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第三十一話 首都出発


「カンナ~。 準備出来た?」


「うん、大丈夫!」

カンナがキラキラした目を私に向けてくる。


(うん、今日も可愛い!!!)


耐えきれず抱きしめようとした私の襟首が引かれて……。


「ぐぇ!」


喉が押されて変な潰れたような声が出た。


思わず振り返ると、


「何するのよマリー」


後ろにはマリーが立っていて呆れたように私を見ている。


いや、なんで呆れたような表情なの?


「ライラ姉。 カウンターで順番待ちしてたんじゃないの?」

「あ……」


そう言えば宿代を払う為にカウンター並んでる時、トイレ行きたくなってリアにお願いして並んでもらってたんだった。



ゴっ!!


後ろから硬いもので頭を叩かれる!


「いったぁー!!」


ガンってきた! ジーンってする!! めっちゃ痛い!!!


「な、なにするの!?」

痛む頭を手で押さえ、涙が滲んだ目を後ろに向けると、


「『何するの!?』じゃございませんわ!」

リアが手を腰に当ててプンスカ怒っている。


「『トイレ行ってくるから、ここお願いね』とか言っておいて全く戻ってきませんし!」


「あ~……」

私は目を逸らす……トイレに行って戻る途中、可愛らしいカンナの姿に足を止めて……話しかけて……戻る事を忘れていた。


「『あ~』じゃ、ございませんわ!」


再び杖を振り上げるリア。


「ちょっ! リアは聖女になるんでしょ! ほら、みんな見てるから!」

私が止めようとするも、


「では、これは怠惰な者への天罰ですわ! 大人しく食らいなさい!」

周りの人達が何事かを見ている中、杖を持ったリアが私を追いかけまわすのだった。





昨日、領府長の署名をもらった。

これにより、いよいよテッセンの国から次の国へ移動することにしたのだった。


「テッセンの次はどこに行くの?」

カンナの質問に、


「次はテッセン隣国のスノーフレークに行きましょう」


スノーフレークはテッセンの北から北東にかけて広がる大国であり、魔法の国とも言われる。

魔法に関しての研究が盛んで、国の中には研究所や学校などが多くあると聞く。


テッセンとは隣国ながら馬が合わないのか過去に何度も争いを起こしていたが、ここ最近は不可侵条約の元、お互いに静観しているようだ。


「スノーフレーク……行きたいと思っていた!」

珍しくマリーが興奮している。


「私も興味がありますわ」

リアも少し嬉しそうだ。


まぁ、魔法を使えるものからすれば魔法に秀でたスノーフレークは興味を掻き立てられるだろう。




「じゃあ、まずは北を目指そう」


テッセンからの最短ルートは北の街道である。

テッセン国がいくら小さいといっても国である、首都であるテッセンは国の中でも南側に位置しており、ここからスノーフレークまでは数週間歩かないと辿り着かないであろう。



旅の準備を済ませて首都テッセンを出る為門に向かう私達。


そんな私達の前にダリア達四人組が現れた。

いつもと変わらない恰好……何しに現れたんだろう?と思っていると、


「ライラさん達! もう行くのか?」


ダリアが訊いてくる……あの戦いから、何故か私は「さん」付けで呼ばれている。

多分私の方が年下だと思うんだけどなぁ?



「うん、今日立つよ。 私達はまだ旅の途中だしね」


「そっか……色々鍛えてほしかったんだけど……」

ダリアが寂し気に下を向く。


この四人組も最初会った時に比べて大分変ったわね……やっぱりユリが居なくなったことで心構えが変わったのかしら?


私がそんなことを考えていると、


「そろそろ良いかしら? 私達も早めに出発したいのですわ」

私の後ろからリアが出てくる。


リアを見た四人組……いきなり直立して直角にお辞儀をすると、


「「「「リア様、お邪魔をしてしまい申し訳ございません!!」」」」


大声で叫んだ。



「……え?」

唖然とする私。


リアって……ダリア達に何をしたの? 何があったの??


「じゃあ、良いかしら? お前達邪魔なの」


「「「「ありがとうございます!!!」」」」


何でお礼!?



道を空ける四人組……その真ん中をリアが優雅に歩いて行く……金色の長髪をなびかせて歩くその姿は聖女……聖女なハズなんだけど……あれ、中身悪魔じゃないの?



リアに付いて門に向かう私達を、ダリア達四人組が直立姿勢でいつまでも見送っていた……。





テッセンの北門をくぐる……そこは荒野が続き、北へ荒れた道が続いている。

遠くの方まで荒野が続いているようで何も見ることが出来ない……。


「わっ! ペッペッ!」

喋ろうとした私の口の中に風で舞った砂が飛び込んできた!!



「ありゃ、嬢ちゃん。 ここはいつも風が強くて砂埃が舞うんだ。 口に布かなんかを巻いたり充てたりしていた方がいい」


私の様子を見ていた門番の人が親切に教えてくれた。


隣ではガーディアンが通行人を調べている……そのせいか暇そうだった。


「あ、それとだ……」


「?」


引き続き話しかけてくる門番の人。


「何でも盗賊が出るらしい……基本的にスノーフレークとは交易をしていないから、この街道には出ないと思うが……まぁ注意することに越したことはない」


まぁ、軍隊も動いているらしいから大丈夫だとは思うけど……と付け足す。


「ありがと。 気を付けて旅を続けるわ」


「おう、良い旅を!」

手を振る門番に見送られて私達は荒野の街道に足を踏み出した。



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