第四十一話 暗雲到来
剣を抜いた私に対して、門番達は嘲りの表情を浮かべる。
「おいおい、ここがどこだか分ってるのか?」
「魔法の国スノーフレークだぜ? 剣士が魔法使い相手に勝てるとでも?」
「素直に王子が投降すれば仲間も傷つかず済むものを……」
門番達は全員魔法職らしい、杖を構える。
私は地を蹴り瞬時に間合いを詰め剣を繰り出した!!
剣士としては魔法職には近接戦を仕掛けなければ勝ち目はない。
「華月流 四龍」
「『重力』」
「『毒』」
「『火炎』」
「『雷撃』」
同時に門番達も魔法を唱える!
私の剣が届く寸前!
グン!!
体中が鉛になったように重くなり動きが鈍る……そして吐き気と同時に体中に痛みが走る!
「ぐっぅ!」
そして至近距離から火球が私目掛けて飛んできた!!
重い身体を必死に動かし剣の平で受け止める……しかし漏れた炎が私の腕を熱く焦がす!
そこへ雷撃が飛んできた!!
「きゃあ!!」
防ぎようがなく……まともに食らって体中を電撃が駆け巡る!!
ガランガラン……私の手から剣が滑り落ち……続けて私も両膝を地面につけて伏してしまう。
しかし、私に全ての攻撃が来たという事は……、
「『雷撃』」
「『回復』」
私の体から痛みが薄れる……焦げた皮膚なども治る。
完治している訳ではなく吐き気や体の重さは変わらないが、それでも動けるようにはなった。
マリーの『雷撃』で門番の一人が倒れた。
まぁ味わったから分かるけど……あれかなり痛いのね。
落ちている剣を拾うと……丁度低い姿勢だ。
「華月流 一輪刺し」
立ち上がりつつ、低い姿勢から門番の一人に剣を突き出した。
「こっこの!」
リアとマリーに気を取られていた門番の一人に剣が突き刺さり……呻いてそいつも倒れる。
「『火炎』」
「『火炎』」
門番とマリーの火球がぶつかり合って大きく炎をまき散らして消滅する。
マリーは門番の一人と魔法を撃ちあっている。
「『突風』」
別な門番の魔法でリアが吹き飛ばされ木に叩きつけられた!!
「リア!」
私はリアの名前を叫びつつ、もう一人に斬りかかる!!
リアは心配だが今は門番を何とかしないと。
しかし『重力』のおかげで思った様に素早く動けない!
「そんなノロマな動きで!」
門番の一人が私に杖を向けた!
そして、
「『火炎』」
「神速!」
急に私の動きが良くなる……と言っても普通程度に戻ったぐらいだが。
それでも火球を躱すのは十分だったし、急に動きの良くなった私に驚く門番もあっさり片付けた。
これで後はマリーと魔法勝負をしている門番一人。
「『突風』」
「『雷撃』」
お互いの魔法が交錯し……マリーが突風に吹き飛ばされ地面を転がる。
一方の門番には電撃が直撃して……しかし門番は倒れない。
お互いに魔法が軽減されたようだ。
「これで!」
杖を構えた門番に、
「させないわ!」
神速中の私が斬りかかる!
予想外の攻撃を慌てて躱す門番、しかし躱しきれず脇腹をざっくり切り裂いた!!
「ぎゃぁ!」
短く悲鳴を上げて門番が地面に倒れた……血が広がっていく。
丁度私の体も軽くなり体中の痛みもなくなった……『重力』と『毒』の効果が切れた様だ。
「リア!」
私がリアに駆け寄ると、カンナが心配そうに抱き起していた。
「カンナ! リアは?」
リアを見ると頭から血を流して目を閉じている……リアの端正な顔を血が筋を作っている。
少し顔を苦痛に歪め……どうやら失神しているようだ。
マリーも草や枝にまみれた格好でリアに駆け寄ってきた。
「リア姉は?」
「気を失っているみたい。 ひとまず手当てしよう」
「待ってね、確かこの前薬草を……」
カンナが荷物をゴソゴソ漁り始めた。
旅の途中で拾った薬草などを持っているらしい。
カンナが薬草を準備している間、私は手で押さえて止血する。
後頭部が裂けて血が流れているようだ……リアが目覚めれば自身で『回復』出来るのだが……。
マリーは包帯の準備をしてリアの血を拭っている。
「た……頼む……た、たすけてくれぇ……」
不意に背後から声が掛かる……先ほど脇腹を切り裂かれた門番だ。
哀れには思うが……私達にもどうしようもない。
せめてリアが目覚めていれば助けて上げれるかもしれないが……。
カンナは薬草の表面を斬りつけて汁が出るようにすると、傷口にぺたりと張り付ける。
そしてマリーに、
「包帯お願いしていい?」
「ああ、任せて」
マリーが器用に包帯を巻いていく。
カンナに代わって支えている私の腕の中で、リアの治療が進められていく。
と、カンナが立ち上がるとトテトテ歩いて……先ほど助けを求めた門番のところに行く。
「カンナ?」
カンナは門番の側にしゃがみ込むと、その傷口に薬草を張り付けていく。
そして傷口をその小さい両手で必死に塞いだ。
「ごめんなさい。 こんな事しかできなくて……」
門番は驚いたような表情を浮かべ、
「カンナ……ってことは、あんたが王子だったのか。 ……す、すまない。 こんなことをした俺に……」
「良いですから静かに。 リアが目覚めれば回復魔法を掛けてもらうから、それまでは頑張って下さい」
「いや……多分それまで……」
門番はそう言うと目を閉じる。
「あんたたちに……伝えておく。 この国の……兵士や城の奴らは……みんな王子を狙っている」
「えぇ!?」
「スノーフレークは……昔からテッセンと仲が悪い。 ストケシア王国と組めれば間にいるテッセンを……と思っているのだろう。 テッセンはストケシア王国に何度も攻め込んでいるし……同盟を組むとすれば適任だ」
「だから王子を?」
「ああ……内々ではあるが……国として王子を狙い。 捕まえたものに褒賞を……」
門番の声が小さくなっていく。
「も、門番さん!」
カンナが叫ぶが、
「本当に……すまな……った……」
門番の体から力が抜ける。
「うぅ……門番さん……」
カンナが大粒の涙を流す……先ほどまで自身を攫おうとしていた敵に対して。
(しかし……)
スノーフレーク魔法国がカンナを狙ってるなんて……。
この国でも署名をもらわなくてはならない……それが無ければスルーしたい気分だ。
入国して早々の戦い、そして王子を狙っている情報を聞いて、私の心には暗雲が立ち込めるのだった。




