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第四十三話 風呂時間


「な、なんか凄いわね……」

私はその様子を唖然となってみていた。


「ぼ、僕もまさかこんな田舎の村までとは……」

同じくマリーもその風景を見て呆然となっている。



私達は首都へ向けて旅を続け、途中で和やかな村に辿り着いた。


牛や放牧し、畑を耕す至って普通のありふれた農村。


しかし放牧されている牛が食べているのは次から次へと湧くように生えてくる新芽の草で、畑を耕している鍬はひとりでに動き出して畑を耕している。


つまり魔法である。



「こんな農村で魔法がバンバン使われているなんて……」


「どうなってるのよ!? この国は!」

マリーと私があまりの光景に固まっていると、



「まぁ、早く宿が無いか訊いてみましょう。 私疲れましたわ」

「うわーすごいね~もっと色々みたい」


マイペース二人に言われて、まずは宿をとることにしたのだった。





この村には一軒だけ宿があり、部屋もたった二部屋しかなかった。

まぁこんな辺境に来る人はあんまりいないのかも知れない。


だからか、この村には兵士もいない。

村人が魔法を使えるなら魔族が来ても対抗できるだろうし……。



一部屋はどこかの冒険者が借りているという事で、私達はもう一部屋を借りることにする。

幸い四人部屋なので寝床には困らない様だ。


「ふぅ……やっと伸び伸び寝れるわね」

荷物を置きながら私がそう言うと、


「うん、ぐっすり眠れそう」

カンナも嬉しそうだ。


「さすがにお風呂は無いですわよね?」

リアが少し残念そうに言うが、


「あ、シャワーだけならあるみたいだよ? 魔法で出来るみたい」

マリーがリアに教えてあげる。


マリーが先ほど宿の人に訊いていたのはこれだったのかな?

出来れば私も入りたいなぁ。


「じゃあ、ひとまずお風呂にしてからゆっくりしましょうか」

私の言葉に全員が賛成する。



私は宿の人にお風呂をお願いして部屋に戻った。


「お風呂は離れの小屋にあるみたい。 使い方としては……」


コックがあるので捻ると上からお湯がシャワー上に出てくるようだ……小屋の上に巨大な桶があってそこにお湯を貯めているらしい。


「楽しみだなぁ~」

みんなワクワクしている……もちろん私も!


ひとまずはカンナから、そして残り三人でじゃんけんをして順番を決める。





「ぐぅ……」

私は自分の出したチョキを見て項垂れる……最後になった。


「ふふ、相変わらずライラ姉様は弱いですのね」

「ライラ姉はすぐ表情に出るし、引っかかるからね……」


だって、『グー出すよ?』とか言われれば嘘だと思うじゃない? だからグーは絶対あり得ないと思ったのにぃ……!



そうしてルンルンのお風呂タイムを順番に過ごしていって……やっと私の番が来た!


「よっし! 女磨いて来るぞ!」



「……」

「それ意味が……」


リアとマリーが何か言いたげだったがそんなのに構っていられない。


着替えやタオルを持って離れに向かう。





(おー! ここかな?)

木材で出来た小さな個室。


ドアを開けるとそこが脱衣所となっていた。

すぐ奥にはもう一枚扉があって、あそこが浴室だろう。

凄い狭いがこの際は我慢しよう。


着替えなどを置いて服を脱いでいく。



そして一糸まとわぬ姿になると浴室に入る。

前三人が入っていたせいか、浴室は暖かい。


そしてコックを捻ると……。


(キターーーーーー! お湯来た!!!!)

頭から浴び、顔に当て、体に当て……暖かいお湯が全身を流れ落ちていく。


コックを閉めて髪や体を洗っていく。

シャンプーや石鹸は備えてないが持参している。


(久しぶりに気持ちいい……綺麗になるって嬉しいなぁ)


野宿だとどうしてもお風呂は厳しい……精々冷たい川や湖で水浴びするか、濡れたタオルで拭くぐらいだ。


カンナが近くにいるだけに私としてもすっごい気にしていた。


だって剣とか振り回してるけど、カンナが傍にいて居て私も女の子だし……ねぇ?


「♪~」


鼻歌交じりにシャワーを浴びて綺麗に洗い流していく……。




(よっし! 綺麗になった!! 超すっきりしたわ)

気分は上々、体はホカホカ……私は浴室から出て脱衣所で体を拭き始める。


本当はもっとお風呂に入っていたいけど……食事とかもあるしね。



体を拭いて下着を付ける。

そしてシャツに手を伸ばした時だった!!



ギィィ……。


「ここがお風呂かぁ……」


脱衣所の扉が開いて……開いて??


「え?」

「は?」


知らない男の人が開けた扉を手に固まる。

私もシャツに手を伸ばした状態で固まってしまった……。


……


長く思えたけど……多分1、2秒だろう……かな? よくわかんないけど。


「ご、ごめん!!」

弾かれたように男の人が謝る……けど、私はそれどころじゃなかった!!


「い、いいから扉!!」


「え?」


「扉閉めろーーーーー!!!」


「あ、ああ!」

バタン!!


扉が閉まる!



(ああああああああああ!!! お、男の人! 男の人に見られたぁ!!)

余りの事に考えがまとまらない……何がどうなってこうなったの??


カンナ以外に……いや、カンナにも見られたことないのに!!


知らない男の人に……は、裸……いやいや、下着だもん。 裸じゃないわ。

駄目駄目!! 下着だから良いって訳じゃないでしょ!!


パニックになりながら手早く着替えをしていく。


着替えて脱衣所を出ると……さっきの男の人が所在なげに立ちすくんでいた。


……うぅ恥ずかしくて顔から火が出そう。


「ご、ごめん。 さっきは……」


「……」


うぅ……私はジト目で男性を睨む。


男性は……よく見ると若くて結構カッコいい。

明るい茶色の短髪で引き締まった顔をしている。


男性は私に向かって頭を下げると、

「本当にごめん! まさか入っていると思わなくて……」


「うぅ……良い。 もう良いです。 事故だと思って忘れますから……貴方も忘れて下さい」


「……無理だ」


「え?」

なんか『無理』とか聞こえたけど……。


「君の体は凄く綺麗で……見てしまったのは申し訳なかったけど、忘れるなんて出来そうにない」


「ええぇぇ!!」


き、綺麗なんて言われたことないのに……ええ? ど、どうすればいいの?


「い、いやいや! 忘れて下さい!!」


「無理だ! それよりも君の名前を教えてほしい!!」


「ええ! な、なに言ってるんですか! ふざけないで下さい!!」


「ふざけてない! 僕は大まじめだ! 君に一目惚れしてしまった!!」


男性は真剣な眼差しで見つめてくる。



私の頭の中はもうぐるぐるだ。

一体何が起こっているの??


ひ、ひとまずは……、


「い、良いから忘れろって……」


「え?」


「言ってるでしょうが!!!  華月流  無刃術  朧月おぼろづき!!」


上から喉、肺、鳩尾に拳を叩きこむ!!


「ぐえぇ!!」


男性は白目を剥いて……その場に倒れた。



訳が分からないけど、もう逃げる!!

もう散々だぁ!!




お風呂のルンルン気分はとうに吹っ飛び、私は涙目で部屋に駆け込みベッドに飛び込んだ!!

そんな私にカンナ達が目を丸くしていたが……気を遣ってか何も聞いてこなかった。


まぁ、私のそう言う姿初めて見ただろうし……っていうか、私も初めてこんな風になったよ!



……ちなみに後で聞いた話。

脱衣所と外を繋ぐ扉には鍵が付いており……私掛けてなかったみたい。


うぅ、これって私の落ち度じゃん。

会いたくないけど……今度会ったら謝らないと……。


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