第三十七話 因果応報
突然林の奥から現れた巨大なイノシシは、カンナの方に歩いていく。
「カンナ!」
私は慌ててカンナの手を引き背中に隠す。
しかし巨大イノシシはカンナには見向きもせず、カンナが縋っていた死にかけのイノシシに寄って行くとその鼻を擦り付ける。
それは心配する様な……愛しむかの様な……そんな行動だった。
「もしかして親子かも……」
私の背後にいるカンナが呟く。
って事は、あの死にかけのイノシシ……大きなイノシシと思っていたけど、アレで子供だったのね。
まぁ、親があのサイズなら子供も大きくて当たり前か……。
暫く鼻を擦り付けていた巨大イノシシは、私達の方を向くと怒りに燃える目で睨みつけてきた。
「えぇ〜、なんか親御さん怒ってる?」
「僕達が子供を傷つけたと思っているのかも……」
「そんな……」
巨大イノシシがこちらに向かって突進しようと体を低くする。
「ど、どうしよう?」
「えと、どうしよう?」
二人していい考えが浮かばない。
(……最悪斬るしかない……でも)
カンナは私を嫌いにならないかな? うぅ……不安だ。
その時、死にかけのイノシシが一声上げると、巨大イノシシの動きが止まった。
その後、お互いに何か会話するような素振りを見せる……。
どうやら誤解を説いてくれているのかな?
「やっといましたわ!」
丁度そこにリアとマリーが草をかき分け現れた。
「全く! 食事の準備もしないで、カンナと二人っきりとか……って」
文句を言い始めたリアだが、私達の前にいる巨大イノシシの親子を見て唖然とする。
まぁ、こんな大きなイノシシなら誰でもそうなるよね。
「ジャイアント・キング・ボア」
マリーがボソッと呟く。
「マリー知っているの?」
「本で読んだだけだけど……たまに巨大なイノシシが誕生する事があるみたい」
「そうなの?」
「なんか魔族を倒した獣は異種的な存在になるみたい……これもそうらしい」
どんな影響があってこうなるか分からないけど……レベルアップみたいな物かしら?
私とマリーが会話している間、カンナがリアに『回復』をお願いしている。
もちろんリアはカンナのお願いを断ることもなく、死にかけのイノシシを回復し始めた。
巨大イノシシは特に何もせず見守っている。
恐らく子供イノシシに説明されて、私達が敵ではないと分かってくれたようだ。
子供イノシシは傷が完治し元気になったようだ。
「次は穴から出さないとね」
今はまだ落とし穴にハマっている状態だ。
「それなら僕が……」
マリーが指を鳴らすと、子供イノシシが巨大イノシシの隣に現れる。
『転移』って便利だなぁ
急に隣に現れた子供に巨大イノシシは驚いたようだが、直ぐに体を擦り始めた。
凄く嬉しそうだ。
「良かった。 助かって」
カンナも嬉しそうにイノシシ達を見ている。
そんな感動的場面を……。
ぐうぅぅぅ……
私の腹の音がぶち壊す……。
「あ……」
「……ライラ姉」
マリーが何とも言えない眼差しで見てくると、
「まさかあのイノシシ見て『美味しそう』とか思ってないよね?」
「ち、違うって! ほら、もうお昼ごはんだったし……」
(最初見た時はお肉扱いしたけど……ゴメンナサイ)
「そう言えば食事の準備が終わったのでしたわ。 戻って私達もお昼ごはんにいたしましょう」
そう言ってリアが戻り始める。
「そうだね、ライラもごめんね。 お腹空いていたのに」
カンナは戻りながら私にそう言うと、
「元気でね! もう罠に掛かっちゃ駄目だよ!」
イノシシの親子に手を降って戻っていく。
私とマリーもカンナに続いて戻ろうとして……私はもう一度振り返ってイノシシを見てみる。
イノシシの親子はジッと私達の方を見ていた。
なにか言いたげに見えたけど……そのままみんなの方に戻ったのだった。
戻って食事を済ませた私達。
後片付けも終えて、『さぁ、旅を再会しようか』とした時だった。
「あれ? どうしたの?」
カンナの言葉にそちらを見ると……あのイノシシ親子が近寄って来ていた。
(一体どうしたのかな?)
そう思っていると……。
子供イノシシがカンナに擦り寄ってきて何かを訴えている。
しきりに首を曲げ背中をアピールする。
「えと……もしかして乗れって事?」
子供イノシシは嬉しそうにカンナの周りをグルグル回る。
それを見ていた私は、不意に気配を感じ振り返る。
……目の前に巨大イノシシの鼻があった。
と、私の前でしゃがむ巨大イノシシ。
(え? これって私にも乗れって事?)
どうやら親子揃って私達を乗せてくれるらしいが……どうしよう?
振り返ってカンナを見ると……もう乗ってるし!
子供イノシシに乗って楽しげにグルグル駆け回ってる……目が回りそうだけど。
リアもマリーも特に怖がったりはしていないようだ。
「まぁ、乗せていってくれるならそういたしましょうか?」
リアが肩をすくめて巨大イノシシによじ登リ始めた。
なかなかアグレッシブな聖女だ。
マリーは……あ! いいなぁ……イノシシの背中に『転移』してるし。
みんなが乗るので私も乗る事にする。
まぁ、乗せていってくれるなら助かるしね。
……でも私には一つ気がかりな事があるんだけど、みんなは特に気にしてないのかなぁ?




