第三十四話 黒箱襲来
「ライラっ!」
私の腰にカンナが抱き着いて来た!
この前大量のガーディアンに追いかけられたのを思い出して怖くなったのだろう。
身構えている私達、その上空で黒箱が停止しているのが木々の間から見える。
「……ライラ姉様。 今のうちに逃げませんか?」
確かに何もしてこないのであれば、退散するのが良さそうだ。
「そうだね……今のうち……」
退散しよう……そう告げる前にいきなり音声が聞こえて来た。
『ストケシア王国 カンナ王子 その者の身柄をこちらに渡せ。 そうすれば他の者は見逃してやろう』
方向的に黒箱から発せられたようだ。
(やっぱり前回同様狙いはカンナ王子なのね)
腰に回しているカンナの腕がギュッとされる……小さな体を震わせている。
私は上空の黒箱に向かって声を張り上げた。
「冗談言わないで!! 私のカンナを渡すはずないでしょう!!」
「……私の?」
後ろからマリーが突っ込んだがこの際無視しよう。
『そうか……ではお望み通り、力づくで奪う事にしよう』
黒箱の下部が開いたと思うと前回同様ガーディアンが出て来た。
今度は高さがある為かロープを伝って降ろされる。
「マリー」
「そうだね、チャンスは利用させてもらう。 先手必勝!」
マリーが黒箱に杖を向け、
「『火炎』」
杖から火球が放たれて、ガーディアンが伝っているロープに命中した!
ロープが焼き切れ降下中のガーディアンが墜落してきた!
激しい金属音を立てて落下するガーディアン……その全てが壊れたようだ。
無事な姿は一つもない。
「よっし! 流石マリー!」
「ふふん! まぁ当然だね」
と言いつつもマリーも嬉しそうだ。
『おのれ! これならば……』
黒箱から声がしたかと思うと、黒箱から何かが飛び出した!
(今度はロープが無い? 墜落してくる?)
地面に落ちる寸前! そいつは空中に停止した!!
「なんで!?」
従来のガーディアンと全体的にはそっくりだが……若干大きい。
しかし一番の特徴として胸のあたりに光る丸い水晶らしきものがはめられている。
ガーディアンが背中に背負った長剣を引き抜いた!
『プロトタイプ:アルファ コイツの実験材料にしてやろう!』
黒箱から声が聞こえた瞬間、アルファが突っ込んできた!
宙に浮かんでいて滑る様に向かってくる!
(速い!!)
「カンナ! 離れて!」
カンナが離れると同時に私に向かって剣が振り下ろされる!
体を横にずらし縦に振り下ろされた剣を躱す!!
ギリギリだった為か、髪の先が斬られて宙を舞った!
躱しつつ、剣を抜きざまそのまま胴体に斬りつける!
キン!!
甲高い音がして……やはり抜きざまでは傷も入らない!
アルファは再度剣を構えると剣を薙ぎ払いつつ突っ込んできた!
体を伏せて地面を転がって避ける!
突っ込んできているので剣で受けるとそのまま吹っ飛ばされてしまう。
しかし、躱したおかげかアルファと距離が開いた!
「『雷撃』」
マリーの魔法が直撃する!!
電撃に弱いガーディアン……なハズが効いていない!?
「き、効かない!?」
マリーから驚いたような声が漏れる。
そうしている間に、ガーディアンが私に剣を叩きつけて来た!!
剣で受けつつ、傾けて相手の剣を受け流す!!
よろけたガーディアンに、
「華月流 三斬華!」
まともに胴体に入った!!
……が胴体半ばまでしか刃が入らない!
(硬い!)
アルファが体勢を立て直して剣を水平に薙ぎ払ってきた!!
剣を引き抜きつつそれを受け止めるが、今度はこちらの体勢が悪く跳ね飛ばされてしまう!!
地面を数回転がり、草や土まみれになりつつ急いで立ち上がる!
その時にはすでに目前までアルファが飛んできていた!
「神速!」
アルファ含めて周りの速度がゆっくり流れる。
私は剣を構えると、
「華月流 三日月!」
剣を一回転させ遠心力を乗せると、勢いそのままに剣をアルファに叩きつけた!!
アルファ自身もこちらに向かってきており……勢いが跳ね上がる!
神速が切れ、私とアルファがすれ違った!!
私はすぐに振り返りアルファに向かって剣を構える。
アルファはそのまま直進していき……木に激突してそのまま地面に落ちた。
警戒しながら近づくと……アルファの体に大きな斬撃の傷が入っている。
どうやら三日月で仕留められたらしい。
私が一息ついていると、
『自己修復モード 損傷個所 非常回路……』
いきなりアルファから音声が流れた!
「!」
振り返った私の目に立ち上がるアルファの姿が目に映った。
「そんな! 壊れたんじゃ……」
胸の水晶が光り輝き……胸の中、機械の部分が修復されていく……。
「ライラ姉! 水晶だ。 それ壊して!!」
後ろからマリーが叫ぶ!
弾かれたように私の体が動く!!
「華月流! 三斬華!」
水晶目掛けてデュランダルを鋭く振り下ろす!!
その時……アルファから音声が流れた……。
「カゲツリュウ サザンカ」
ガギン!!
(わ、私の三斬華が……受け止められた)
しかもこの斬撃の重さは……三斬華と同じ?
ギギギ……。
お互いの剣が交差しせめぎ合い……力を込めると後方に飛び退る!
アルファと距離が開いた……。
(私の三斬華を……使われた?)
様子を伺う私にアルファが突っ込んできた!!
剣を大振りするが……その間合いじゃ届かない。
が、そのまま剣が一周して私に振り下ろされる!!
(この軌道は三日月!!)
三日月は強力な斬撃技……受け止めることが出来ない!
「カゲツリュウ ミカヅキ」
「華月流 双刃葵」
剣を斜めに合わせて受け流す!!
アルファの剣が流され……勢いがある為地面に突き刺さった!
(今だ!)
体勢を低くし剣を構える。
「華月流 一輪刺し!!」
真っ直ぐ突き出された剣が水晶に吸い込まれる!
パリーン!!
水晶が砕け散った!!
ガクン!
いきなりアルファから力が抜けてその場に崩れ落ちる。
「やっと倒した……」
私は荒くしていた息を整える。
(私の技までコピーするなんて……)
長引けば長引くだけ勝つのが難しくなりそうな相手だ。
『プロトタイプ:アルファまで倒すとは……こうなったら!』
様子を見ていた黒箱から再度音声が流れるが……。
「ウフフフ……お馬鹿さんですわねぇ」
急に後ろにいたリアが笑い出す!
「な、なに? どうしたの?」
私がリアを見つめるとマリーを指さした。
マリーが目を閉じ杖を構えて詠唱している……あれ? あの詠唱は……。
「……も残らぬよう押しつぶせ!」
マリーが片目を開く口元笑ってるなぁ……あれ。
「『隕石』」
再度仕掛けてこようと下部を開く黒箱。
その上に……巨大な隕石が現れる。
『な、なんだあれ!』
黒箱から慌てたような声が聞こえるが……。
ガガガガ……ズズゥン!
ゆっくり落ちて来た隕石が黒箱に直撃し……黒箱ごと地面に落ちてくる……って、こっちに落ちてくる!?
「みんな逃げるわよ……って!」
振り返った私の目には遠くに逃げているリア達の姿が……カンナは私を見ながら引きづられている。
「ちょおぉぉぉぉ!」
私も慌てて走り出す!
そうして全速力で逃げる私達の背後に……大きな衝撃と音と共に黒箱が地面に墜落したのだった……。




