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第二百五十七話 有終完美


『ホーリー』


それはリンドウが教えてくれた、剣に魂を封じ込める為の言葉だった。





「な、なんですよ? その光は」


焦るヘラにだが、私の下にある剣から光が漏れているのを知ると、


「その剣ですよ? ……あれ? その剣何処かで見た事が……」


そこまで言った時、ヘラの身体が光り出した。


「あ、あわわ。 な、な、何が……」


その言葉と共にヘラの姿が薄れ光の粒に変わっていく……


「お、思い出したのですよ! その剣は神剣デ……」


姿が消えて光の粒となったヘラはそのまま剣に吸い込まれて行った……




辺りが静寂に包まれる。


ほとんど動かない体。

ゆっくりと呼吸を続けるが……どちらにしろ長くは持たなさそうだ。



でも……まぁいっか!

私は……きっと私の運命やくわりを果たしたと思う

このまま死んでも悔いはないわ


動いていた部分も動かなくなるのを感じる。

体の機能停止によって他の部分にも影響が出始めたのだろう。


見えていた右目を閉じる。


これでカンナも、リアやマリー、そして世界のみんなも救われた

魔族が生まれる事はなくなり、魔王と勇者の輪廻も途絶えた訳で……歴代の剣聖としては最高の幕引きじゃない?

もう十分胸張って逝ってもいいと思うんだ



それなのに……


閉じた右目から熱いものが溢れる。


どうして私は……


掠れ声で嗚咽が漏れ……抑えきれない




死にたくないよぉ


カンナに会いたい

みんなとまた会いたい


楽しくお喋りしたり、旅したり


馬鹿やって、リアに邪険にされ、マリーに呆れられ、それを見てカンナが仕方ないなぁって感じでなだめてくれて……


カンナが幸せになってくれるなら……みんなが笑って生きてくれるならそれで良い


そう思ってた



でも違ったんだ


私は……みんなと一緒に笑って生きたかったんだ




四肢はとうに動かなくなった。

頬の感触から涙が止まったのも感じる……恐らく右目も……


息が苦しい

体が動かない



意識が……遠く……



私が……消え…………






「ライラ」


カンナの声が聞こえる。


「ライラ姉様! しっかりなさい!」

「ライラ姉様! 目を開けて!」


リアとマリーの声も聞こえた。



カンナ、リア、マリー……最後にみんなの声を聞きながら逝けて良かった……




バシッ!!!


いきなりほっぺたに鋭い痛みを感じ、


「いたぁぁぁぁ!!!」


反射的に思いっきり叫んで身を起こした!



あ、あれ?

わ、わたし??


意味が分からない……私死んだんじゃ……


身を起こした私の胸に飛び込んで来たもの。


金色のふわふわな髪

小さい子供っぽい姿

でも私が一番大切に思える人



「ライラの馬鹿!! 大馬鹿!! 何で死にかけてるの!!」

「カンナ……」


カンナが私の胸で泣きじゃくる。

少しポカポカされるけど、凄く心地よい。



「ライラ姉様!」

「ライラ姉!」


両脇からリアとマリーも飛び付いてきた!


「わわっ!」


みんなでその場に倒れ込み……三人共私に抱きつき大声で泣き出した。

私はみんなをしっかり抱き締める!


温かい……みんなの温もりが伝わる

夢じゃない、本当にみんなが此処に!

私はみんなとまた会えた、触れられた!


私の両目からも大量に涙が溢れ零れていく!

みんなと同じ様に抱き締めあって大声で泣きじゃくる。



怖かった……


みんなに触れた事で改めてその感覚が私を襲い、今頃になって体中が震える


それでも腕の中にある温もり

それが私に生を実感させてくれる


私は……生きてるんだ!





そうしてみんなで泣き続ける。


暫くそうしていたが……徐々に収まると、ふと思う。


一体これは……どうして私生きてるの?



みんなはまだ泣いていており、私はその背中を優しく撫でている。

そんな中、


『全く、騒がしい連中じゃの』

「まぁまぁ、こんな時ぐらい良いじゃない、それにフェンリルも嫌いじゃないでしょう?」

『そうなのか? 物静かなフェンリルも変わったのだな』

「ふん、俺は静かな方が好きだがな」


三人に押さえ込まれた私の目に、フェンリル、ヘラクレス、フェニックス、リンドウの四人が映った。

しかしその姿は薄く消え掛けている。


「みんな! どうして体が透けて……」

「まぁ、気にしないでよ? 私達は元の姿に戻るだけだから……」

「元の姿?」

『うむ。 この世界を作った創世神エウアンサス。 我々はその分身』


その話はリンドウから聞いていた。


『最初は二体に分かれ、その内の一つが我々の元になったものじゃ』

「もう一方は?」

『分かれる前に逃げおうた。 死を司るヘラじゃ』

「そうそう、だから私達は一つに戻るだけだよ」

「でもなんで戻るの?」

「ふん! お前の為だ! 全くハーデンめ、厄介な娘を託しやがって」

「私の??」


どういう事か分からずにポカンとする私。

そんな私にフェニックスが羽ばたきながら、


『エウアンサスが二つに分かれ、一方はヘラとなった。 そしてもう一方は私達の元となるエデン』

「そう、生を司る神が私達四人の元なんだ」

「そしてお前を助ける為にその力を使った。 その影響で俺達はエデンに戻るって事だ」

『うむ、そうなれば吾輩達は消えてしまうからのぅ』

「そんな! 私の為に……」


悲痛な声を上げる私、


『気にするでない。 むしろヘラの暴走を止めてくれて感謝したいぐらいだ』

「そうだね~。 それにそうしてでも君を助けたかったからね」


フェニックスが羽で私の頭を撫で、ヘラクレスがウインクをする。


『そうじゃの。 カンナ達にも頼まれはしたが……このまま立役者のお主を死なせてしまっては面目が立たんのじゃ』

「……まぁ、ヘラ相手によく頑張ったしな」


フェンリルが子犬姿で撫でるように擦り寄り、リンドウが親指を立てる。


「この剣は持って行くね。 ヘラが居るみたいだし、後で長い長い説教をしてやんなきゃ!」


ヘラクレスがデュランダルを拾いながらその剣をコツンと叩く。

剣が一瞬震えた様に見えた。


そうしている間にも四人の姿は輪郭だけとなり……


『それではのぅ、さらばじゃ』

「元気でね〜」

『またいつの日ぞ』

「さらばだ」


最後にそう告げていくと、空気に溶けるように消えていったのだった……




私はそれをただ見送る事しかできず……気が付くとカンナ達も泣き止みそれを見送っていた。


「カンナ……みんなが……」

「うん。 ライラを助けるにはこれしか無いって……それでもお願いしますって僕達が頼んだんだ」

「ええ、ライラ姉様を助けて下さいと」

「僕達にとって、何よりもかけがえのない人だから」


いまだ目に涙を浮かべたまま三人は私にしがみついている。

私も三人の温もりから離れたくなくてぎゅと抱き締めた。



「そういえば……ごめんなさいカンナ。 私あなたを傷つせて……」

「いいよ、ライラの事だから理由があったんだろうし。 それに僕はライラの事信じてるから」

「怒って……ないの? 嫌いになったりは?」

「するわけ無いよ! だって僕は君の事……」

「カンナ……」

「ライラ……」


私とカンナが見つめあい、徐々にその顔が近付いていく……そして、


パチン!


私は冷たい石壁に……って、


「ちょっとマリー!!」

「流石に僕達の前でそれは駄目」

「そうですわ! い、いくらカンナが望んだとしても駄目ですわ!」


マリーとリアが拗ね顔で怒り、カンナが苦笑する。


「全くもう!」


私は立ち上がって三人の元に戻ると、みんなに手を差し出した。


「それじゃあ、帰ろっか!  みんなが待ってるし!」

「うん!」

「そうですわね」

「同意」


カンナ、リア、マリーが私の手を取り立ち上がると、


「えへへ……みんなありがとうね。 助けてくれて」


改めてお礼を伝える。


「ううん、助けられたのは僕達もそうだし!」

「そうですわ。 まぁ犬として良く頑張ってくれたのではなくて?」

「またまた〜、リア姉が一番泣き叫んでいたくせに」

「な! マリー! あなた最近ライラ姉様寄りになっておりません?」

「僕はカンナよりだよ」

「ほらほら喧嘩せずに〜」


騒がしいみんなに笑顔を向ける。



生きてて良かった


こうしてまたみんなと話ができてその顔を見れて……騒がしくも楽しい時を過ごせて



カンナがそっと私の手を握ると囁いた。


「ありがとう生きていてくれて……大好きだよ!」


私はカンナに笑顔で頷くと手を握り返した。



「またそこでイチャイチャしてますの?」

「もう、ライラ姉は隙もない」


リアとマリーが笑いながら私とカンナの手を取る。


「さぁ、帰ろう!」


四人で手を繋ぐと私達は足を踏み出したのだった。


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