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第二十七話 腐敗小国


私とユリで領府長が監禁されているであろう扉を蹴破った!


「領府長!」


部屋は普通の客間で、質素であり、お役所的な堅いイメージを思わせる部屋となっていた。


その部屋の中央にあるソファで、男性が一人驚いた表情を浮かべ立ち上がりかけた姿勢で固まっている。

少しお腹周りが出てきている……年齢的に50歳代ぐらいだろうか? 髪も全体的に白いものが混じっている。


精悍な顔つきではあるものの、監禁のせいか疲れた表情をしている様だ。



「君たちは……?」

男性が驚いた表情のまま問いかけてくる。


「領府長を助けに来ました。 私達は冒険者ギルドの者です」


ユリの言葉に表情を和らげると、


「そうか。 すまない、危険を冒してまで助けて来てくれたのか……ありがとう」


領府長が頭を下げる。


「いえ、それより早く脱出をいたしましょう。 まだ戦闘は続いております」


「ああ、分かった」


頷く領府長を連れて部屋から出て階段に向かう。



階段まで来ると、


「下の階で冒険者ギルドのメンバーがガーディアン達を食い止めているはずです。 少し危険は伴いますが合流して下さい」


「君たちはどうするのかね?」


「私達は上の階に行き、軍事部門を制圧します」


「そうか……上の階にはガーディアンはあまり配置されていない。 しかし軍事部門に属する兵士たちがいるはずだ。 気を付けてほしい」


「領府長もお気を付けて」



そうして私達は領府長と分かれると階段を駆けのぼる。



六階に上がると、正面の壁には『軍事部門』と表記がある。


通路に出る前に様子を伺うが……特に誰もいないし何もない様だ。


通路は左右に伸びている。


「どっちだろう?」


「恐らく左です」


「どうして?」


「床に案内があります」


「……あ、ほんとだ」



床には矢印と共に、『左側 部門長室 司令室』『右側 宿舎 軍備室 会議室』と書いてある。

頭を押さえるなら部門長室だろう。


「行きましょう」


ユリに頷いて私は左側の通路を進む。

少し歩くと部門長室にたどり着いたが、生憎留守らしい。



その時、ガーッ! と音を立てて私達の登って来た階段と通路の間に壁が降りて来た!


慌ててリアが遮断した壁を叩いたり持ち上げようとするが……流石に無理と悟るとすぐに諦めて首を振る。

どうやら退路を断たれたようだ。



そんな私達に急に声が掛かった。


『ザザッ……。 ……聞こえているかな? 侵入者の諸君』


何処からともなく声が聞こえてくる……素早く周りを見回すが誰もない。

何らかの魔法だろうか?


『私は部門長トギスだ。 退路は断たせてもらった、司令室にいるから会いに来るといい』


(わざわざ自分のいる場所を教えるなんて……十中八九罠ね)


……しかしどちらにしろ部門長を捕まえて部門を制圧しなければならない。

なので退路が断たれたといってもやることは同じだ。


「行くしかないですね」

ユリも分かっているのか、槍を握りしめると司令室に向かって歩き出した。



意外にも司令室までは何事もなく進む……勿論このままとはいかないだろうが。



司令室の入口は金属で出来た大きな両扉となっていた。

中を伺い知ることは出来ない。



私とユリは視線を交わし、


「開けます」

「うん、私も」


二人して開けると扉は抵抗もなく普通に開かれた……中からいきなり襲ってくるなんてこともない。


部屋に入ると、見たこともない様相の部屋だった。


部屋は壁などが金属で覆われて、わけのわからない機械が色々置かれている。

窓の様なガラスの板に色々文字や映像などが映し出されており、刻々変化しているようだ。

窓もなく扉も今入ってきたもの一つらしい。


そして部屋の中心は広く空いており、その真ん中に軍服を着た青年が一人立っている。

その両側にはテッセンの兵士が数名並んでおり、半円状の形で入ってきたばかりの私達を囲んでいる。



青年はかなりの好青年で、爽やかな笑顔を見せると、

「ようこそいらっしゃいました。 私は軍事部門の部門長のトギスと言います。 ちなみに軍隊での階位は中尉となっております」


ゆったりとお辞儀する。 これも自分が優位だという自信の表れだろう。


「わざわざお越しいただきましたが、貴方達も、そして貴方のお仲間達も全て捕らえて鉱山でお仕事をして頂こうかと思います」


「悪いけどお断りするわ。 私達にはするべき事がある」

私が言うとトギスは目を細めて、


「それはする必要がなくなりますよ。 ライラ王女」


「!?」


隣のユリが驚いたように私を見る……王女とは思っていなかったようだ。

まぁ……私が彼女の立場でもそう思う……剣を振り回す人を誰が王女と思うだろう。


それも偏見ではあるのだけれど……。



「必要なくなるってどういう意味よ?」


「カンナ王子が全ての国を巡るとストケシア王から連絡がありましてね。 それが貴方達の旅の目的ならする必要はなくなるという事です」


トギスは両腕を広げると、


「だって、この世界は我々テッセンの物となるのですから!」


悦に入っているようだ……頬が赤くなり高揚している。



「戦争を起こそうというの!?」


「そうですよ? 魔族の脅威も下がった今こそがチャンスじゃないですか?」

当然という表情……戦争とは何か分かっていないのか?


カンナが……あの恥ずかしがり屋のカンナが声を張った!

「沢山の人が傷つくよ! 魔族も払い、やっと平和になりそうなのに……」


「平和ボケしたストケシアっぽいセリフですね。 世界の脅威は何も魔族だけではないのですよ?」


トギスの鋭い視線にカンナがビクッと身をすくませる。


「テッセンは文明こそ発展していますが、国としては小さく人口も少ない。 それこそ他国が攻めてこればひとたまりもない! 人口が少ないから機械共に国を支えてもらっている始末、おかげでこの国の人間は堕落の一方じゃないですか!」


顔を手で覆い、悲しむ様に……懺悔するかのように天を仰ぐ、


「見ましたか? あの生気のない人の顔を! 怠惰!堕落!腐敗! この国の人々は機械に頼って何もしなくなっている!」


「詭弁です!!」

ユリが叫ぶ!


「それは機械をどう使うかであって、全ての人がそうと言うわけではありません! 我々冒険者も汗水たらして依頼ごとに奔走しております!」


「だからどうしたというのです!?  冒険者の日頃の生活を知っておりますか? 恐喝や強盗、脅迫や暴力……ああいう風に育ったのは何故? 機械が人の心を乏し、心が荒んだからです!」


……確かにダリア達も最初私達に絡んできた、そのやり方は強引だったかのように思う。


ユリも心当たりがあるのか口を噤んでしまう。



それを見てトギスが声を落とす。

「これも国が小さいから……。 国を広くし人を増やし、心を豊かにする必要があります」




(……だからって!!)

気付いたら叫んでいた。


「だからって戦争を起こしていい理由にはならないでしょ!」


「じゃあ、言えば国を明け渡してくれますか?」


「そうじゃない! そうじゃないけど……」


「……良いでしょう。 じゃあそのカンナ王子を寄こしなさい。 私の配下の女と結婚させて……これでストケシア王国とは戦争をせずとも物になるでしょう」


「!?」


戦争回避の為にカンナ王子を差し出すなんて……!


「……うん、わかった」


「カンナ!!」

カンナが肯定の返事をしたことに驚く。

私が見るとカンナは俯いて震えている。


「僕が……することで、戦争を防げるなら……」


何て言ったのだろう? 『犠牲?』『我慢?』 恐らくそのような言葉だろうと思った。



そんな中、一言声が響き渡る。


「却下ですわ」


急に声が掛かりカンナが驚いて振り返る。

それは後ろにいたリアだった。


「ストケシアを『物』扱いしている様なやつですもの。 信用も出来ないし、国もどうなるか分からないですわ」


「それに……」リアがトギスに視線を向けながら、


「ストケシアとは戦争を回避するかもしれませんが、恐らく他の国には戦争を仕掛けるつもりなんでしょう?」


「!?」


そうだ! 確かにストケシアとは回避できるだろうけど、元々世界全ての国に戦争を始めるつもりだったはず……ストケシアだけで満足するとは思えない。



トギスは隠す様子もなく、

「もちろんです。 私は最初から世界全てをテッセン国の従属にするつもりです」


「ですから却下ですわ。 カンナ下がって」

リアがカンナを後ろに下げる。



その様子を見ていたトギスは、

「では、交渉は決裂ですね? じゃあ、先ほどの計画通りお前達を捕まえさせてもらいましょう」


トギスの合図で両側にいる兵士たちが腰の剣を抜いた。



お読みいただきありがとうございます。


基本的には毎日1回は更新するつもりですが、


生活により投稿時間はばらけてしまうと思います。


すみませんがご理解下さい。

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