならどうだ?」

私は手に取ってみる。


これは……バランス悪い。

これは……握りが良くない。

これは……少し短いかなぁ?


結局出してくれた剣も合わなかった。


「そうか……お前さん、剣は初めてか?」


フーっと煙を吐きだしながら店主が尋ねる。


「いえ、前使っていたのが色々ありまして……」


「成程な……だったら、余程良い剣を使ったんだろう」

そう言いつつ……奥にある引出し……鍵が掛かっていたのを開けて、二振り剣を持ってきた。


「これならどうだ? ただし値段はそれなりにするが」


出された剣は不思議な感じがする剣だった。


一振りは刀身が青白くほんのり光っている。

ロングソードの類ではあるが、重量もそこそこ、切れ味も良さそうに見える。

手にもしっくりくるし、剣を持った時のバランスも良さそうだ。


もう一振りは鈍い光沢を放つ金属で出来ていた。

鉄などではなく何か不思議な感じがする。

以前使っていたデュランダルと同じ材質にも思える。

こちらも先程の剣と負けず劣らず良さそうな剣だった。


「……これは、どっちも素晴らしいですね」

私が感嘆と共に告げると、


店主は満足そうに頷き、

「これはかなりの業物だ。 青白い方は冷気の魔法が掛かっている」


「冷気の魔法……ですか?」


「ああ、切った個所を凍らせる魔法だ。 ちなみに液体に触れさせるとその液体も凍る」


さすが魔法の国……武器にも魔法が掛かっている。


「もう一振りは?」


「こちらは魔法合金で作られた剣だ」


「魔法合金?」


「そう、普通なら作ることの出来ない合金を、魔法を使う事によって可能にした金属だ」


「こちらにも効果が?」


「ああ、少しだけだがな。 切れ味劣化を防ぐことが出来て……あとはちょっとした魔法程度なら斬ることが出来る」


「魔法を斬る?」

いつの間に後ろにいたのかマリーが不思議そうに尋ねる。


「ああ、『火炎ファイヤ』の火球ぐらいなら斬れるはずだ。 まぁ『雷撃サンダー』みたいなのは難しいが……それでも受け止めるぐらいはできるかもな」


「へぇ~……ライラ姉がこの剣もったら『隕石メテオ』試していい?」


「いいわけないでしょ! 斬る前に潰れちゃうわ!」

死んじゃうわよ!まったく!


「えと、ちなみにお値段は?」


「こっちがこれで、こっちはこれだな」



(……蒼い方は無理だわ。 なんとかもう一振りの方に届くぐらい)

しかし旅費もガンガン使うわけに行かない……安い方で妥協すべきなのか。


私が迷っていると……。


「両方下さい」


「は?」

「え?」

「う?」

私、リア、マリーが抜けた声を出す。


何とカンナがお金を出した……っていうか、カンナってお金持っていたの?


カウンターの上に出された金額は……確かに買える分だけある。


「か、カンナ。 このお金どうしたの?」


「旅に出るからにはお金いるかもって……僕お小遣いとか使う事なかったし」


「え、で、でも、それじゃこれカンナのお小遣いなんでしょ? 受け取れないわ!」


「ううん、良いよ。 僕ライラに沢山助けて貰っているし、それに今後も旅が続くとなると、ライラ剣要るでしょ?」


「そ、そうだけど……」


「だからお礼も兼ねて……それに僕まだお小遣いあるから」


さすが王子様……小遣いの金額予想がつかない。

アスター王ってカンナに甘いからなぁ……。



「なんか知らんが……両方買うでいいのかい?」


「はい、お願いします」

カンナが言い切る。


「分かった。 しかし思い切るなぁ。 じゃあ、おまけでこの剣も付けてやろう」

カウンターの下から出した短めのショートソードを一本くれた。


「あ、じゃあこれカンナが持つといいわ。 私三本も持てないし」


「そうですわね。 男の子ですし……それにカンナも少しは剣術習ってましたわよね?」

王子であるカンナも少しは剣術を習っている。


「そうだね。 持っている分にはいいかもしれない」

マリーも同意する。


かくして私達は魔法の剣を二振りと、カンナ用の剣を手に入れたのだった。



(お礼は伝えたけど……カンナには頭が上がらないわ)

私は左の腰に二本の剣を下げる。


性能的に状況によっては使い分けがいるかもしれない。


(でも……)

それと同時に自分も鍛え直さないと……デュランダルを奪い返す為には竜人に勝つ必要がある。


私はその為の考えを巡らせるのだった。



読者の皆様、ありがとうございます。


五十話到達いたしました。


まだまだ先は長いですが、完結するように引き続き頑張りたいと思います。

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